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アメリカの街並みなのにワールドバザールなワケ 〜ワールドバザールの歴史の話〜

どうも、だんだんパークに40周年の装飾が増えてきましたね。みつきです。
というわけで今日は東京ディズニーランドの玄関口である「ワールドバザール」についての話をしていこうと思います。ツイッターでは何度か話したことはありますが、その後調べ直したことなんかもあるので改めて。

そもそもワールドバザールはどんなエリアかというと、1910年代のアメリカの田舎の街並みを再現した通りです。東京ディズニーランドの入り口に面するエリアであり、パークを訪れた人は誰しも行きと帰りに必ず通るようになっています。

"Main Street, U.S.A." by bellemarematt is licensed under CC BY-SA 2.0.

このエリアは、アメリカのディズニーランドにある「メインストリートUSA」というエリアを元にしています。テーマはワールドバザールと同じ1910年代のアメリカの田舎の街並みで、大きな違いはワールドバザールとは異なりエリア全体がガラス屋根では覆われていません。

なおこの1910年代という年代は、アメリカに初めてディズニーランドがオープンした1955年時点において、当時の50〜60代の大人達が幼少期を過ごした年代が意識されており、昔を懐かしみ安心感を得られるような街並みがデザインされています。当時の遊園地と言えば子供のためのものであったのに対し、ディズニーランドは大人でも楽しめるものにするための工夫がこういったところからも感じられますね。

そういう意味では東京ディズニーランドのワールドバザールはテーマがずれているかもしれません。東京ディズニーランドがオープンした1983年においても、1910年代のアメリカの街並みを見て自分の幼少期の頃の懐かしさを思い出した人はいないでしょう。では何故ワールドバザールはアメリカのディズニーランドにあるメインストリートUSAとほぼ同じものを導入したのでしょうか?

実を言うと、当初の計画ではワールドバザールはアメリカの街並みではなく世界の国々をテーマにしたショッピングエリアになる予定でした。その名残が現在も「ワールドバザール」という名前に残されています。これを当時の日本側が却下したようで、当時の日本人がディズニーランドにアメリカの非日常感をを求めていることから必要以上に日本のディズニーランドにオリジナルの要素を入れる必要は無いと判断したようです。結果日本の悪天候を防ぐための巨大なガラス屋根が付けられたものの、メインストリートUSAがそのまま東京ディズニーランドにも導入されたのです。

"Discovery Arcade - Disneyland Paris" by wrayckage is licensed under CC BY 2.0.

なお悪天候が多いのは日本だけではありません。フランスにあるディズニーランド・パリも気候状悪天候となる日が多いです。そのため、ディズニーランド・パリのメインストリートUSAはガラス屋根には覆われてはいないのですが、左右の街並みの奥にアーケードの道が通されています。このアーケードからは隣に面しているショップに行くことができるので、雨の日でも安心して買い物を楽しむことができるようになっています。

ワールドバザールが特殊なのは、エリア全体がガラス屋根に覆われていることだけではありません。ワールドバザールでは入り口からシンデレラ城前まで伸びているメインストリートの中心から左右に伸びている道からトゥモローランドやアドベンチャーランドへ行くことができますが。この横道を通り抜けることができるようになっているのは世界のディズニーランドでも東京ディズニーランドだけです。メインストリートUSAの横道は行き止まりとなっており、ここを通り抜けて横のエリアに抜けることはできません。

上の画像はマジック・キングダムのメインストリートUSAのもの、途中の横道は行き止まりになっています(画像はGoogle Earthより)

このように利便性の高いワールドバザールですが、開園前の計画段階ではもっと利便性の高い構造になる予定だったようです。というのも、東京ディズニーランドはエントランスを潜るとパークに入る道はワールドバザールの真ん中の入り口しかありませんが、ここ以外にもアドベンチャーランドやトゥモローランドに直接行くことができる横道が作られる予定だったようです。
この横道は設計図の段階で組み込まれていたようで、現在の東京ディズニーランドの衛生写真を見てもゲストが通れるはずであった通り道を後から建物などで塞いでいるのが確認できます。

上の画像、実際のパークで通れるのは黄色い矢印の道のみですが、左右の青い矢印も通り抜けできる予定だったようです(画像はGoogle Earthより)

またこの横道は構想段階のパークマップや模型の段階でも実装されており、手に入れやすい資料だと東京ディズニーリゾート35周年の頃に講談社から発売された「東京ディズニーリゾート クロニクル35周年史」の67Pに乗っている構想段階のパークの模型の写真で確認できるのでよろしければどうぞ。

この便利そうな道が何故塞がれてしまったのか、ここからは私の想像なんですが、"ディズニーランド"としてのパークの演出的に不都合だったんじゃないかと思ってます。ディズニーランドは映画会社のディズニーが作ったテーマパークであり、映画的な演出技法が随所に使用されています。その中の1つに「訪れた全てのゲストのオープニングとエンディングを統一する」というものがあります。

つまり、どのゲストも来る時は同じ景色を見ながらパークに入り、帰りは同じ景色を見ながらパークを去っていくというわけですね。そしてゲストが来る時と帰る時に必ず目に入るのがパークの目印である「シンデレラ城」です。またシンデレラ城にはパークに入ってきたゲストを惹きつけてパークの中心の広場に誘導することにより、入り口付近での混雑を緩和するという効果もあります。

対して初期の段階で計画されていた横道からはシンデレラ城が見えません。それどころか東京ディズニーランドは隣同士のエリアの接続がかなりスムーズに作られているので、パークを遊ぶ上でシンデレラ城を正面から見ることがないまま1日を終える可能性もあり得ます。流石にこの構造はディズニーランドのコンセプト的によろしくないということで、パークの入り口はワールドバザールの中心のみに絞られたのでしょう。またワールドバザール内の横道も後に作られたディズニーランド・パリや香港ディズニーランドには受け継がれていないところを見ると、作り手的にもかなりグレーの構造だったのかもしれません。

さて今日はここまで。他にもワールドバザールとメインストリートUSAの違いや、ディズニーランドとしての演出のこだわりで色々面白い話があるのでまた別の機会に話そうと思います。ではでは。

〜note限定おまけ〜

東京ディズニーランドの入り口の通ることができるはずだった左右の道についての話の補足。上の写真の赤や黄色、青の建物が横に並んでいる場所、こちらパーク外から見ることができるのですが、パーク内からは絶対に入れない場所となっております。(因みに上の写真は東京ディズニーランド・ステーションの2階から望遠カメラで撮りました。)

ワールドバザールの入り口付近からも見ようと思えば見られます(画像はGoogle Earthより)

具体的にはどこなのかというと、ワールドバザールの左側のエントランス側に面している建物です(青い矢印で指してる場所)。上の画像を見ると分かるとおり、この建物の場所はバックステージなのでゲストは入ることはできません。ですが記事内で紹介した通れるはずだった道が通れればここにも入れるはずなので、ここまでしっかり建物が作られているのはその構想段階の名残と思われます。こういう所が現地のパークからも確認できるのが面白いですね。

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