記憶が薄れてしまう前に　5

退院する時は弟が迎えに来てくれました。5日ぶりに着るシャツはやはり腕に触れる部分が痛く、いちいち声を漏らしてしまいました。それなら一層のこと腕全体にキツめのサポーターをしてみたらどうかと考え、帰り道ドラッグストアで買って付けてみたのです。正直痛くないわけじゃなかったのですが、直接服が擦れるよりはかなりマシでした。

家に着いてすぐに風呂に入って気付いたのですがお湯に浸かる分には痛くないのです。それどころか、風呂にゆっくり浸かり温まるとその後約30分だけ腕の動きが良くなりました。

そして次の日、弟に運転してもらい菓子折を持って会社に挨拶に行ったのです。みんな早過ぎるとビックリしていて、病院から脱走してきたんじゃないかと疑っていました。笑)自分はやれることがあるなら明日からでも出勤させてほしいと言いましたが、社長には「流石に早過ぎるし今の状態では危ないから、とりあえずあと1週間休んで様子を見てからにしよう。」と言われてしまいました。他のみんなはもっと休めと言ってくれましたが、これ以上迷惑を掛けたくなかったので頂いた1週間で周りの人に気を使われないぐらいの状態にしようと決意し、足は動くので毎日15キロ走り軽い筋トレをリハビリとしてやって1週間を過ごしたのです。ちなみにこのリハビリは自分だけの強引なやり方なので他の人にはお勧めしません。その1週間で痛みに慣れたうえに腕も怪我をする前程の力は入りませんが、日常生活では問題ないぐらい動くようになりました。

そして無事1週間後から自分で車を運転して会社に行き、怪我をする前と同じ仕事を出来るようになったのです。痛みと痺れはその後3カ月ほど続き、数年経った今もたまに出ますが最初の頃に比べれば全然大したことはなく気にならないレベルです。手術をした訳ではなく今も神経の亀裂はそのままなのでもし不意に事故とかに遭ってしまうと植物状態になる可能性が高いとも先生に言われました。でも悪いことばかりじゃありません。怪我をする前はよく寝違えたり肩が凝ったりしていたのですが、首回りの痛みが鈍くなったのかほぼ痛まなくなりました。さらに雨が降る数時間前から腕が軋むような痛みが出るようになったので天気予報としては大活躍です。笑

もしこれを読んでいる方がいるならお伝えしたいのは、もし体に麻痺がある方や植物状態になっている方と接する場合、迂闊に触れないであげて欲しいのです。自分は怪我をするまで麻痺というのは動かず何も感じないことだと思っていました。しかし経験した麻痺は動かないが火傷と捻挫のような痛みだけは常にあるうえ触れればより痛むというものでした。

そして保険に入っておいた方が良いと思います。自分はずっと医療保険や生命保険に入っていませんでした。怪我も病気も放っておけば治るし保険に入るほどじゃないと考えていましたが、怪我をする半年程前に知り合いの保険屋さんの勧めで入っていました。実際入院での部分では保険が出ましたが、問題はそこではなく自分の今の体の状態では新たに保険に入ることが出来ないそうなんです。他の病気や怪我でもそうみたいなんですが、完治したという証明をお医者さんに貰い数年しないと入りにくいそうなんです。なので自分の場合は手術をして完治しない限り今の保険を更新し続けることしか出来ません。ちなみに手術をすれば高確率で障害が残ると言われたのでどの道新たな保険には入れないと思いますが...。

自分の経験は自業自得で特殊なものかもしれませんが、事故や怪我は誰にでも起こりうることだと思います。出来ることなら誰にもそんな目には合ってほしくはありませんが、可能性はあるという現実を心のどこかに置いてほしいです。

自分は父や母その場にたまたま居合わせた人達や、駆けつけてくれた警察官、救急隊の人達、救急車に道を開けてくれた人達、診てくれた先生や看病してくれた看護師さん達、支えてくれ待っていてくれた弟や会社の人や仲間達、この方達以外にも沢山の人達のおかげで今も幸せに楽しく生きています。

一時期は大人しくしてなんとなく生きることも考えましたが、人に迷惑を掛けず、無理をせず、出来る範囲で自分らしく精一杯生きることで後悔のない最後を迎えたいと思っています。決して死に急いでる訳じゃありません。醜くてもギリギリまでジタバタしてやろうと思ってます。笑

死というものを身近に感じたから尚更かもしれないですが、怒ることもほぼなくなりました。大抵のことは怒るほどのことじゃないし、限られた時間の中、嫌な気分でいる時間がもったいないと思うようになったからです。生きていると楽しいことばかりじゃないですが、嫌なこともあるからこそ楽しいとか幸せだとか感じることができると思うので、ある意味嫌なことにも感謝するぐらいの心の余裕を持っていこうと思っています。

限りのある時間の中で自分にしかない人生という冒険を満喫し、他の人じゃなく自分自信が良かったと思える人生を送りたいです。

なのでこれからも自分の足で行きたい所に行き

自分の手でやりたいことを思いっきりやって

自分の目で見たい景色を見ていきます。

これから先も出会えた人達を大切にすることと感謝を忘れずに。

下手な文章と長い話しにお付き合い頂きありがとうございました。