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8.ビーム管

図本節では、四極管の欠点を、五極管とは異なる方法で解消した、ビーム管について説明します。五極管は、現在の真空管アンプの中で、出力管として多く用いられている真空管の種類です。

五極管では、プレートから放出される二次電子が、スクリーングリッドG2に到達することを抑制するために、サプレッサーグリッドG3を置きました。しかし、もし他の方法で、スクリーングリッドG2とプレートの間における電子密度を大きくすることができれば、この空間電荷によって、この部分に電位の谷が作られ、ちょうどサプレッサーグリッドG3を挿入した場合と同様の効果が得られるはずです。

ビーム管は、四極管のプレート、カソード、コントロールグリッドG1、スクリーングリッドG2以外に、次の図のようにビーム形成電極(カソードに接続される)を設置し、この電極の構造および配置をうまく設計することによって、電子の流れをプレートとスクリーングリッドG2の間に集めて、電位の谷を作ったものです。

次の図はビーム管の構造です(RCA Receiving Tube Manual, 1975より引用)。

ビーム管においてはさらに、コントロールグリッドとスクリーングリッドの位置を合わせており、スクリーングリッドがコントロールグリッドの陰になって、スクリーングリッド電流が少なくなります。このため、カソードからプレートに向かう電子の流れは散乱しないで集束されるので、一般にep-ip曲線において定電流特性の範囲が広くなり、五極管以上の定プレート電流特性を持ちます。これは動作範囲を広くするのに役立ちます。

次のグラフの実線が、ビーム管KT88のEp-Ip特性です。立ち上がりの部分が五極管に比べて密になっており、ほとんど一致しています。また、四極管の特性で挙げた、プレート電流が右下がりになっている部分が存在するのが分かります。

図.KT88のEp-Ip特性(KT88 Electro Harmonicsデータシートより引用)

また、次の図の実線が、プレート電圧を固定してグリッド電圧を変化させたときのプレート電流です。

図.KT88のEg-Ip特性(KT88 Electro Harmonicsデータシートより引用)

ビーム管は、ビーム形成電極がグリッドではないため、普通にグリッドを2個持った四極管のバリエーションで、ビーム形成電極が追加されたものとして見ることもできます。現在出力管として多く用いられている6L6GC、6V6GT、KT66、KT88などはビーム管です。

現在出力管として多く用いられている6L6GC、6V6GT、KT66、KT88などはビーム管です。

参考文献:宮脇一男,真空管回路,電気書院,1961年.

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