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柘榴のノスタルジィ

小学生の頃、学校には柘榴の木があった。
秋になると、パカっと開くのを楽しみにしていた。
ルビーのような、ぎっしりとキラキラの身が詰まってるのが、子どもながらに妖しさを感じて、「柘榴は人の肉の味がする」というセリフを鵜呑みにしながら、かじった。

案外あっけなく、ポロポロと身はとれて、
手のひらの中でショボンとする。
口に放り込むと、うす甘く、酸味がきたと思ったら、タネにコツンとあたる。
あまりにも、儚い。
果物にしては、食べるところは少なくてガッカリしたが、子どもの頃の風物詩にはちょうどよかった。 

調べてみたら、日本では山梨や和歌山で取れるそう。だから、山梨に住んでた頃、わりあいとあちこちで見たんだなぁ。

人肉の味がするというのは鬼子母神の物語からきてるとのこと。

釈迦が、子供を食う鬼神「可梨帝母」に柘榴の実を与え、人肉を食べないように約束させた。以後、可梨帝母は鬼子母神として子育ての神になった。柘榴が人肉の味に似ているという俗説も、この伝説より生まれた。

ザクロとカタカナで書くと印象が変わる。
急に、よそよそしい。
日本語は、おもしろい。
漢字とかなとカナで、ニュアンスが変わる。
手触りが変わるというか。
子どもの頃はカタカナでよんでいたんだろうか。
ザクロは柘榴であってほしい。

言葉にすると、ザクってところが何かを齧るような乱暴さを秘めるのに、ろ、で甘くなる。

語感でも変わるんだなぁ、、、

英語のグレナデンになると、すでに他人のようだ。
韓国では、ジュースになってたなぁ。
ほの甘いジュース。

私にとっては、ノスタルジィな記憶。
膝を擦りながら木に登って、
手を伸ばしてようやく手に入れる宝石のようだった。
木の陰で、夕焼けに照らされながら口に入れる儚い甘さは、ご褒美。

自分の影も長く伸びて、あっという間に暮れていく日が秋の終わりを告げていた。
ぱかんと割った半分を持って帰ろう。

いもうとの口の中で、笑うだろう

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