「死ぬまでにあとどのくらい***だろうか~OZU、オヅ、小津~」1
死ぬまでにあとどのくらい***だろうか。皆さんならこの空欄にどんな語句を入れるだろうか。
アサヒからアルコール度数3.5%のビールが出て、営業部のコメントが新聞に載っていた。二十歳過ぎから飲み始めて40歳がピーク。65歳から量が減り、しだいに飲めなくなると。そういう人のため、また翌日に残らない軽いビールを求めている若い人のための商品開発だと。
ちょっと前までは普通に300グラムのカレーライスを食べ、時には物足りなさも感じていたが、最近は同じ量を食べるともうおなかが膨れ、かえって不快になる。人間、食べられなくなってだんだん死期に近づくということなので、ビールにしても同じなのかもしれないが、大のビール党としてはそんなビール会社の営業部のコメントは気になった。
まだ現在は友人と飲む時には前と同じ量を飲んでいるので、特に心配はしている訳ではないが、合唱団の高齢の仲間の、年とともに弱くなったよという台詞もよく聞き、そのコメントは至極当然のことと受け止めて、全く飲めなくなるのは困るので、今から飲み方に気をつけて少しでも長くお酒を楽しめられるように、とは思っている。
90歳過ぎまで毎日晩酌し、決まって好物のマグロの刺身を毎日楽しんでいたという人のことを聞いたことがある。体はそれこそ一人一人違うので、タバコを吸い続けて100歳まで生きた人もいるし、酒量も若い時と変わらずずっと飲み続けて90過ぎまで元気だった人のことも聞くが、自分がどんな体で生まれてきたかは不明なので、より長く健康でいられる可能性のある選択をする必要はあるだろう。人生100年時代とは云え、実際その年齢まで生きる人はほんの一部で、100を過ぎて元気な人は、もうそういう強い体に生まれたのだろうから。
死ぬまでにあと何回海外旅行ができるだろうか。
死ぬまでにあと何冊本が出せるだろうか。
死ぬまでにあと・・・・。
今こんなことを考えているのは、あるぶ厚い本のことが頭にあるからだ。その本のタイトルは「死ぬまでに観たい映画1001本」。毎日観たとして3年弱なので、決してこの本にある全てを観ることは不可能ではない。名作揃いなので、既に観ているものもたくさんある。
ただ、この筆者とこちらとはその向かう嗜好が全く同じではないだろうから1001本の全てが感動の対象にはならないだろうが、今後の「何を観るか」の指標のひとつにはなるだろう。名作は、長い年月の間に多くの人々の間で愛され続けたものだからだ。
本を開くと、まだ観ていない映画が本当にたくさんある。
何を観るか、についてこうして考えているのは、現在動画配信サービスがこちらの映画鑑賞の中心になっているからだ。導入する前は、アンテナをはって情報を集め、そのアンテナにひっかかったものを中心に映画館、またはレンタルビデオ屋でDVDを借りて観ていた。現在はすっかり動画配信サービスの鑑賞が中心になって映画館に足を運ぶ回数も減った。
新作も、前より公開から配信される期間が短くなり、それまで待とうということが増え、よほどのこちらの触手に引っかかったものでないとわざわざ映画館へ足を運ばなくなったのだ。
限りなくある幾多の中から何を観るかは、これはもうその時の気分に左右されることが多いが、当たることもあれば外れることもある。監督を頼りに観ることもひとつだが、クリントイーストウッドはもう高齢だし、そういう監督はたくさんいる訳ではない。一時フランク・キャプラにはまり、全作品のDVDを集めたこともあったっけ。
先日、いつも楽しい酒を飲む友人と映画の話になった。その人は小津安二郎のファンで、フィルムセンターに通ってまで初期の作品を観まくったという話も聞いた。そこまでハマるのはめったにないことだろう。彼の作品は勿論こちらだって観ているが、嫁に行く娘を見守る父親、またそれに付随する同じようなストーリーが多く、部屋の中でのローアングルからのカメラ、こだわった調度品を含め細部に計算された映像美の監督というイメージがあったが、とりたてて話の筋が面白いわけでもなく、何故彼が名だたるハリウッドの名監督の間で畏敬の念を注がれているか不思議でならなかった。
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