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はだかてぶくろ|ショートショート

AIの進歩によりだれでも気軽に発明ができるようになった。

くだらない道具がたくさん生まれ世の中を賑わせたが、その中でも「はだかてぶくろ」は大ブームとなった。

バラエティ用のおもしろおかしいものを専門に発明する、TV局所属の発明家が開発した「はだかてぶくろ」は、ただはめるだけで手袋以外がすべてはだかになってしまう道具だった。

後発の発明家達により様々なデザインがつくられ、バラエティのドッキリでは定番のネタとなり、世界中のTV番組で採用されながら、世の人々を笑いの渦に巻き込んだ。

この発明に目をつけたのが、A国の将軍だ。
敵国が使用している防刃仕様のタクティカルグローブを、こっそりとはだかてぶくろにすりかえてしまったのだ。

いざ決戦の時となり、敵国がタクティカルグローブを身につけると、肩にかけていた銃はもちろん、防弾チョッキ、ヘルメット、コンバットブーツや下着まですべて消え失せてしまい、A国は圧勝した。

その戦いをきっかけに「はだかてぶくろ戦争」が始まった。
勝利の鍵は、敵国に悟られないよう、はだかてぶくろを仕込むことだ。

ある国はスパイを送ってグローブをすり替えたり、賄賂をつかって交換させたりして、戦場以外の攻防が激しさを増した。

しかしグローブをしないことで、はだかを回避できると、素手のまま戦う国が増えてしまった。

そこで開発された新型装備が「はだかヘルメット」である。
はだかてぶくろの技術を応用して開発されたもので、はだかヘルメットをかぶると、それ以外の身につけているものが全てなくなってしまうというものだった。

戦場において、頭部を守るヘルメットの有無は死活問題となるため、てぶくろのようにはめずに出陣することはできず、多くの国が悩まされた。

ヘルメットだけでなく「はだかコンバットブーツ」「はだかカーゴパンツ」「はだかデッキジャケット」「はだか銃」など、はだかてぶくろの技術を応用した数々の軍用品が開発された。

さらに時間差ではだかになるアイテムも出てきて「軍事用はだかアイテム」は世界中の戦争で使用されるメジャーな軍用品になってしまった。

……

「敵は見えるか?」
「軍曹!この角度からは見えません!」
「よし、それでは武器の準備はいいか?」
「はい!さきほど拾ったばかりの石なので確実です!」

裸の軍曹が率いる裸の歩兵隊は、手に石を握りしめながら森の奥へ進んでいった。

どんな装備もどんな武器も“はだかてぶくろ”の技術が応用できるようになってしまったこの時代。

戦闘スタイルのトレンドは「はだかにそこらへんでひろった石」に落ち着いた。


【あとがき】

田丸雅智さんのショートショート講座を受け、1回目受けて出たアイデアを、2回目までに書き上げてくるという課題をいただき書いたもの。

締め切りは明日までなのに今日できるってゆうギリギリを攻めるところがもうほんとに。

最初にアイデアを出した時点では、はだかてぶくろが軍事利用されて最悪の戦争となる……っというところまでだったけれど、皆さんとディスカッションをしているうちに最後は、裸で戦争をするから安全。みたいなものが出てきた。

わたしはちょっと怖いはなしというか不思議だけど元来の根暗さが反映されるのか、ダークな内容になりがちなんだけど、一緒に参加された方のアイデアがほんとうに幸せで眩しくてハッピーエンドっていいね!と思い、ちょっとしあわせな結末になりました。

軍事利用するアイデアは、直前まで進撃の巨人を見ていて、頭が戦闘モードになってたからだな。

これを書くために戦争とか、軍用品の名前を調べまくったのでしばらくは、Googleさんからミリオタだと思われる日々を過ごすことになるだろう。

2回目の講座はみんなが書いた作品を読んでディスカッションするようです。たのしみ。そこで良いアドバイスをもらえたら別バージョンもかこう。そうしよう。

それと私は北海道の人間なので本当ならてぶくろは、はきたかった。

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稲橋 閃
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