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バブルボールを知っている|ショートショート

本当は音なんて聞こえるはずがないことを、大人の私は知っているからこれは夢なんだと思う。

ぱつん。
ぷつん。
ぷう。

光と空気が溶け合って、複雑な七色が渦を巻くシャボン玉の中に私のお気に入りが浮かんでは消える。

ジェラピケのパジャマ、シャネルのアイシャドウ、中華街の肉まん、ウネウネのヘアピン、フレンチのコース、小樽旅行にビール。

ただそれを見つめているだけで体の真ん中が熱を持つ。そうして身体が自分の一部だと気づく。

ここから動くには大きな隕石か、小リスの前歯が必要になるけれどまだそれは叶わない。

でも動けるようになるのは知っている。私が知っていることが大切なのだ。

なぜなら1番にわかっていた左足が、身体の周りにぴたりと隙間なく張り付く岩石を少しずつ説得していたからだ。

ぬりえ、マネキュア、ハンドクリーム、マスカラ、ケーキ、お財布、イチゴのビュッフェ。

シャボン玉に浮かぶプレゼントを心の中で一つづつ数える。

今はこれでいい。


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