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「写真」について考えてみる 003

「構図」について

 これまでスナップショットに限っていえば、「構図とは常に変化するものとしてある」と説いてきました。私の先生だった写真評論家の言葉でした。基本的に現在もそれは変わりませんが、昨今はスナップショットの作品でも、合成処理による「適切すぎる配置」という問題が出てきています。そもそも被写体の「構造」を検証しないで、後からどうにでもなるというのは、率直なスナップショットとは思えません。ゆえに、構図活用のためには、写された写真の現場の「構造」を分析してみることを勧めます。

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この写真の現場の「構造」はもちろん、中心に大きなオブジェがあるのと、左右の明るさの違い。方向としては左を指し示しています。そこを生かしフレーミングすると、オブジェは少し右に寄せざるを得ません。さらに、明るさの差を極力抑える補正が必要です。左方向への興味をイメージとして付加させる「構図」が出来上がります。

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フェリー船が近づいてくる風景としては単純。左手の建物の縦ラインと水平線の横ラインの交わり。しかし、過剰な文字の入る建物を大きくカットし、さらに坂道という特有の構造を考え、右方向に下る人物をしっかりフレームインさせています。船の方向にも対応し、自然な動きがゆったりした映画の時間の流れをもイメージさせます。

構図を考えるには、私は「絵画」よりも「映画」だと思っています。黒澤明にしても小津安二郎にしても名画には必ず動きを伴った「構図」が当てはめられています。もちろん、アクション映画でもよいのですが。

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 構図を考える大切なポイント

・構図に縛られない
・構図をバカにしない
・構図を模索する

初出掲載 フォトコン 2020年2月号


古くから様々な読者に支持されてきた「アサヒカメラ」も2020年休刊となり、カメラ(機材)はともかくとして、写真にまつわる話を書ける媒体が少なくなっています。写真は面白いですし、いいものです。撮る側として、あるいは見る側にもまわり、写真を考えていきたいと思っています。