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豪華客船スパの労働環境の実際 ~夢とビジネスが交差する場所~

豪華客船で働くというと煌びやか世界を思い浮かべる人が多いのではないかと思う。実際、乗客として乗れば、そこには非日常な豪華な世界が待っている。

では、働く側で乗った場合はどうだろうか?
今回の記事では、豪華客船スパの労働環境につて、実際のところを掘り下げていこうと思う。


副題にも書いたが、「夢」があるのが、豪華客船という職場だ。
働きながらにして、さまざまな国に行くことが出来る。
ワールドクルーズを行っている客船に乗れば、3~4カ月で世界1周し、30~40ヶ国を周ることが出来る。

働きながら魅力的なさまざまな港街を訪れることが出来る仕事は、世の中にそうそう無いだろう。そういった点で言えば、確かに夢のある職場だ。

また、お金の面で言えば、客船のスパの給料は歩合制であり、自分の売上が上がれば上がるほど収入が増える。給与は青天井の環境だ。
ビジネススキルのある人であれば、お金も稼げて世界も見て周れる、夢のある環境と言えるだろう。

しかし、良い点があれば悪い点もある。
両方を語らないのはフェアじゃない。
これまで計6回の契約を終え、7回目の乗船中の立場だから言える豪華客船スパで働く実際のところを書き残しておこうと思う。

豪華客船スパで働くことに憧れを持っている人はぜひこの記事を読んでおいて欲しい。
憧れだけでは乗り越えられない壁に直面するかもしれないから。
何が待っているかを知っていれば、乗船後の困難もきっと乗り越えて行けるから。

豪華客船スパってこんなところ。夢のある環境。

これまで私は、1回7カ月の契約を6度満了し、客船で訪れた国の数は30ヶ国を超える。
その間に生涯の友と呼べる友人も多く出来た。
だいたいどの国に行っても友人がおり、海外に行って何かあった際に頼れる友人がたくさんいる。
どこに行っても何とかなるだろうと思えるようになったのは、豪華客船という職場での経験と”つながり”を得たのが大きい。

客船での給料で、1カ月の手取り最高額は、約9000USドル(日本円に換算すると、ゆうに100万円を超える。)
トップ・オブ・トップのレベルになると、手取りで月2万USドルを超えるのが今の豪華客船スパという環境だ。
月の手取り300万円も可能、それが豪華客船鍼灸師という仕事である。

豪華客船は、買い物をしなければあまりお金を使う機会がないので、かなりの額を1回の契約で貯金することが出来る。

私は、7カ月で200~300万円貯金して、契約と契約の間の数カ月の休暇中にそのお金を使って、世界中を旅する生活を20代のころは送っていた。
おかげで、30歳になる前に60か国・230を超える都市を旅することが出来た。

車での単独アメリカ横断や1カ月半のヨーロッパバックパック旅、2カ月半のアフリカ旅、1カ月ハワイ一人旅、2週間のニュージーランドロードトリップなど、普通に仕事をしていては絶対にできないであろう経験をすることが出来た。

職場であるスパはとても綺麗で、5つ星ホテルの中にあるスパのような環境で、取り扱く商品もイギリスのElemisというトップブランドのスパ商品だ。
対応するゲストは、乗る船によるが、名だたる会社のCEOやセレブ相手となることも少なくない。

いわば、世界最高レベルの接客を学ぶことが出来る環境だ。

最高レベルの環境で働けて、お金を稼ぎつつ、世界を旅することが出来る。
ひとまとめに言ってしまえば、それが豪華客船スパという環境だ。

船に乗れば誰でもお金をいっぱい稼げるのか? そんな甘い話ではない。

夢を語るのは良い。
だが、実際のところも知っておいて欲しい。
日本人鍼灸師の多くは、1度目の契約は修行となる。
なぜなら、英語力が他国のクルーより劣るからだ。
治療技術を持っていても、英語で接客と治療説明が上手くできなければ、集客に苦労する。
治療技術も不十分であれば、より苦労するだろう。

私も初回の契約の時はとても苦労をした。
半年間のカリフォルニア留学経験があり、他の日本人鍼灸師よりはマシだったとはいえ、最初の2~3カ月は、英語で思うように自分の言いたいことが伝えれず、枕を涙で濡らしたこともある。

文化の違いや性格の違いで、スパの同僚と良好な関係が作れないと地獄をみることになるだろう。
その点、私は歳の近い同僚が多かったこともあり、気にかけてもらい、同僚とは良好な関係を作れたので、英語に苦しみつつも楽しみながら初回の契約を満了することが出来た。

しかし、給与の面では、最初から良かったわけではない。
最初の3か月は、手取りで30万円いくかどうか。
クルーズの閑散期で一番悪かった時は、手取り27万円の時もあった。
日本で働く鍼灸師からするとマシじゃないかと思うかもしれないが、休暇も含めた12カ月換算すると、給与は実際の手取りより低くなることを考えてほしい。

多くの日本人鍼灸師の初回の契約の給与は、1か月あたり手取り30~40万円くらいになると考えておくと良い。
これは、まずまずの場合の給与だ。

全然売り上げることが出来なければ、20万円を下回る可能性がある。
一応、最低保証額の取り決めはあるが、800USドル(約11万円ほど)だけ。
まったくうまくいかなければ、月10数万円くらいしか給与をもらえない可能性もあるのが豪華客船という職場だ。

客船の売上見込みは、良い船に乗れるかどうかで左右されると言っても過言ではない。そして、英語力の無い日本人鍼灸師が最初から良い条件の客船に乗せてもらえることはまずない。

最初は皆必ず苦労する。
1回目の契約は修行の場だと思って乗るのが良い。

豪華客船スパで働く場合の悪循環

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