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熱異常と一千光年から読み解く足立レイと初音ミク

はじめまして。
ご覧頂きありがとうございます。

本記事の内容は以下の楽曲の解釈・考察です。
あくまでも一個人の見解であること、noteの執筆経験の少ない者による記事であることをご了承ください。

本記事の構成はこのようになります。

1.熱異常の概要

熱異常は、いよわ氏がUTAU音源の足立レイを使用したオリジナル楽曲であり、ボカコレ2022秋への投稿曲でもある。
動画概要欄にもある通り、コーラスに初音ミクも用いられている
さらに

足立レイさんが好きなので歌ってもらいました

今回MVは足立レイさんのデザインをお借りして描いております。(いよわガールズではないので把握お願いします!)

YouTube概要欄より引用

という文と共に、足立レイについて知ることのできる動画のリンクが掲載されている。

2.足立レイについて

①足立レイの設定・特徴

足立レイとは、みさいる氏によって開発されている等身大のヒューマノイドロボットである。
これは、合成音声モデルや3Dモデルなどのキャラクターコンテンツにもなっており、熱異常はこの合成音声モデルであるUTAU音源の足立レイを用いている。
以下は私よりも丁寧かつ分かりやすく説明されているものを引用する。

みさいるは、2009年に「2次元に入れないのなら、2次元から引きずり出そう」という狂気じみたロマンから等身大初音ミク型ロボットを開発・発表。またその6年後の2015年にも等身大初音ミク型ロボット二号機『HRI‐2初音ミク』を完成させている。

しかし初音ミク型ロボットは、クソデカツインテールだけで2kgあり、本体の重量や関節の構造、さらにソフト面での制御機能の関係から、安定した自立歩行が不可能な状態であった。
さらにボディはスチロールを一から削って作っていたためにスペアや同系機などの量産ができず、一体の制作に数年かかっていた。みさいるは他のボーカロイドシリーズなど複数のキャラクターを制作することも視野に入れて、この制作方法には限界があると判断した。

そのため、第三世代機としてこれまでの「表情を変えて喋ったり歌ったりできる」「等身大のアニメ風美少女」といったコンセプトを踏襲しつつ「自立歩行可能かつ遠隔操作での『操縦』システムを搭載した人型ロボット」を作ろうと考え、まず量産における時間的・技術的コストを抑えた形でのテストヘッド用の試験機の企画が立てられた。
本来試験機は簡素な骨組みや、装飾のない素体のようなものが多いが、「そんなんじゃ味気ないしもったいない」ということで、単純に「初音ミク3号」ではなく「足立レイ」という新たなキャラクターを設定。
これまでの(初音ミク型ロボット)プロジェクトの直接の後継機ではなく、次世代機のプロトタイプとして開発がスタートした。

「足立レイ」という名前は「自立歩行(自分の足で立って歩くことができる)を目指した0号機」に由来する。

pixiv百科事典より引用 一部抜粋

以上より、足立レイは「初音ミクを元に創られる歩行及び操縦可能な人型ロボット」と言える。

また、設定に以下のようなものがある。
特に本記事の内容と関係するものを抜粋し引用する。

頭にはヘッドセット型コンソール&ハブ、LEDライト、髪留めのような形でマイコン(正式名称)を装着している。
(イラストでは本数が省略されがちだが)頭からは黒い棒が4本突き出ており、このうち長い2本がwi-fiとBluetooth用のアンテナ、短い2本はワイヤレスマイクの送信機である。(動画投稿時点では排熱口としていた)

目は虹彩の部分に「Humanoid Character Interface 3 Prototype 0」の刻印が刻まれており、瞳の部分はレンズ状のレンズアイ(カメラのレンズのように見える目)になっている。

高度な機能を搭載するため高温になりやすく、初期案では顔が重要な美少女型でありながら頭部に排熱口を搭載していたのも、そうまでしないと排熱が追いつかないためである。

pixiv百科事典より引用 一部抜粋

②UTAU音源としての足立レイ

一般的なVOCALOID、VOICEROID等の音声合成ソフトでは、声の元となる人間の声優が存在する。その一方、足立レイには声の元の人間が存在しない。そのため彼女の声はsin波を組み合わせた完全な人工音声である。
これについては熱異常の動画概要欄に掲載された動画でも理解出来る。

3.いよわ氏について

いよわ氏は可愛らしいイラスト・動画と独特なリズムや音色・歌詞から、他に類を見ない独特な世界観を持つボカロPである。胃が弱い。

彼の楽曲にはオリジナルキャラクターが登場しており、それらは「いよわガールズ」と呼ばれている。

しかし熱異常ではいよわガールズは登場せず、「足立レイ」としての楽曲となっている。

今回MVは足立レイさんのデザインをお借りして描いております。(いよわガールズではないので把握お願いします!)

YouTube動画概要欄より引用

熱異常の動画からも分かるが、歌以外の楽曲製作全てをいよわ氏自身が手がている。

4.解釈・考察

まず初めに、本楽曲への大まかな世界観の解釈と指針を示してから本題に入ろうと思う。

本楽曲は太陽の黒点が巨大化しフレアによる温暖化により地球は砂漠化、電磁障害にて機械が暴走、地球が終末と化したストーリーと解釈している。このストーリーとともに表現をみていくと初音ミクと足立レイの構造が読み取れる。

以上のことを念頭に置いて読んでいただけると理解がスムーズになるかと思う。

①歌詞からの解釈・考察


熱異常の歌詞は全て「」で括られている。このことからセリフであることが強調されいる。また、この楽曲にはコーラスとして初音ミクが存在している。この初音ミクのコーラスは左側よりも右側から大きく聞こえる。足立レイが蓄音機を右耳にあてていることから、足立レイは蓄音機から聞こえる初音ミクの声を聞いていると解釈できるだろう。

「死んだ変数で繰り返す 数え事が孕んだ熱  

熱異常  歌詞

「砂漠化し人類が滅亡しかけた荒廃した世界で、機械だけが無造作に同じ動きを反復して熱暴走を起こしている。」という解釈になる。ここだけを見ると最初から飛躍した解釈に感じるが楽曲全体及び以降の解釈・考察を見ると納得できることを願う。

変数というのは一般には「変化する値を表す文字」のような意味だが、ここでは機械・ロボットへの命令・プログラムのようなものと解釈した。そのため、「死んだ変数」とは、機械・ロボットが動くための命令がなされていない。すなはち、命令を送ることができない、またはその命令を行う人間がいないため、同じ動作を繰り返し暴走している。(この暴走の根本的な理由は後述する。)
「数え事」という単語は調べる限り見当たらなかった。しかし、なんとなく無造作な機械っぽい雰囲気は感じられる。
それが熱を孕んでしまっている。負荷がかかっており、正常では無いような情景が想像できる。

どこに送るあてもなく  あわれな独り言を記している

熱異常 歌詞

まず『独り言を記している』という表現から、このメッセージは蓄音機に残されたものだと確認できる。そのメッセージには送る宛が無い。つまり、この先の未来にこのメッセージを受け取られる事はないような状況にあるといえる。先述した「人が滅亡しかけた荒廃した世界」と合致するだろう。そんな状況で初音ミクは、送る宛がなく、あわれである事を理解し、蓄音機に恐ろしい現状を記している。

電撃と見紛うような 恐怖が血管の中に混ざる
微粒子の濃い煙の向こうに 黒い鎖鎌がついてきている

熱異常 歌詞

前半は明確な恐怖の表現である。蓄音機に記された声を聞いた足立レイ自身の恐怖とも考えられるが、「」の中ということもあり初音ミク側の恐怖と捉えるのが筋だろう。詳しくは後述するが、私は、いよわ氏は足立レイと初音ミクを明確に対立させていると考えている。中の人間のいない足立レイと中の人間がいる初音ミクとの対立関係である。「血管」という人間らしい表現が相応しいのは後者であるだろう。

後半も概ね初音ミク側の恐怖の表現である。
『微粒子の濃い煙』からは、大気が汚れ、澱んだ世界の終末感が感じられる。

『黒い鎖鎌がついてきている』は、死が常に背後にあり、なおかつそれがよく見えない、という言葉では表現し難い恐怖を感じることができる。

消去しても 消去しても 消去しても 消去しても
消去しても 消去しても 消去しても 消去しても
無くならないの

熱異常 歌詞

本楽曲で度々用いられ印象的な連続フレーズ。
直前との繋がりを考え、すぐ近くにある死への恐怖はどれだけ忘れようとしても忘れることはできない、という解釈が自然だろうか。
高速で繰り返され、切迫感や動揺、錯乱した様子が鮮明に伝わる。

とうに潰れていた喉
叫んだ音は既に列を成さないで

熱異常 歌詞

『とうに潰れていた喉』からは、恐怖に襲われていた時間の長さがわかる。また『叫んだ音は既に列を成さないで』からは、まともな言葉や単語を発することがもはやできず、錯乱、狂乱した様子が伺える。

安楽椅子の上
腐りきった三日月が笑っている

熱異常 歌詞

ここは少し解釈が難しく感じる。
安楽椅子とは、頭の部分までの背もたれのある大きい椅子のことである。
「安全な場所から見下し嘲笑う悪の上位存在」のような解釈もできるが、この機械・ロボット達の熱暴走が人間には触れることのできない上位存在による作為的なものとは捉え難い。
また、地球が危機的状況にあることから、月は安全な場所から他人事のように笑っているように見えた、とも解釈できるが少々無理があるように思う。
ここでは、人類及び地球の終焉を安楽椅子と表現したと解釈する。

先述したが、足立レイは歩行及び操縦が可能なロボットを目指している。歩行ができることが最大の価値のひとつである足立レイにとっての安楽椅子はすなわち存在の否定のような考察もできない訳では無い。

もう
すぐそこまで すぐそこまで すぐそこまで
すぐそこまで すぐそこまで すぐそこまで
すぐそこまで すぐそこまで
なにかが来ている

熱異常 歌詞

二度目の連続フレーズ。恐怖を感じさせる対象である「なにか」が、もうすぐそこまで来ている、と大まかに解釈する。

大声で泣いた後
救いの旗に火を放つ人々と
コレクションにキスをして
甘んじて棺桶に籠る骸骨が
また
どうかしてる どうかしてる どうかしてる
どうかしてる どうかしてる どうかしてる
どうかしてる どうかしてる そう囁いた

熱異常 歌詞

終末を迎え、「どうかしている」と苦言を呈すものの、人々は混乱し正気ではなくなっている様子が伺える。人間は死ぬと骨になるが、人々と骸骨という表現からそれらの境目、つまり生と死の境目が失われつつあると考えられる。また、『どうかしている』を「同化している」と解釈することでも、生と死が同化しているという同様の考察を可能にする。

未来永劫誰もが
救われる理想郷があったなら
そう口を揃えた大人たちが
乗りこんだ舟は爆ぜた
黒い星が 黒い星が 黒い星が 黒い星が
黒い星が 黒い星が 黒い星が 黒い星が
彼らを見ている

熱異常 歌詞

終末から異星への脱出を試みたが失敗した様子が描かれている。『舟』という表現から連想されるのはノアの方舟。そんな舟すら爆ぜてしまった絶望。(『舟』という表現だけでノアの方舟は飛躍していると感じないわけではないが、いよわ氏は似た表現を割とする。最近だと『クリエイトがある』から『テセウスの水着回』。)
連続フレーズから、この試みの失敗は人間を監視する「黒い星」によるものなのか、それとも「黒い星」はただ人類の滅亡を傍観しているだけなのか、どちらとも解釈できるが先述した通り一連の熱暴走による終末が上位存在によるものとは考えにくいため後者と考察する。
この「黒い星」についての詳しい考察は後述する。

哭いた閃光が目に刺さる
お別かれの鐘が鳴る
神が成した歴史の
結ぶ答えは砂の味がする

熱異常 歌詞

前半では強い光によって数多の人間が死んでいく様子が伺える。余談ではあるがいよわ氏は別楽曲『あだぽしゃ』でも「鐘が鳴る」ことで別れを告げている歌詞がある。
人類が確実に滅亡へと向かっていることが分かる。
『閃光が目に刺さる』という表現や『黒い煙』、後に歌詞にある『灰色の雲』という表現から原爆や水爆が連想される。原爆や水爆を用いた攻撃を受けたという考察や、人類が扱っていた原爆や水爆が機械の暴走によって制御されずこのような事故を招いたという考察も可能ではある。しかし私はこの光は太陽フレアであると考察する。詳しい考察は後述する。

後半では神が創造した世界が砂に帰す、もしくは砂漠化する、と解釈できる。「神が成した歴史」という壮大なものの結末は砂のように呆気なく散ってしまったと捉えられる。
(ここの表現とっても綺麗で好き。)

死んだ変数で繰り返す
数え事が孕んだ熱

熱異常 歌詞

繰り返しの表現のため省略。
強いて言うなら先述した機械の熱暴走が加速していると解釈できることだろうか。

誰かの澄んだ瞳の
色をした星に問いかけている

熱異常 歌詞

後に似た表現があるためそちらで考察する。

拾いきれなくなる悲しみは
やがて流れ落ち塩になる

熱異常 歌詞

『拾いきれなくなる悲しみ』は抑えることができずに溢れてしまう涙と解釈する。すると、その涙の水分が蒸発し塩が残るまでの時間の経過が読み取れる。もしくは、熱異常・砂漠化による熱で涙の水分の蒸発が早くなり、かつ、人間の感情が熱異常に対して無力であるようにも感じられる。
また、先述した『神が成した歴史の 結ぶ答えは砂の味がする』という歌詞の解釈と同様に、溢れ出る感情すら塩のように呆気なく散ってしまうとも解釈できる。

祈り 苦しみ 同情 憐れみにさえ じきに値がつく

熱異常 歌詞

ここは少し抽象的な解釈しかできなかった。
「祈り・苦しみ・同情・憐れみ」はどれも心の動きとしてセンシティブかつ負のイメージを感じる。そのような値の付けようのない感情にもじきに値がついてしまうような世界の異常さのようなものの表現だと解釈した。

今 背を向けても 背を向けても 背を向けても
背を向けても 背を向けても 背を向けても
背を向けても 鮮明に聞こえる悲鳴が

熱異常 歌詞

鮮明に聞こえるこの悲鳴は熱異常によって死にゆく人間の悲鳴と解釈する。その悲鳴が背を向けても鮮明に聞こえるほど近づいていているということが理解できる。

幸福を手放なす事こそ 美学であると諭す魚が
自意識の海を泳ぐ
垂れ流した血の匂いが立ちこめる

熱異常 歌詞

少々間接的な表現。『幸福を手放す事こそ美学である』、つまり「救いを求めたり生き延びようとしたりする事を諦める事が正しい」という考えが自分の中で彷徨っている、と解釈する。
詳しい理由は後述するが、この地球は砂漠化している。つまり本来の“魚”は“海”を泳ぐことができない。
また、『垂れ流した血』から、体から出る血を止めることを諦め垂れ流れていると解釈できる。生きることへの諦め、人の死が近い事が伺える。

黒い星が 黒い星が 黒い星が 黒い星が
黒い星が 黒い星が 黒い星が 黒い星が
私を見ている あぁ

熱異常 歌詞

彼らを見ていた『黒い星』の視線が『私』へと移った。ここからは『黒い星』とはなにかという解釈とともに私の考察を述べたい。

私はこの『黒い星』を太陽の黒点と解釈する。
太陽の黒点とは、表面上の温度の低く磁場の強い部分であり、周期的に大きさや数が変化する。この黒点が多く存在する場合、太陽の表面で爆発が次々に発生し、膨大なエネルギーが地球まで降り注ぐことにより多くのエネルギーを受け取り温暖化する。また、この黒点は磁場の変化から爆発現象、太陽フレアを引き起こす。これによる電磁波の発生やプラズマの噴出は地球上にて通信障害を引き起こす。
つまり「熱異常」とは、太陽の黒点が何らかの理由で巨大化し、地球の温暖化が著しく進み砂漠化、太陽フレアにより機械がエラーを起こし暴走を続けているという状況であるといえる。
さらに私は、この『黒い星』が足立レイの瞳孔であると解釈する。すると、足立レイの目のオレンジの虹彩と黒の瞳孔は太陽と黒点と解釈できる。

これと対になる表現として「あなたの澄んだ瞳」がある。これを地球かつ初音ミクの瞳と解釈する。

これらの解釈と『黒い星が私を見ている』という歌詞から、
終末の記録を蓄音機に残す初音ミク
蓄音機の初音ミクの音声を聞くレイ
レイの視線の先には初音ミク
という繰り返しが浮かび上がる。

これは、
初音ミクのデータを元に造られる足立レイ
その足立レイを元に造られる初音ミク
その初音ミクのデータを元に造られる足立レイ
という“足立レイ”の構造そのものである。

(以降少し解釈を飛躍させ、太陽をレイ、地球をミクと示すことがある。)


この『黒い星』をブラックホールと解釈することもできる。その解釈の理解のために“星の死後”について解説する。
恒星は、核融合反応によって光を放っている。
この核融合反応に必要な燃料が無くなると星は光ることができず超新星爆発を起こしブラックホールになる。通常、星は光っているため、「黒い星」とは星が死んだ姿であるブラックホールと解釈できる。これを足立レイの瞳(虹彩)であると解釈することで先述した考察に似た考察が可能になる。

(星が死に、ブラックホールとなる過程については、私には物理学・天文学への知見が少ないため省略する。間違った事を伝えるのは嫌なので示しておくが、さも当然のように“星が死ぬとブラックホールになる”と示したがこれはその星が太陽の何十倍の質量を有する場合に限る。地球はそんなわけもないのでこの考察は筋が通らない。専門的な知識であるためいよわ氏がそこまで知らずに曲を製作した可能性や、別の世界線、仮の地球での出来事という可能性もある。)

泣いた細胞が海に戻る
世迷言がへばりつく
燕が描いた軌跡を
なぞるように灰色の雲が来ている

熱異常 歌詞

泣いた細胞は涙のことだろう。『海(氵)に戻る』で「涙」ということだろうか。
世迷言とは 「ひとり言に、愚痴を言うこと。わけのわからない繰り言を言うこと。」という意味。繰り言とは「同じことを繰り返し言うこと。」という意味。終末感の立ち込める世界でそのような言葉しか出ない、そんな状況だろう。
同じフレーズが高速リフレインされるこの曲にも合う歌詞である。
『燕が描いた軌跡』は「燕が低く飛ぶと雨」ということわざからの表現だと考える。しかしこの世界は超温暖化、砂漠化していると解釈しているため『灰色の雲』雨を降らせる雲と解釈するよりも、曖昧に恐怖の対象と解釈する。

編んだ名誉で明日を乞う
希望で手が汚れてる

熱異常 歌詞

ここの歌詞は解釈しきれていない。直接的なsosの表現がないことや、『どこに送るあてもなく あわれな独り言を記している』、『救いの旗に火を放つ人々とコレクションにキスをして甘んじて棺桶に籠る骸骨』や『幸福を手放なす事こそ美学であると諭す魚が自意識の海を泳ぐ 』という歌詞から救いがなく終わりが迫っていることが嫌でも理解出来て諦めざるを得ない状況が見える。そんな中で『明日を乞う』という行為は諦めとは対局の行為であるように私は感じてしまう。
引用した二文を繋げることで、『明日を乞う』という本来希望のある行為ですら、手を汚す様なことであると解釈する。
(ここもとっても好きな表現。)

あなたの澄んだ瞳の
色をした星に問いかけている
手を取り合い
愛し合えたら
ついに叶わなかった夢を殺す

熱異常 歌詞

今までは「誰かの」だった問いかけの先が「あなたの」となった。澄んだ瞳の色をした星は地球と解釈している。これは聞き手である我々へのメッセージと解釈する。ノアの方舟が爆ぜないように、手を取り合い、愛し合い理想郷を目指して、というメッセージだろう。『遂に叶わなかった夢を殺す』ここでの夢は「熱異常」のない世界だろうか。ただ単に“夢”を殺すのではなく、“叶わなかった夢”を殺す。

思考の成れ果て
その中枢には熱異常が起こっている

熱異常 歌詞

ここも難しい。この熱異常は誰に起こっているのか特定し難い。ここでは、ラスサビにて「熱異常」そのものの表現だと解釈する。
人間は思考する生き物である。『思考の成れの果て』とは人間の思考を取り入れ完成した機械のAIコンピュータのようなものだろうか。その中枢で「熱異常」は起きている。
また、中枢まで「熱異常」に侵されてしまった、とも解釈できる。

さらに、記録を記す初音ミク自身が思考を繰り返しすぎて熱異常に侵されてしまったとも読み取れる。

現実じゃない こんなの 現実じゃない こんなの
現実じゃない こんなの 現実じゃない こんなの
耐えられないの

熱異常 歌詞

最後の高速リフレイン。地球の終末を耐え難いと嘆いている。

以下は先述した歌詞と同様の歌詞が並んでいる。
『すぐそこまでなにかがきている」』と残しこの曲は終わる。それと同時に初音ミクも命を絶っただろう。地球も同様。

①②からの解釈・考察をまとめると、「熱異常」は

太陽の黒点が巨大化しフレアによる温暖化により地球は砂漠化、電磁障害にて機械が暴走、地球が終末と化す。そんな状況を初音ミクはボイスレコーダーに記しそれを足立レイが聞く。黒い星を黒点だけでなく足立レイの瞳と解釈するとこの曲の構造は足立レイと初音ミクの構造と繋がる。

という楽曲である。

『なにか』が具体的に何を表すものかは示さなかった。それを知りたかった方には申し訳ないが、示さなくても私の解釈・考察は伝わり、尚且つ具体的に断定されず解釈の余地を最大限残したいためである。ご容赦いただきたい。

②動画概要からの解釈・考察

動画時間は4分1秒。401はエラーコードとして有名。

401エラー(Unauthorized)とは、ウェブサイトやウェブアプリケーションにおいて、ユーザーが要求したリソースへのアクセスが許可されていない状態を示すHTTPステータスコード

機械に起こるのエラーの表現であり、熱異常を起こしている機械を止める術がない状況が読み取れる。

動画は蓄音機を右耳にあてる足立レイのバストアップが真横から描かれている。
数枚のコマ送りで成されており、髪や服の動きから多少の風をを感じるが、彼女は動画全体を通して一度も瞬きをしていない。足立レイの機械である表現であろう。

描かれている足立レイを見ると、先述した通り足立レイのマイコン(ヘッドセット)には4本の棒があるはずだが、2本しか見られない。2本に省略されることも多くあるが、「音楽よりも絵を選ぶ」(意訳)と自身のインスタグラムにて述べるいよわ氏がそのような省略をするとは考えにくい。このことから、この足立レイは欠損のある状態であるといえる。この2本(本来は4本)は長い2本がwi-fiとBluetooth用のアンテナ、短い2本はワイヤレスマイクの送信機であるとされているが、元は排熱口とされていた。そのため、排熱口に欠損があり熱を体外に放出しにくい状態にあるという解釈も可能である。

1:29秒以降で画面がゆらゆらと揺れている。これは陽炎を表現しており、地球の温度が高くなっていることが見て取れる。
以降で画面の画素数が低くなったり言葉では説明しがたいがバグったような画面になったりする。これも機械のエラーの表現のひとつであるだろう。

歌詞が終わると足立レイは消え、ボイスレコーダーに花を添えている。花の種類に関しては私の知見が少なく、調べる限りでも酷似するようなものは見つからなかった。強いてあげるならコレオプシス・ガーネットかコスモス。どちらも花弁が8枚なのに対し熱異常の花の花弁は9枚ある。

“異常”や地球外などの解釈ができる。(普通にコレオプシス・ガーネットでもコスモスでもない可能性の方が高い。)
機械である足立レイが終わってしまった地球・初音ミクに対し花を添えるという行為は追悼しているのであろう。

歌詞を通して見ると、人間のような表現が度々用いられていることが分かる。
例えば
・恐怖が血管の中に混ざる
・とうに潰れていた
・結ぶ答えは砂の味がする
・拾いきれなくなる悲しみは やがて流れ落ち塩()になる
祈り 苦しみ 同情 憐れみにさえじきに値がつく
・垂れ流した血の匂いが立ちこめる
泣いた細胞が海に戻る
など。
解釈次第では上記の例以外にもそのような表現が見つかるだろう。これらの表現は地球の人間、初音ミクに対して用いられている。
私は、中の人間が存在しない足立レイと中の人間が存在する初音ミクとの対比を表現したいためのものであると考える。(そのため花を手向けた事にあまり納得していない。死を悲しみ花を手向けるという行為はあまりにも人間らしすぎる。足立レイが初音ミクに“気持ち”を教わったという解釈も素敵かも。)

この、「足立レイと初音ミクの対称性」の表現についてさらに考察する。

③一千光年との関係からの考察

一千光年とは以下の楽曲であり、ボカコレ23年春への投稿曲である。いよわ氏が今まで楽曲で用いた全ての合成音声を用いている。

足立レイと初音ミクを対照的に描いていると前述したが、私は一千光年が熱異常と対をなす楽曲と考えている。

・同じ楽曲イベントにて投稿されたこと
・どちらもキャラクターがバストアップが真横から描かれておりそれぞれ逆の方向を向いているという構図が類似していること
・熱異常の動画の以降、初音ミクのコーラスが消え背景が暗くなっていく画面で色相反転させると一千光年の背景と一致すること
・熱異常の動画にて動かない足立レイと走り続ける初音ミクは太陽系での太陽と地球の関係
・表情の変化しない機械である足立レイと表情の豊かな初音ミク
・過去の記録についての熱異常と未来を見据える一千光年

一千光年
熱異常 3:01前後 色相反転

私はこの楽曲は熱異常の延長の楽曲であり、熱異常で爆ぜてしまった地球、及び初音ミクの話であると解釈する。

ここからは一千光年の歌詞を元に解釈・考察を進める。

「どこへ行こう」と話しかける
窓の中 じきに春
「そこへ行こう」と思いふける
白紙の地図さえも持たずに
かわいいわがままを言って
その隣で歩きたいな
かっこいいことを言って
振り返って笑えるかな

一千光年 歌詞

太線部分を足立レイが歌唱している。
先述した通り足立レイは「初音ミクを元に創られる歩行及び操縦可能な人型ロボット」である。
つまり、「歩く」という行為は足立レイにとっての大きなひとつの目標なのだ。
熱異常の続きと解釈すると、太陽系にて太陽(レイ)と太陽を中心に回る地球だった恒星(ミク)の関係を『その隣で歩きたいな』と示したのだろう。

the light will lead us to the stage.
Someday we'll reach for the star.

(嬉しかっただけ)

一千光年 歌詞


前半の英語の部分はSOLARIAという合成音声が歌っている。このSOLARIAは太陽の女神がテーマである。歌詞を日本語に訳すと「光は舞台へと導いてくれるだろう。いつの日か星にたどり着こう。」
地球は爆ぜてしまったがその星のカケラがまた地球のような星となれるだろう、と解釈した。

『(嬉しかっただけ)』はこの楽曲唯一の初音ミクの歌唱する歌詞である。(歌詞としては無いが咳払い、コーラス、転ぶ時の声はある。)
括弧で囲われて他の歌詞と区別されている。これは熱異常で地球・初音ミクが爆ぜてしまったため、初音ミクは歌っていない(少なくとも声を出すことは出来ない)と解釈する。

以上が熱異常と対をなす一千光年の解釈・考察である。

5.まとめ(結論だけみたい方はこちら)

太陽の黒点が巨大化しフレアによる温暖化により地球は砂漠化、電磁障害にて機械が暴走、地球が終末と化したストーリー。そんな状況を初音ミクはボイスレコーダーに記しそれを足立レイが聞く。黒い星を黒点だけでなく足立レイの瞳と解釈するとこの曲の構造は足立レイと初音ミクの構造と繋がる。さらに一千光年を熱異常の後の世界と考えて読み解くと足立レイと初音ミクの対照性が表現されていることがわかる。

熱異常サイコ~‼️カッケ~~~‼️‼️‼️

6.あとがき

先日、ニコニコ超会議2024に参加してきました。詳しい説明は省きますが、「超ボカニコ」という、沢山のボカロPがDJをするブースがありました。そこで原口沙輔氏、r-906氏が足立レイを用いた新曲を発表しました。
来てるんです。“足立レイの流行”が。
また、そのニコニコ超会議2024のテーマソングがとりぴよ氏の『0001』という楽曲でした。この曲もまた、初音ミクと足立レイを用いた楽曲なのですが、私が解釈した熱異常と一千光年同様に初音ミクと足立レイの構造関係を歌った曲と解釈しました。(追記なのですが本人から解説のnoteが出てました。気になる方はそちらを見てみてください。ここでは私の解釈のみを示します。)

0001 3:34前後 熱異常(?)
0001 3:42前後 一千光年(?)

さらに、そのボカニコステージにてとりぴよ氏はラストで以下のセトリでDJをしました。

砂の惑星/ハチ
熱異常/いよわ/Alieys Remix
初音ミクの消失/CosMo@暴走P
0001/とりぴよ
ray/BUMP OF CHICKEN/とりぴよRemix
一千光年/いよわ/とりぴよRemix

この熱異常は以下の動画で、歌唱は初音ミク。

このnoteをここまで読んでいただき私の考えが伝わっていれば、この並びでとりぴよ氏が自分と同じ考えを持っている、と感動できると思います。
このnoteはニコニコ超会議よりも前に執筆を始めており、このRemixも沢山聞いていたのでボカニコで聴いた時は耳を疑いました。この時だけは私のための時間だった。本当にありがとう。
このセットリストについても、とりぴよ氏本人がnoteにて説明されているためそちらも是非。


話は変わりますが先日、東京外国語大学にて開かれたr-906氏の「ボーカロイドと多文化共生」という講義を聞いてきました。そこで彼の『ボイドロイド』という楽曲の紹介をされていました。そこでの考え方に感銘を受けたので本記事の内容とは無関係ですがここに記したいと思います。(口外するなとは言われなかった気がするのですがダメだったら消します。)

僕が歌ったのは赤い孔雀
彼が思ったのは青い鴉
羽ばたく鳥は電話線へ
霞むimage
君には詞がreal

彼の言葉に惑わされないで
僕に教えて
君が見たのはどんな色の羽根?

ボイドロイド 歌詞

要約すると、r-906氏は赤い孔雀のことを『鳥』と示したが、ある受け取り手は『青い鴉』と受け取った。その受け取り手の『青い鴉』という受け取り方を真に受けず、あなたはどんな『鳥』を想像したかを教えて欲しい。というものです。

r-906氏は、「受け取り方の差異があることは問題なく、正しい解釈なんてない。既にある解釈や考察を受け入れるのもいいが、自分自身で解釈してもらえると嬉しい。考察も立派な創作活動。」(意訳)と仰っていました。

このnoteにて、私は『熱異常』という楽曲に対する解釈・考察を示しましたが、これも『青い鴉』にすぎません。


私の言葉に惑わされず、あなたなりの『熱異常』を感じてください。


良いボカロ(広義)ライフを。


ありがとうございました。

2024/5/7

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