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高専ロボコン沼からペットなペンギンロボへの愛を語る

高専ロボコン、ご存知ですか?

ああ、年末前にNHKで放映されてるやつね。
理系の地味でモテなさそうな男子たちがやってるやつ。
その年によってボール投げたり、箱を運んだりするやつね。



このくらいは認識されてるかな?どうだろ?

私はこんなもんでした。
たまたまテレビでやってたら、つい最後までみちゃうんだよねーってくらいには好き、だった。2012年までは。



その年、一匹のペンギン型ロボットでロボコンの魅力にハマった。

Twitterでロボコン関係者1000人以上フォローして、年中その動向を観察するくらいにハマった。

クッキーも焼くくらいハマった。
(2012〜2015までの好きなロボたち)

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毎年変わる競技の面白さ、高専生のすごさかわいさ、ロボットの魅力。
もっともっと、高専ロボコンがみんなに愛されてほしい。

文系による高専ロボコンへの愛をしばし語らせてほしい。


あ、ロボと言ってもメカニカルな話は一切でません。ってか出来ません。
(ちなみに知ってるロボコン用語で一番カッコいい言葉は、テオヤンセン機構。
動物みたいな動きの何かのことです。
ライオン君(2013大分高専)というお気に入りのロボで使われていたので頑張って覚えました。下のリンクの右にいる子。)


それと、よかったら高専ロボコンのテーマソングとして作られたこの曲を聴きながら読んでください。
歌詞がとってもいい!
泣ける、テンション上がる、なんか作りたくなる!
ロボコンにぴったりなのはもちろん、noteが書けない時にも励まされます。

一晩中考えて何のアイディアも浮かばず
ただ消しゴムのカスだけが机に残る
「そんな日だってあるよ、何も心配いらない」
誰かがきっとそんなふうに言うだろうけど
ひらめく 挑戦 失敗 苦笑い
思いつく 飛び上がる さあもう一度

https://www.youtube.com/watch?v=xICGsX-Xr4g


* * *

まず、高専ロボコンについて簡単にご説明。
なんとなく知ってるよーって人は飛ばしてもらって大丈夫です。

●高専ロボコンとはなんぞや?

正式名称は「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」。
 全国の高等専門学校57校62キャンパスから124チームが地区大会に参加し、そこで選ばれた25チームが全国大会に進みます。

全国の高専生が全国大会を目指すので「理系の甲子園」なんて言われ方もあり。

ちなみに全国大会は両国国技館で行われる。
相撲をするところで、最先端のロボたちが戦います。
しかも国技館の天井付近には、歴代の力士の写真がぐるーっと飾られており、ロボたちを見守ってくれてます。
ちょっとシュールで好き。
桟敷き席は自由度高いけど、案外お尻が痛くなるので座布団おすすめ。

●高専とはなんぞや?

高専は中学卒業程度を入学資格とし、5年間の課程で専門教育を行い実践的技術者を養成する教育機関。

各県に基本一つずつある高専。(なので県名を聞くと、私はその県の高専のことを連想する)
かなり優秀な子しか入れないらしい。
ロボコンやりたいから高専入る子も結構いるみたい。

そこでロボコンに青春を捧げる学生を「ロボコニスト」と呼ぶ。
嗚呼、美しい響き「ロボコニスト」! 
……生まれ変わったらなってみたい…

ちなみに男子率はかなり高い。

地味でモテなさそうとか言っちゃダメ!
日本の未来を背負って立つ超かっこいいエンジニアですぞ!
(ってか、真面目で賢いけど地味で、明るい青春とはちょっと縁遠い感じがなんとも好きです。仲間内ですっごくマイナーに盛り上がっている、実はそれこそが青春な感じ。)


彼女は二次元って方は多そうだったけど…
(ロボコン垢のTwitterでそういう画像がじゃんじゃん流れてきてビビりました…)

そして女の子もいるよ。
女子チームとか女子リーダーはNHKさん注目しがち(主催、放映はNHK)


●高専ロボコンのおもしろポイント① 毎回違う競技

毎年異なる競技課題に対し、アイデアを駆使してロボットを製作し、競技を通じてその成果を競う。発想力と独創力を合言葉に毎年開催され、2019年で32年目を迎えます。

で、毎回異なるルールで競技が行われることも大きなポイント。

ある年は蕎麦の出前、ある年はボトルフリップ、ある年は洗濯物干し、と全然違うことに挑戦する。(どれも本当にあった競技ですよ)

その年ごとに、競技内容に合った新しいアイディアで新しいロボットを作り上げなくてはいけない。

全然違う競技なので、前年強かった高専が今年も強いとは限らない。
もちろん技術の蓄積や設備やチームワークやらあるので、強豪校と言われるとこはある。

でもアイデアひとつで、全てを覆すことも可能というワクワク感。

●高専ロボコンのおもしろポイント②  優勝より栄誉ある「ロボコン大賞」

「ロボコン大賞」は勝敗に関係なく、アイデア・技術・デザインなどいろんな面で優秀なロボットに贈られる賞で、最も栄誉ある賞である。

このロボコン大賞を得るため、ユニークなアイデアや遊び心のあるロボットが生まれる。

なわとびをする競技で何故か宙返りする機能がついてるとか(福島高専)
二足歩行にこだわっちゃったとか(都城高専)

君たち!力のいれどころが違うだろ〜!というのがすっごく可愛くて応援したくなる。
(都城高専はその筆頭で、チームのモットーが「面白い・派手・無茶」。
可愛くて面白いロボで、会場中が一体になって応援してしまう。毎年とっても楽しみなチーム。)

とにかく、優勝狙いの効率重視のロボばかりではない、というのが高専ロボコンの魅力のひとつ。

「勝ったロボットには力がある、負けたロボットには夢がある」
と高専ロボコン産みの親の森政弘氏はおっしゃってます。
いろんなロボを思い出すと、これだけで泣ける…。

* * *

次に私がハマった2012年の競技「ベストペット」について説明。

ただ、全国大会のTV放映を一度観たきりなので、togetterやブログなどで調べはしましたが、記憶に間違いがあったら申し訳ありません。


(高専ロボコンは過去の映像がオンデマンドなどになっておらず、基本見られないのがほんとに悲しい。DVD BOXを発売してくれたら言い値で買うんだけどなぁ。)

【2012年の大雑把なルール】
相手チームがボールをフィールドに散らばらせる。チームメンバーがロボを誘導してボールを渡す。ロボはそれを受け取る際、喜びの表現をする。
ロボがそれを9つの穴に投げ入れ、得点を競う。

詳しいルールが知りたい方は公式のこちらを見てくださいませ。


この年の課題のポイントは、2つ。

ペットとしてのロボットを作ること。ボールを受け取ったら喜びを表現すること

→そのためどの高専も生き物感のある可愛いロボを作成。
メカメカしくなくて感情移入しやすい!
更に喜びの表現が可愛い!光ったり、くるくる回ったり、声を出したり。
勝敗とは関係ないけど、応援したくなる。 

ちなみに優勝したのは椀子兄弟(一関高専)という名のわんこ蕎麦のゆるキャラでした。…ん、ペット?


コントローラーを使わずに、人間とロボットが協力して玉入れをすること

→赤外線を利用したり、画像認識させたり、犬笛を使ってみたり。
一方的に人間が操るのではなく、お互いがコミュニケーションをとっている感じになるのがよい。

ロボコン大賞、ベストペット賞をとったイルカのフレンドルフィン(小山高専)は、飼育員の動きを認識してイルカのショーのようであった。実際水族館に通って研究したそう。
(小山高専はロボ愛が強く、クリスマスに過去のロボットたちにサンタ帽をかぶせたり、ロボのbotを作ったりしていて最高)

この年は、人間も体を使って競技に関わるのが面白い。
焦ってしくじったり、賢いプレーがあったり番狂わせのドラマがある。

(余談だが2014年は障害物走的なそばの出前競技だった。
エール(鈴鹿高専)というロボは完全自動制御で、スタートボタンを押すだけであとはやることなし。
そこでメンバーが本当にそば打ちをするというおふざけをしていた。よゆー!)

* * *

さて、ここまでいろいろ説明し、やっと本題にはいります。


私を高専ロボコン沼にはめた「エンペラー」というロボについて。

正式名称は「Emperor」
皇帝ペンギンがモデル。
2012年鈴鹿高専の3年生磯村英和さんがプログラミングを手がけたロボットで、地区大会優勝、全国大会ベスト4という好成績。

その後、磯村さんは日本ロボット学会で、「エンペラー」の画像認識や自動追従について講演し、優秀講演特別賞を受賞。

一般的にロボコンは4年生が中心となって活動している。(3年までは下積み、5年生は進路で忙しい感じ)
磯村さんは3年生なのに活躍している。
また全国大会で二回戦始まる直前にソフトをいじり2秒記録を縮めた。
他の高専生もその才能に敬意を表していた。


公式ではないのでアングルが悪いですが、よかったら観てもらえるとイメージつきやすいです。
右下のレインボーな手のペンギンがエンペラーですよ。はぁかわいい。

エンペラーは光ったり、腕をパタパタさせたり、おしゃべりしたり愛嬌バツグン。

特に声が可愛くて(初音ミクを使っているらしい)、
ボールをシュートする時には「エンペラー、いっきまーす!」と元気に宣言。

でも外見だけなら、他にも可愛い子はいっぱいいます。


エンペラーが特別なのは、オッカリンへの愛!

オッカリン?
そんなロボ用語あったけ?やばい、知らない…
と焦ったあなた、安心してください!
知らなくて当然です。


オッカリンは、エンペラーと一緒に競技をする「岡くん」のことです。

緑のつなぎを着た岡くんのことを、エンペラーはひたすらに慕い、ついていきます。
「オッカリン、オッカリン、おっかりーん!」と機嫌よく呼びます。

(え、緑色を認識し、追尾する機能?
いやいや、なんとつまらないことをおっしゃる。) 

純粋に心の目で見るのです…。
オッカリンと玉入れをするのが楽しくて仕方ないエンペラー!
ほめてほしくて頑張っちゃうエンペラー!


そしてなんとか勝ち進み、準決勝。
エンペラーが本当のペットになる決定的なことが起こります。

オッカリンが焦って、エンペラーが認識出来ない端っこに行ってしまったのです。

するとエンペラーは
「どこ〜? おっかりん、どこ〜?」
と心細い声をあげ、あたりを見回します。

それはもう大好きな人とはぐれた迷子にしか見えない。
健気でかわいい…。

ペットとは誰にでも愛想を振りまくものではなく、飼い主にだけ特別な愛を向けるもの。

その点において、エンペラーは唯一無二のペットでした。


それからずっと、私はオッカリンになりたくて仕方なかった

私もあの子に慕われたい。
追いかけられたい。
名前を呼ばれたい。

緑のつなぎを着たら、エンペラーは追ってくれるのかもしれない。
でもその瞬間、エンペラーはオッカリンを判別できないただのロボットに成り下がってしまう…。
エンペラーはオッカリンを追ってこそのエンペラーなのに…と勝手に苦悩した。

ちなみにそういうイベントがあったみたいです…。やっぱうらやまし…。


そして翌年。
鈴鹿高専のメルシーという(狂)犬のロボが、やっぱりオッカリンを健気に追いかけていた。

そして折り返し地点で
「あと半分!オッカリン頑張って!」
とオッカリンを励ましてすらいた!!
 ああ、オッカリン、うらやましい…

* * *

ここまで読んでくださった方、長々とお付き合いありがとうございました。

前半はやたら説明ばかりで、最後に盲目的に可愛さを語り、しかも実際の試合は現在観られないのかい!っていう謎のnoteでどうもすみません。

せめて最後に有益な情報を。
この本、とってもおすすめです!
ロボット開発についてなのに、ケア福祉のカテゴリー。引き算のロボットの発想が面白いです。

ゴミを自分で拾えないゴミ捨てロボや、
「む〜」しか言えないおしゃべりロボ。
他力本願で、弱さがあるからこそ人とつながれるという発想に感動しました。

迷子のエンペラーを見て湧き上がった感情も、これを読んで納得。
完璧に完成されたものよりも、手を貸してあげなきゃと思えるものに愛が湧くのだと。


* * *

そしてそして、実はもう一匹、語りたいペンギンロボがいます。
「近畿の呪い」で「国技館の魔物」に捕まった「青い悪魔」ことじゃんぺんさんです。(ロボコニスト用語を使ってみた)

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サンリオ顔負けの可愛い見た目と凄まじい能力。奈良高専両チームの愛を一身に受けて快進撃を繰り広げるものの、悲劇の結末に。
好きすぎて粘土で作ってしまいました。

語るとまた長くなりそうなので、別noteでいつか書こうと思います。

* * *

おまけ。

この1分半の動画を観てもらえば、このnoteの想いが全部濃縮されて伝わるかも…

「世界をまったく救わないロボットを作る」


そして今年2020年のロボコンはコロナの影響でオンライン開催となりました。
開催していただけるだけでとってもありがたい。
でも例年とは全く異なるので、高専生たちの苦労や無念を思うと少し苦しいです。

それでもきっと、彼らのアイデアとそれを実現する力で、みんなを幸せにするロボを作ってくれると思います。
今年も精いっぱい応援したいです。

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