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運動会
10月某日 晴れ
土曜日。
買い物に出かけたら近くの幼稚園が賑やかで、しばらく立ち止まって眺めているとどうやら運動会をしているようだった。
運動会は昔からずっと苦手だ。
生まれてこのかた徒競走で3位以上になったことがない。
だからずっと運動会は前日から憂鬱で仕方ない子どもだった。
そういえば保育園児だった頃、運動会の駆けっこでコースの途中なのに突然立ち止まってしまったことがあったらしい。
どうした、走れ走れ!の声を背に受けながらも足踏みしながらその場を一向に動かず、いったい何をしたかというと最後尾を走る子が自分に追いつくのを待って、やっとその子の手を取って走り出し、一緒にゴールしたらしい。
当時のことはすっかり記憶にないけれど、その話を初めて聞いた時はあまりにも天使すぎて目頭が熱くなったし、幼い自分が愛しくて抱き潰したい衝動に駆られた。
何というピュア。
幼稚園での運動会の様子を遠巻きに眺めながら久々に懐かしい自分のピュアエピソードを思い出していた。
あの頃の天使は、今も自分の中のどこかにいるのだろうか。
大音量で流れるウィリアムテル序曲や保育士のアナウンスに紛れて、園児たちの元気な歓声がいつまでも響いていた。
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