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「不便益」という有益なキーワード

 「不便益」という言葉は、不・便益(便益の否定)ではなく、「不便さがもたらす益」を現した造語だそうです。
 なかなか便利にならない世の中を残念に感じることが多くなっていたのですが、「不便益」という発想の視点を得ることで、ちょっとだけ前向きになれた気がしたので紹介したいと思います。

不便益との出会い

 毎週録画しているテレビに「ホンマでっか!?TV」という番組があります。様々な分野で活躍されている先生方を招いて「ホンマでっか?」な話題で盛り上がるトークバラエティです。
 4月下旬の放送を視聴していた時に、レギュラー出演教授以外の一風変わった教授を探して連れてくるというコーナーがあり、そのコーナーで京都大学の川上教授という方の研究対象として紹介されたのが「不便益」でした。
 「不便益」を利用した例として最初に紹介された、「通れば通るほど道が見えなくなるカーナビ」に惹きつけられました。
 というのも、自分自身、カーナビやGoogleマップで道に迷うことがなくなり、便利になったと思う反面、紙の地図を広げていた頃に比べて、道を覚えれなくなったし、街並みを見渡すゆとりが少なくなったことにモヤモヤがあったからです。

 通れば、通るほど、通った道が薄くなって、最後には表示されなくなるナビゲーション。いっけん不便に感じるかもしれませんが、ナビに頼らず地図を頭に入れたい、下ばかり見てないで周囲の景観を楽しみたいという思いがあった私には有益な機能だと感じられました。
 番組の中では、素数のメモリしか表示されていないがために、毎回足し算引き算をしながらでないと計測ができない「素数物差し」や、ロックを掛けた時と全く同じ動作をしないと解除できない「ジェスチャー入力スマホ」などのユニークな商品が紹介されていました。

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なぜ気になったのか

 紹介されたナビが自分のニーズにマッチしたということもありますが、不便益という発想から生まれた商品をとおして、「不便さの中にも有益なことがあるという事を改めて気づかされた」ことが印象に残りました。
 職業柄、便利=有益という思考が凝り固まってしまっていたので、より新鮮に感じたのかもしれません。システム開発では、自動化・効率化が重視され、不要な物はバグの元になるので排除し、ロジカルであることが尊重される傾向にあります。
 普段の生活でも面倒くさがりな性格が関係してか、ディジタル化が進展し、世の中がもっと便利になれば良いと思う反面、ペーパーレス、ハンコレス、キャッシュレス、タッチレス、ジェスチャーレス、コードレスetc.のレスレスレス……という表現からか、何かが失われていくのではないかという漠然とした侘しさを感じることがあります。
 また、ディジタル化への期待が大きい反面、なかなか進展しない社会変革を残念に思うことが多くなっていました。
 そんなネガティブな思考に陥ってしまいがちだったところに、「不便益」という言葉が登場し、今までと異なる発想の視点を与えてくれそうな期待が持てました。

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発想のポイント

 番組の中で「デブであっても、肉好きにモテることがある。というのは不便益?」という発言に対し、川上教授が「不便でも益を得ることもある」といった消極的な発想ではなく、「不便だからこそ得られる益」を考えることが大事だという旨の話をされていいました。
 私は、不便さをポジティブな姿勢で見直すことの大事さを教えられた気がして、「中小企業だからこそ!」、「中小企業ならではの!」、「家から出られない状況だからこそ!」といった「不利な状況を逆手に取る逆転の発想」に通じるものがあるとも感じました。
 多少不便に感じることがあっても、悲観せず、ポジティブな発想の転換ができるように思考を訓練していきたいものです。

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最後に

 「便益」という表現自体も診断士試験の中で、たまに出てくるものの、日常会話ではなかなか遭遇しない表現です。それに輪をかけて日常会話では聞くことが無さそうな「不便益」という言葉ですが、不便に感じることがあっても、新しいアイディアを生み出すきっかけにすれば良いんだ!というポジティブな気持ちになれる良い出会いだったので、紹介させていただきました。
 効率的で便利なだけでなく、皆にとって本当に益のある、明るくて楽しい豊かな未来に期待したいと思います。

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