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器用な彼。何の取り柄もない僕。そんな僕に舞い降りた奇跡。 Vol.78

「器用だね」
「何でもできるね」
彼は多くの人からそう言われる。

学校の成績は中の上ぐらい。

サッカー部ではレギュラー。ポジションはフォワード。ここぞという時でもあわてず点を取れる。たまにはミスをするけど。

絵を描けば学校の目立つところに、時々貼り出されるぐらいに上手い。

目立つキャラじゃないけど、友だちと楽しそうにしている。基本は笑顔。

同性にも異性にもまあまあに好かれる。

彼に対して「アイツ嫌い」っていう人 見たことない。


傍から見ていてうらやましい。

何でもさらっとこなす。そつがない。
努力しているそぶりはまったく見えない。

僕は「努力する」「努力しなければ」と思っているし、先生や親からも「がんばれ」「やればできる」と言われてきた。
「努力に勝る天才なし」と…

でも自分で
「努力しています」「頑張っています」
と思っている時点で限界はすぐそこにある。
天井はすぐそこだ。

「勝ち負けじゃないだろ」
「結果じゃなくて過程が大切だ」

そうかもしれない。


でも人と比べてしまう。
褒められれば嬉しい。
けなされればムカッとする。

平凡な僕は理想を追うことすらダメなの?


そんなある日の帰り道。
彼は言った。

「俺じゃないといけないわけじゃないよ」
「そう?」
「俺の代わりなんてたくさんいるよ」
「いや、そんなこと…」

「山田いるじゃん」
「ああ野球部の山田?」
「そう、なんか偉そうで嫌なヤツだけど、野球部にとってアイツは必要な存在じゃね?」

「ああ…。実際うちの学校でピッチャーと呼べるのあいつだけだもんね」

「俺はサッカーでレギュラーだけど、別に俺と変わらないぐらいのレベルは控えにもいるし」

「うーん…そうだけど…」
「でも、それこそ僕の代わりのほうがいくらでもいるよ。 スポーツも勉強も大したことないし…」

「イヤイヤ3組の池内なんてお前のこと気になるって……あっ、、、しまった…聞かなかったことにしてくれ。。。」


「えっ?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


「池内って…あの地味メガネの池内さん?」
「そう地味メガネの池内…」

地味メガネの池内さん。ごく一部の男子界隈ではメガネを取ると「永野芽郁」になることが知られていて、そんなに喋ったことはないけど、やわらかな雰囲気で内面の評判も高い。

その彼女が♡♡♡

人生捨てたもんじゃない。
僕も誰かに必要とされているのかも…?

そう、地球は、世界は、広い。

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