空のスイマー|詩
窓の向こうの夏空を
縞々に横切る電線の間を
プールで泳ぐ競泳選手みたいに
飛行機がすーっと泳いで行く
窓の向こうの第三コースを
左から右へ音もなく
真っ白なスイマーは泳いで行く
滑るように進む小さな姿は
ミニチュアのようで
夏の幻のようで
瞬きも忘れて
呼吸も忘れて
ふと気づくと後から
低く重たい轟音がやってきて
白いスイマーは現実の気配をまとうと
もうそこには飛行機が一機飛んでいるだけ
息を吐き
瞬きをしたが最後
空のスイマーは魔法のように掻き消えて
もう二度と戻ってはこなかった
2021/4/27
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