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前立腺がん治療の実況中継#02 生体検査

生体検査

さて、紹介状を持ってT病院へ。新しい主治医のM先生は、たぶん頭の回転の早い人で、先生の頭の中ではそれぞれの項目が結びついているのでしょうが、予備知識のない私にはM先生の頭の中にある事柄を順不同にマシンガンのように浴びせられているような感覚で、なかなか理解が追い付きません。「生体検査のついでに、精巣も摘出してしまうこともできますが、どうしますか?」とか「骨に転移がないか検査しなければならないんだけど、ここの病院ではできないんですよね。E病院でやってもらうんですが、予約を取らなければならないので、いつがいいですか?」なんて矢継ぎ早に聞かれてもなかなか判断できません。いずれにしても、私が前立腺がんであることが前提で話が進んで行っているようです。とりあえず、1泊2日の生体検査の日程だけはその場で決めました。

その後、血液検査、胸部X線検査、造影剤を使用したCT検査などをしました。何とMRI検査は遅い時間になったためやらないとのこと。検査があるから早く来いと言われたから早い時間に予約して行ったのに、結局2時間以上も待たされた揚げ句に時間切れでMRI検査はなし。

さて、前立腺生体検査とは睾丸と肛門との間から針を刺して前立腺の組織を採取するという、局所麻酔で行う1泊2日の検査です(別のやり方もあるようですね)。世界で一番痛みに弱い男と言われている私には何とも恐ろしい検査ですが背に腹は替えられません。俎板の上の鯉、言われるがまま。9時30分に入院受付をして12時から検査ということでした。記憶が定かではないのですが、検査の前に点滴をしたような気がします。手術室に向かう前に紙おむつに履き替えておくように指示されました。大人になってからの私の紙おむつデビューでした。

さて、歩いて手術室に向かい、入口で靴をサンダルに履き替え、白い帽子のようなものをかぶりました(よく食品を扱う工場でかぶっているようなやつです)。それから手術台に座って、いわゆる体育座りの状態で背中を丸めるように指示されました。その状態で背骨に麻酔注射を打ちます(仙骨麻酔というのでしょうか)。かなり痛いのだろうと覚悟していたのですが、思っていたほどの痛みではありませんでした。間もなく麻酔が効き始めてきて、M先生なのか看護師さんなのか、私の足を所定のポジションに固定して、検査が始まりました。私はとても目が悪いのですが、検査の前に眼鏡をはずさなくてはならず、ほとんど視覚情報はありません。「大きい音がするけどびっくりしないでね」と言われ、おもちゃの鉄砲のようなパチンのいう音がしました。これが針を刺している音ですね。途中、「体にすっごく力が入ってるけど、痛い?」と聞かれましたが、痛みを感じていたわけではなく、ただひたすらに緊張していたのでした。数日前の説明では17本くらいなんて言っていたのですが、数えてみたところ10本針を刺したようです。検査が終わった後はストレッチャーに横たわったまま病室に戻りました。麻酔のせいで歩けませんからね。その間、M先生もずっと付き添ってくれたのですが、「この前の検査でPSAが200を超えていた。今後はホルモン療法か放射線か……」なんて言っていたのですが、こちらはそれどころではありません。それにしてもPSAが200超って……。

生体検査の時に尿道カテーテルが装着されていました。尿道から膀胱に管を通して、その管が点滴棒の下の方に吊された尿バッグにつながれています。膀胱に尿がたまると勝手に尿バッグに流れていきます。看護師さんが定期的に尿バッグのチェックに来ます。尿の量と血尿をチェックしているのでしょうね。「あ、きれいなおしっこですね。大丈夫そうですね」なんて声を掛けてくれます。経過良好のようです。夜中にも看護師さんがチェックに来ていました。明け方、ふたりの看護師さんの話し声で目が覚めました。「ボーセンすれば大丈夫だと思うんだけど……」なんて言っているようです。ボーセンってなんだ? ― 「これから膀胱洗浄をしますね」とひとりの看護師さん。どうやら「ボーセン」というのは「膀胱洗浄」のことのようです。ということで、膀胱洗浄というのをしてもらいました。その時には何が起こっているのかわからなかったのですが、おそらくかなり出血していたのでしょう。それで、膀胱にたまった血液を洗い流そうという話だったのでしょうね。

予定通り、午前6時に尿道カテーテルが抜かれました。「最初にトイレに行ったら、看護師におしっこを見せてくださいね」ということでした。しばらくしてトイレに行くと、鮮やかな赤いおしっこだったのですが、看護師さんは「血のかたまりもなくてきれいなおしっこですね」とのことでした。事前に血尿が出るという話は聞いていたので、そういうものなのかと思ったのでした。午前8時過ぎくらいにM先生とは別の先生が来て、「ボーセンしたのか……(と言って苦笑したように見えました)」とつぶやいた後、「大丈夫ですね。じゃ、退院ということで」と言って去って行きました。そして、午前10時頃には看護師さんに注意事項を説明してもらって退院しました。

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