『フィスト・ダンス』 第134回 「新1年坊よ、強くなれ」


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<マーボが踊る!?>

屋上にはコの字型にベンチが並べられている。コの字の上辺にマーボ、清正、隼人、和生かずおたくみ、下辺にトミー、晃一、裕介、一輝かずき、克己、その向かい合っている10人を見るように翔太が座っていた。
その前に丈次たち2年生、入学したばかりの1年生が縦2列に並んでいる。

「では、始めます。1年、前へ」

事前に教えられていたように、14人の1年生が翔太たちに向かい合う形に、横一列に並んだ。
3年生を前にして、緊張しているのが、ありありとうかがえた。

「うちの総番長は、この町の生学も入れて最強だかんな」
「ステゴロの天才だかんな」
「2年生で総番長で、生学をバッタバッタとぶっ飛ばしたんだぜ」

など、丈次ら2年生がかなり吹き込んだらしく、それが姿勢や表情に表れている。

「よし、番長から順に1人ずつ自己紹介しろ」

2年生の副番長の1人、長尾洋一が促した。
そうして、番長から1人ずつの自己紹介が始まった。番長は、笹谷大作ささやだいさく、副番長は2人で、中辻宏なかつじひろし八木義信やぎよしのぶだ。
笹谷と中辻は170センチ近い長身、八木は、それでも167か168くらいある。
笹谷だけは角刈りで、顔つきは、いかにも、きかなそうだ。
中辻はリーゼント、八木もリーゼントだが、2人とも伸びかけである。
まだ、制服は長ランではない。この日、翔太の承認を受けて、晴れて着られるのだ。

自己紹介が終わると、次は3年生の番だ。
マーボとトミーを除いた8人が、1人ずつ立ち上がって挨拶をする。
1年生の目は彼らの長ランを眩しそうに見ていた。
そうして、マーボとトミーの番が回ってきた。
2人とも、見るからに怖い顔つきをしている。

「俺が総副番の武田政士まさしだ。おまえらは、いい時に入ってきたぜ。史上最強の総番長が、ぎっちりと鍛えて、大中の長ランらしく強くしてくれる。いいか、根性入れて、ついてこいよ。ステゴロは、やる以上、絶対に負けんな。あと、困ったことがあったら、いつでも来い。どうとでもしてやるからな」

マーボが睨むと、その体の大きなこと以上に、顔が凶悪なので、1年生たちの顔が引きつっている。
マーボが真剣な表情で睨むと、見る人を石に変えてしまうゴルゴンそのものだ。
固まっている1年生に構わず、トミーが立ち上がった。

「総副番長の上杉斗弥仁とみひとだ。今、武田が言ったように、おまえらは史上最強の総番長の時に入ってきた。大中の伝統とは、何よりも強いってことだ。これから、しっかり鍛えてもらって強くなれ。厳しいけれど、石にかじりついてでもついてこい。一に根性、二に根性、三に根性だ。男になれ。困ったことがあれば、いつでも来い。いいな」

1年生たちは、元気良く、はいっ、と応じた。
こうして翔太の目から見ても、マーボ、トミーの長ラン姿は迫力がある。他校の連中が避けるのも、よくわかる。3年生として、強者として、風格もあった。大中の3年生は、みな、自信の塊だった。

「それでは、総番長、お願いします」

長尾が言うと、2年生の空気も、ぴーんと張り詰めた。
翔太は、もったいをつけずに立ち上がる。

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