『フィスト・ダンス』 第111回 「心弱き者は去れ!」

<お知らせ>

祝日の関係で、今週は、(月)天晴!な日本人、(火)フィスト・ダンス、(水)美達さんからの返信、となります。


<本当に強くなりたい者の心がまえ>

彼らでなくても、42万5700円は大金だ。だが、大金以上に喜べることは、自分の腕で得たという、一種の達成感だった。
日頃の苦しい鍛錬に価値が付いたということでもあり、それは、我こそは強いのだという心に拍車をかけて、次のレベルへ向かう動機となった。

「たしかにでかいよな、この金は」

純一と42万5700円ずつ分ける本堂も笑みを浮かべた。

「生学と学中だから、一方的に張る奴が出て、この額になる。そこで予想を裏切って翔たちが勝つからな。翔が小さいのも、有利に働いてるんだぜ」

純一の言う通りだった。

今日の10人の中で、翔太は一際ひときわ、小柄だ。次に小さいのは清正だが、それでも伸びていて、この時には166か167センチにはなっていた。

このまま、自分は小さいままなのだろうか、もし、そうならば、それも致し方ないことで、筋力をつけることと、スピードを上げること、そうして、技術を錬磨し続けるしかない。
尚泰のことを鑑れば、大柄でなくても強い存在でいられるのだ、と翔太は己を鼓舞した。

精神の強さは鍛える必要もなく、小学生の頃から鋼鉄だった。
精神の強さが、日常の鍛錬を他者ができないくらいのレベルにでき、それが実戦の強さにつながっている。

強くなるのは簡単だ。
他者ができない領域のトレーニングをすればいいだけだ。
そのトレーニングでさえ、めげるようなら全く見込みはない。
普段の生活からして、己を甘やかさず、厳しくすることが不可欠だった。

幸い、大中の四つボタンに、そんな甘ったれ、弱虫はいなかった。
真に、きかない奴を選んだからだが、誰もが弱音をくことなく、こらえて鍛えてきた。

「これで、ガタイがあったら、どんだけつええんだ、翔は」
「全くだ」

今泉と石原が嘆息した。

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