『フィスト・ダンス』 第156回 「サムライ精神って、なんだ!?」

<継続に意義あり>

「俺もあれから考えたけどよ、やっぱ、翔太の言う通りだぜ。俺たちはサムライだもんな、サムライ」

「おお、そうだ、サムライ」

トミーが言うと、マーボも応じている。

「んだ、んだ。俺も今はわかったよ。菊山君が正しい」

清正も肉まんを頬張りながら言った。
マーボの部屋にトミーと清正がいて、そこに翔太が合流した。
清正はマーボとトミーの緩衝役が務まるようになっていた。

「そうだ。俺たちは圧倒的に強くなければならないから、いつでも堂々と勝負する。それが武士道、サムライの精神だろ」

「おお、武士道、サムライな」

マーボは、わかってるぜ、とばかりニンマリした。

「武士ってのは、いざ斬り合うとなれば命のやりとりだ。自分が劣勢になってから、ああだ、こうだ言う奴は恥さらしだろ。それだけに刀を抜く時は斬られたら自分が弱かったんだと納得して死ぬしかないよな。それに比べたら俺たちのやってることは遊びみたいなもんだろ」

「んだ、菊山君の言う通りだ。どんなに多い人数を相手にしても、死ぬことまではないだろうからさ。ああ、遊びだな、やっぱ」

清正は一人で、うん、うん、と首を縦に振っている。

「で、丈次と大作は、しっかり納得したのか?」

トミーだ。

「ああ、ちゃんと納得してた。来年の春からは奴らが全ての物事を考えて決めなきゃならないから、今のうちにしっかり原則を叩きこんでおかなきゃな」

翔太の言葉に一同は大きくうなずいた。当時こそ、さほど気にしなかった、いや、あまりにもあたりまえすぎて気付かなかったが、少年時代の浸透力、影響力というのは凄まじい。
2期上の瀧川との出会いによって『葉隠はがくれ』を知り、それを契機に武士、剣豪の修行や生き方にどっぷりとひたることになった翔太だったが、その周囲にいる面々にも、その影響が身体と精神に深く及んでいた。
昭和も約50年が経とうとしている時代に、十代前半の少年たちが、『葉隠』だの、武士道、武士、サムライだのと言って、その生き方に敬服し、自らも模倣しようと生きているのである。
時代錯誤さくご、アナクロニズムと笑われても致し方ないところだが、本人たちは真剣だ。

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