『フィスト・ダンス』 第120回 「師走のデビュー戦!」


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<お知らせ>

今回は郵便事情で一部しかコメントが届かず、1月18日07:48から同日10:58迄のコメントへの回答しかありません。
次週、他のコメントへの回答を出します。
すみませんが、楽しみに待っていて下さい!!

<本文>

<人生で初めての殴り合い>

外には雪がちらちらと舞う師走に入った。
翔太たち一行は、地下街のいつもの場所にいた。
翔太、マーボ、トミー、清正、晃一、たくみは長ランメンバーだが、その日は真吾しんごとシューブンも加わっている。

「へへへ、真吾、シューブン、デビュー戦、しっかりやれよ。大丈夫だ、今のおめえらなら、その辺の奴らなら負けはしねえ」

「楽勝だな。な、翔太」

マーボ、トミーが翔太に同意を求めたが、その通りだ。

「真吾もシューブンも初めてだから怖さもあるだろうけど、やり合ったら、まず負けることはない。その点は心配するな、これまでやってきたんだからな」

翔太に言われた2人は「うん」とうなずいているが、その顔には不安が貼り付いている。

「やっぱ、怖いな。それにさ、何の恨みもない相手だし」

「いや、真吾、そいつは大丈夫。向き合ったら相手がちゃんと怒らしてくれるからな」

「んだんだ、それは保証するぜ。だから黙ってがん飛ばせばいいんだ」

清正と巧が笑みを浮かべてけ合った。

真吾とシューブンの二人は長ランでもなく、髪型もリーゼントではない。ごく普通の2年生で、特に大柄でもない。
ツッパリ少年からすれば、その他、大勢の「シャミ」である。
シャミというのは「大したことない奴」という語で、語源は三味線から来ていた。
「三味線をく」とは、世辞を言う、へつらう、自らを卑下ひげする、実力がないかのように装う、などの意味だ。
「おまえ、シャミか」とはかなりの侮辱である。

「晃一、巧、ついていってやれ。そうだな、こっちは4人だから6人以上の奴らでいいだろ。先に片付けて、真吾とシューブンを援護しろ」

翔太の指示に、晃一と巧はこともなげにうなずき、ニヤリとした。
今の大中の面々にとって、負けるということは眼中になく、「何人を何秒で片付けるか」の領域になっている。

「真吾、シューブン、俺たちもいるし、晃一と巧がついてるから、自分のことだけ考え、いつもの練習の通りにやれ。慣れないうちはあせるけど、それでもいい。やってるうちに落ち着くこともあるしな」

真吾とシューブンは、翔太の言葉を神妙な顔つきで聞いているが、目には不安、動揺が見えている。

「ううう、なんかシコ入ってる」
「僕もだ。けど、頑張るぞ」

真吾とシューブンは互いに見合って、励ますようにうなずいた。

「よし、あれはどうだ?良さそうじゃん」

マーボの声で、通りの向こうを見ると、しっかり長ランをなびかせたリーゼントの8人組が、これみよがしに周囲にがんを飛ばしながらやって来た。中学生だが3年生という雰囲気だ。

「よしよし、なかなかいいぞ。ちゃんと意気がってやがらあ。さ、行ってらっしゃい、だ」

清正に促され、晃一を先頭に真吾とシューブンがついて行った。
相手の8人組は、晃一らが長ラン2人と普通の子が2人なので、すっかりなめきっている。

「晃一と巧で3人ずつの6人を片付けて、あとはタイマンだな」
「そんなとこだ」

マーボと清正がニンマリした。

二言三言、言葉を交わした後、相手の人数が多いこと、今日は真吾とシューブンの援護のため、晃一と巧の方から手を出した。
両人共、ほぼ拳1発で瞬く間に4人を料理すると、早くも残りの相手はシコが入って向かってこない。
初めから真吾とシューブンと対峙している2人も、その言葉の勢いとは別に劣勢だ。
真吾は相手に1発殴られて、おっ、という顔つきになった後、エンジンがかかったように拳を繰り出し始めた。
そのフォームは教わった通りのもので、きれいな型になっている。

「おっ、なかなか、さまになってんじゃん」
「ちゃんといつものようにパンチを打ってるぞ、ハハハ」

マーボと清正が言うと、トミーも「やれば、できんじゃん」と笑っている。

真吾もシューブンも勢いづいて、一方的に殴る様相となり、相手はをあげたようで、晃一に凄まれて、全員で頭を下げていた。
晃一と巧の強さは連中とは別次元だが、真吾とシューブンも悪くない。
きっちりと型になっているし、なかなか腰の入ったいいパンチを当てていた。
相手にすれば、真吾とシューブンの強さは信じられない思いであっただろう。どこからどう見ても強いとは見えない2人だったからである。
真吾とシューブン、行く時とは別人のような足取りで、意気揚々ようようと戻ってきた。

「やったじゃん、おめえら。なっ、楽勝だったろう」

マーボに言われて、2人は満面に笑みを浮かべた。

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