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『天晴!な日本人』 第81回 「忠義に殉じた聖将、乃木希典のストイシズム」 (6)


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<慈父、聖将たる乃木>

戦場での乃木は、一兵卒と全く同じ生活をしました。
自室の暖房のオンドルは決して使わない代わりに、他の者の部屋では許し、食事も兵と同じ、胃を壊した際、副官がかゆを作っても断り、兵食だけを口にしています。厳寒の中、裏に毛皮のついた外套が届けられると、送り返せと言い、折角の厚意ですと副官が言うと病院に送って患者に使わせよと命じます。

毎日、大量の負傷者が出るので野戦病院に見舞いに行くと、起き上がれない兵士一人ひとりの口に、副官に持たせたバケツの中から砕いた氷片を兵らの口に入れてやるのです。
前述の桜井忠温も入れてもらった一人で、誰もが平生は対面すらできない大将という「雲上人」の慈愛に触れ、感激のあまり落涙したと桜井は語っていました。そうして、兵らは乃木のもとで死ぬことを名誉以上のものと思うに至ったとありますが、この乃木の司令官としての在り方、人としての在り方が、第三軍の兵士らに戦死を忌避することなく戦った大きな要因にもなったのです。

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