新生!西先輩 『フィスト・ダンス』 第140回 「ただ、鍛錬あるのみ」
サンドバッグを蹴るスピードは、なかなかのものだった。その日の菊山道場には、暁星に進学した西が来ていた。
「へえ、やっちゃん。スピードあるね。かなり練習したなあ」
「おっ、菊、わかる?そう。やってるぜ、兄貴にもうるさく言われてるしな」
西は柳家のポマードでなでつけたリーゼントを乱しながら、まんざらでもないという表情だ。
「空手をやってんだって、やっちゃん」
「おお、マーボ。極真だ、極真。兄貴の知り合いがいるんで通ってる。まだ、大したもんじゃねえけど、一通りの型はなんとかな。菊、ちょっと見してくれ、凄えやつを」
西に促されて翔太がサンドバックの傍に立つ。間髪入れず、左右10発ずつの回し蹴りを繰り出した。
「うおっ、凄え。重さも威力も全然違うな。菊、うちの道場に生学がいっぱいいるけど、みんな、菊以下だ。やっぱ菊は別格だな。こんなに違うもんなんだな。俺も、もっとビシビシやらなきゃな。おい、マーボ、トミーたちもやってみてくれ」
西は、自分はまだまだ、というように首を捻った。今日、やって来たのには、それなりの自信があってのことだろう。自分の方から連絡を入れてきて、見てくれ、というので来たのである。
マーボとトミーがサンドバッグを蹴り終えた。
「この2人の威力も凄えな。うちの道場の生学より上だ。よく、ここまでになったなあ。清正たちも似たようなもんか?」
清正、晃一が蹴りを出すと、西は、おお、と納得したような表情になった。
「おまえら、凄えわ。よく、ここまでになったもんだ。やっぱ自主トレだな。自主トレ」
西は、自主トレと繰り返している。中学時代のに西とは、えらい違いである。
「やっちゃん、ずいぶん熱心になったね」
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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