『フィスト・ダンス』 第141回 「高校制覇への道程」

<大中OBの天下>

「おお、やっち、久し振りだな。っても卒業してまだ3月みつき足らずだけど。しょっちゅう顔を出してたから、逆に久々に感じるんだな」

「先輩、御無沙汰してます」

『テオジニス』のカウンター席に腰を落ち着けた西は、天野にちょこんと頭を下げてから、ママの千波にも柔和な笑顔を見せた。

「やっぱり、高校生になると急に大人びちゃうよねえ、やっちゃんも。すっかり立派になっちゃって」

千波は西を見つめて、目尻を下げている。

「いや、大した変わらないですよ、俺は」

西は、そう言うが、リーゼントは前より磨きが入って、艶々している。

「どうだ、やっち。暁星の一員となった感想は?」

「ええ、生学せいがくの中じゃ1番だっていう重みがありますね。伝統というか、負けらんないっていうか」

翔太、マーボ、トミー、清正、晃一は、天野と西の会話に聞き入っている。

「暁星、泉南は不動か?」

「はい、先輩。この2つだけは動きません。他は、ちょっと動き出してますが」

「ほお、動いてるってか」

天野は面白そう、という表情になった。

「はい。3番手以降が変わってきました。もう東商とんしょうの時代じゃなくなりましたよ」

「東商は、やっぱりダメか」

「はい。すっかり落ち目で5番手以降になりました」

これまで暁星、泉南の次として、長く東商の名があったが、ここ2~3年で不安定化し、それが柴田の卒業を機に、とうとう没落となったのだ。

「で、どこが3番手だ?」

天野はカウンターの中で太い腕を組んだ。

「はい、単独の3番手ではなく、永野先輩のいる徳栄とくえい川津かわつのいる光和こうわ工業の争いです。どっちもどっちで、タイマンなら、この2人が生学で最強かもしれません」

永野、川津ともに翔太には負けているが、強者である。永野は大中OBでもあった。

「ふーん、徳栄と光和かあ。総力戦ならどっちだ?」

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