「花屋だけじゃない。フローリストという存在」 花、暮らし、私 vol.04
「お花を買いたい」「あの人に花を贈りたい」と思った時、皆さんどうされていますか?
きっと、多くの方が近所やお気に入りのお花屋さんに行かれるのではないでしょうか。
今日は、あまり知られていない、店舗を持たない[フローリスト]という職業についてお話をしたいと思います。
そもそも、フローリストってあまり聞き覚えのない言葉かも知れません。
【Florist】 園芸愛好者 の意
英語で言うFloristは、一般的にはお花の仕事をしている人のことを指し、「花屋」自体を指す場合もあるようです。
日本ではフローリストというと、生花の販売をメインにしているようなイメージがやや強くあるのですが、同義語でフラワーデザイナーという言葉もあり、こちらは生花に限らず、花や植物でデザインをすることに特化した名称であると言えます。
基本的にはフローリスト(ここでは花の仕事に携わる人の意)もフラワーデザイナーであることから、どちらがどう、というような厳密な枠組みはないのですが、当人の活動の内容や考え方によりけりなのかな、と思います。
実はこの店舗を持たないフローリストって、意外とたくさんいるのです。かくいう私もその一人。店舗を持たず、依頼のある分だけ花を仕入れ、買われる方や贈る相手、シチュエーションによって一つ一つお花をデザインしてお届けしています。
花屋さんもとっても魅力的なのですが、店舗を持たず、フリーで活躍するフローリストにも、魅力的な人がたくさんいます!
今日はその中のお一人でもある、LE SAVOIR(ル サヴォワール)のSaoriさんにお話を伺ってきました!
LE SAVOIR
フラワー事業プロデューサー/フラワーデザイナー
Saori Sugiura
http://lesavoir-japon.com/
【Instagram】 https://www.instagram.com/lesavoir.japon/
店舗を持たないフリーのフラワーデザイナーであり、システムエンジニア。フランス・パリでの花修行後、愛知県のブーケバトルコンテストで準優勝。この結果を皮切りに、活け込みのパフォーマンスやイベントプロデュース、ブーケやアレンジメント制作の他、花と香りのオリジナル雑貨販売など、多岐に渡り活躍しています。現在は出産を経てフローリスト・システムエンジニア・妻・ママ業もこなす、パワーあふれる女性です。
実はSaoriさんとは、花市場で仲良くなり、フリー同士助けあいながら一緒に仕入れをしたりとする仲間でもあります(Saoriさんは大先輩です!)。
そんなSaoriさんに、お仕事のことを色々と教えていただきました。
――普段はフローリストとしてどんな活動をされているのですか?
Saori:オーダーメイドで個⼈のお客様の依頼を受けることもありますが、主に企業向けの花装飾やフラワーパフォーマンスをメインのお仕事としています。イベントのフラワー部門の責任者として、アトラクションのプロデュースをしたり、現場でパフォーマンスを行ったり。最近では愛知県庁舎の装飾など、県から受注したお仕事をする事もあります。一般のお客様へのサービスとしては、百貨店でオリジナルフラワーギフトのプロモーションや店頭販売、イベントを通じた花⽂化普及活動等を行っています。
※花のパフォーマンスでは、イベント会場で用意された花をその場で活け込みしたり、花束に仕立てたり。普段あまり見る事ができないですが、ライブ感がありとっても感動的なパフォーマンスです!
――県からの受託!官公庁のお仕事でも活躍されているのですね!フリーの立場でお花の仕事をするに至った経緯には、どんなストーリーがあるのでしょう?
Saori:パリでの花修行を終えて9年前に帰国した当時は、ちょうどFacebookが浸透しはじめて盛り上がりを見せていた頃。 私がアップするお花の投稿を見ていただいた方から、どんどんと依頼をいただくようになり、そのまま個人で花の仕事を始める流れになりました。ただ、自分が「お花屋さん」というスタイルで仕事を行うことはイメージしていませんでしたね。
――「お花屋さん」というスタイルをイメージされなかった、というのは何か理由があるのですか?
Saori:花の業界に入る前は、システム開発の仕事に携わってきました。この、システムのお仕事も本当に大好きで、人や企業の抱えている「どうにかしたい!」「わからない!」といった課題を、システムで解決できた時にとても喜びを感じます。ただ、当時はリーマンショックで暗いニュースも増え、世の中が大きく変わっていったころで…私自身も将来について何をしていきたいかと人生設計を考える中で、もっと直接的に人と関わり、人の笑顔に触れる仕事がしたいと考えるようになりました。もともと興味があったアロマやハーブ、ボディケア、そして花などを同時に学んできた中で、私にとって「花」というツールを使って人の笑顔を見るということが、最も好きだと感じたのです。
「花にはパワーがあり、花は人を幸せにする。」
この事実が、花と関わる中でだんだん確信に変わってきたんです。
今でも当時から変わらず、システムへの思い、花への思いがそれぞれあって、私にとっては両方とも大切な仕事であると感じています。人の問題を解決したり、笑顔を感じたり、その両方が実現できるのが、フリーランスという道だったんじゃないかと。私独自のスタイルを確立できる環境を選ぼうと思ったんですね。
――花の仕事=花屋、ではなく、自分自身が納得できるスタイルでお仕事を確立されてきたのはとっても素敵ですね!フランスでの花修行は私自身、検討していた時期もありました。パリでの生活で印象的だったことを教えてください。
Saori:フランスでは日本と違って、お店に入ってもどこに行っても必ず挨拶を交わします。まずは「こんにちは!」から始まり、とにかく人生を楽しんでいる。フランスでよく聞く言葉『C’est la vie(それも人生)』の精神なんです。細かいことは気にしない、起こってしまったことも楽しんでみる。人生を謳歌している人が多いなと感じます。一方で安全な日本とは違い、「自分の身は自分で守る」という間隔も痛感しました。異国に住むと、文化の違いに戸惑ったり、悔しい思いや苦労もたくさん経験します。だからこそ、とてもたくましくなるし、何よりも現地の人と現地の言葉で会話し生活することで、花の勉強だけでなく、その土地の文化や歴史などに直に触れることができます。バックグラウンドを通して、よりパリのフラワースタイルというのを自分の中に落とし込めた気がします。
そしてやっぱり、パリは花が身近で、生活に根付いているなと感じます。
――フローリストとして多くの経験をされてきたSaoriさんに、私たちがお花の依頼をすることはできるのでしょうか?
Saori:大々的に受注を受け付けているわけではないですが、お花の仕事は全て依頼をいただいた方やシチュエーションに合わせてオートクチュールでおつくりしています。まずは、私のつくるお花が、その方の趣向に合った本当に欲しいと思えるデザインであるかというのも大切ですので、ぜひ一度ホームページやインスタグラムを見ていただければ嬉しいです。一人ひとりに合わせて柔軟な対応ができたり、こだわりを持って花を選び、サービスの行き届いたモノをご提供できることが、店舗を持たずに活動をしているメリットだと思っています。
――LE SAVOIRの今後の活動について、こんなことをやっていきたい、という展望はありますか?
Saori:このコロナ禍で、廃棄になってしまう花が増えているのが社会問題としてクローズアップされています。花の力を信じる人間として、システムエンジニアとして、私に何かできることがないかと考えた時に、『廃棄花×システム』で何か貢献できないか?と動き始めているプロジェクトがあります。
その他にも、子どもたちに花に触れる楽しさや心を添えて花を贈り合うといった体験を通して、創造性や情操面の向上を図る『花贈りイベント』のオーガナイズや運営の取組みにも力を入れています。
詳しくは今後ホームページ等でお知らせしていくことになると思いますが、やりたいことはまだまだいっぱいありますね。
――最後に、花の魅力を教えてください!
Saori:これまで、花贈りや花の事業を通して感じてきたことがあります。それはシンプルなのですが、「花をもらうと嬉しい!」「花は人を幸せにする」ということです。
花って「ただ存在するだけ美しい」のですが、そこにフローリストの技術や情熱がプラスされることで、より花の魅力を伝えられると感じています。そしてそれは人の心を癒し、人と人の心をつなげることもできると思うんです。
――ありがとうございました!
和やかな雰囲気の取材でしたが、とても多くの経験や情熱を持って活動されていること、フローリストの使命をお聞きして、身が引き締まる想いでした。
私がデザインと花の仕事を両立しているように、システムと花の二本柱があるからこそ、彼女のような独自のスタイルが作られたのだなと感じました。
そして、前回の記事でお伝えした私の廃棄花の活動とはまた違う、彼女だからこそできる活動もとっても楽しみです。
Saoriさんのつくるお花はどれも女性らしい柔らかな雰囲気の中にも、彼女らしい色使いや花選びが随所に見られ、パリの洗練された空気をまとって凛としています。
アロマディフューザーの香りやボトルデザインにも彼女のこだわりが見えます。百貨店での店頭販売では、オリジナルアイテムもさることながら、彼女本人にも会えるかもしれません。今後もLE SAVOIR、そしてSaoriさんのご活躍に注目していきたいですね!