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東京の中心は山手線ではない

東京の地図を正しく理解しよう

地方から東京に出てきたらまず山手線の駅名を覚えるべしみたいな言説が世間には流布しています。
しかしながら私はこれは東京を正しく理解できないのではないかと思っています。

間違った東京の地図

例えば上の画像のように思っている方はいませんでしょうか。
某家電量販店のテレビCMも影響しているように思います。「まあるい緑の山手線があり」中央線と秋葉原と新宿でぶつかるという。
ではこの地図の何がいけないのでしょうか。

まずひとつ目に山手線は円ではないという問題があります。「品川から新宿を経由して田端に至るまでのC字状が山手線であって円ではない」ということではありません。
実際の山手線はもっと縦長の形をしています。池袋から品川は新宿から秋葉原よりもかなり遠い距離になっています。
次に山手線の中心は東京の中心とずれています。上の図は良くみると山手線が東京を通っていませんが実際には山手線は東京駅を通っています。東京駅は皇居(江戸城)の最寄りでありもちろん東京の中心地です。東京駅は山手線の東の端にありますので、山手線の中心は東京の中心から西へずれているということになります。

大江戸線を中心に考えると東京は理解しやすい

山手線は確かに東京、新宿、渋谷などと言った東京の中心的な役割を果たす重要な駅を通ています。しかし上記のような理由により山手線は東京の中心からずれています。
そこで私が提唱したいのは山手線と大江戸線の重なりで東京を理解する方法です。

山手線が疎かにしている東側を大江戸線がカバーしてくれる


江戸時代には江戸町奉行が管轄する地域は江戸市中と呼ばれており、明治時代に東京府が設立されると、江戸市中の領域がほぼ東京市になりました。
これこそが東京の歴史的な中心地になります。この旧東京15区をぐるりと回る路線がその名も「大江戸線」です。実際の大江戸線には都庁前から練馬の方までしっぽが生えていますが今回は無視して環状線だと思ってください。
大江戸線は新宿から上野、両国、築地、麻布など江戸時代にまさに江戸の中心だった町々をつないでいます。

駅名はやや簡略化しています

実際には牛込神楽坂、本郷三丁目、築地市場前、麻布十番などもっと複雑な駅名ですが簡略化しています。図では私が地理的に重要だと思う駅をピックアップしてみましたが、この駅名をみて「全然主要な駅じゃない」と思う方もおられるでしょうか。かなり歴史的には重要な地名をわざと駅名に入れている感じがします。
先ほど旧東京市の話を少し出しましたが、牛込区、本郷区、麻布区は旧東京15区を構成する区です。また両国は文字通り2つの国という意味で武蔵国(現東京+埼玉)と下総国(千葉北部)を結ぶ両国橋がありました。
築地は京橋付近の東側を埋め立てて作った土地で「築地」とは「埋立地」という意味です。
大門は芝増上寺の総門に由来しています。

正しい山手線図

大江戸線の地図を理解した上で正しい形の山手線をみてみましょう。

まあるくない緑の山手線

実際の山手線は細長い逆三角形をしています。頂点は池袋、上野、品川と考えると分かりやすいでしょう。大崎から新宿を通って田端までの部分は台地になっていて、このことから「山の手」と呼ばれています。本来の山手線は品川~田端間ですので、山の手を通っているから山手線 分かりやすいですね。決して「やまてせん」ではありません。
この山手線路線図と旧東京市の領域を重ねます。

旧東京市と山手線
東の側は荒川(+荒川放水路)、南の側は多摩川

山手線が全く東京の中心ではないことがご理解いただけると思います。

旧東京市と山手線

さらに旧東京市を構成する15区を書き込んでみます。

旧東京15区と山手線

大江戸線の駅と関係のある牛込、本郷、京橋、芝、麻布などがありますので位置関係が分かりやすいはずです。
麹町区、神田区(後の千代田区)、日本橋区、京橋区(後の中央区)、芝区、麻布区、赤坂区(後の港区)、四谷区、牛込区(後の新宿区)、小石川区、本郷区(後の文京区)、下谷区、浅草区(後の台東区)、本所区(後の墨田区)、深川区(後の江東区)がありました。
もう一つ外側の地名を書き加えていきます。

品川、荏原(えばら)、目黒、渋谷、淀橋、豊島、荒川、向島、城東

東京府は東京市+郡部からなっておりましたが次々と東京市に合併されていきました。荏原郡荏原町(後の荏原区→品川区)、荏原郡品川町(後の品川区)、荏原郡目黒町(後の目黒区)、豊多摩郡渋谷町(後の渋谷区)、豊多摩郡淀橋町(後の淀橋区→新宿区)、豊多摩郡内藤新宿町(後の四谷区→新宿区)、北豊島郡巣鴨町(後の豊島区)、北豊島郡日暮里町(後の荒川区)、南葛飾郡隅田町(後の向島区→墨田区)、南葛飾郡砂町(後の城東区→江東区)などがありました。
さらに外側にいきます。

現在は23区になった郡部外側

荏原郡大森町、荏原郡蒲田町、荏原郡世田ヶ谷町、豊多摩郡中野町、豊多摩郡杉並町、北豊島郡練馬町、北豊島郡板橋町、北豊島郡王子町、南足立郡千住町(後の足立区)、南葛飾郡本田町(後の葛飾区)、南葛飾郡小松川町(後の江戸川区)
荒川の対岸に足立、葛飾、江戸川、多摩川の対岸は神奈川です。

東京市とその周辺地名

このように東京を旧東京市と周辺郡部というふうに理解してゆくと江戸城を中心とした位置関係が理解しやすいと思います。やはり山手線は中心ではありませんね。
過去に書いた23区の覚え方を合わせて是非東京の地名を覚えてご活用ください。


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