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あの先生

学生時代、何人もの先生にお世話になった。

思えばいろんな先生がいた。
プライベートで他人を暴行し、警察沙汰になった先生。
演劇の道に進みたいと言い、教師を辞めた先生。
急に退職し、100回越えの無言電話を学校にかけた先生。(学校側から不当解雇された恨みだそう(噂))

学校の先生も人間。色んな人がいるは当たり前。
しかし、当時の私は怒っていた。

「先生が警察沙汰?ありえない。」
「普通、年度の途中に教師辞める?」
「無言電話とかキモくない?」
「30代?ってことは、私の倍以上生きてるよね?」
といった具合に。

思春期の多感な時期にいろんな大人が居ることを知れてよかったと思うし、私はつくづく、正義感溢れる学生だったなと思う。いい意味でも悪い意味でも。

でも他にもっと印象深いあの先生がいた。

高校の物理の先生で、担任だった。
30代半ばの男性教師。

物理の授業は明るくイキイキしているが、それ以外はなんだか【ただこなしているだけ感】が漂っていた。
必要最低限でしか生徒に話しかけないし、自分の話も聞かれた範囲のみ。先生特有の面白い話(?)もほとんど無かった。もちろん生徒の中で話題に上がることも無い。
私もほとんど会話をした記憶が無く、当時はその事にすら気付いていなかった。


そんな先生が卒業式の後の教室で号泣した。
最後のホームルームで。
泣きながら、ぽつりぽつりと話しはじめた。


『先生はね、前担任になったクラスで生徒と距離を詰めすぎてしまってね…。生徒を下の名前を呼んだり、プライベートな事を話題にしたり…。それが原因で生徒に嫌われてしまったんだ。
でも、君たちに会えてよかった。気軽に接してくれる君たちに救われたよ。』

先生は最後まで泣いていた。
1年間 固く閉ざしていた心の傷に触れた瞬間だった。
自分の倍以上生きている大人も、学生の様にもがいていた。

“気軽に接してくれる”
まるでクラスメイトの様な言い方をしたあの先生が、いま幸せでいることを願って。

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