緊急経済対策第三弾への提言      ~未曾有の国難から「命を守り、生活を守る」ために~

                         令和2年3月31日
                        自由民主党政務調査会

「命を守る」。
今まさに、新型コロナウイルスとの戦いは正念場を迎えている。
この戦いに勝利し、新型コロナウイルスから国民の命を守る。同時に、雇用・仕事を維持し、企業 ・事業者を守ることで、新型コロナウイルスに伴う経済危機 ・苦境から命を守る。
先ずは、新型コロナウイルス感染拡大防止に資源を集中投入する。同時に、国民の生活、企業の事業を守るため、「入るを増やし、出るを減らす」ことにより、家計や企業の手元流動性の確保にも全力をあげる。こうして、国民の生活、事業活動を全力で支えつつ、機を捉えて一気呵成に未来に向けて反転攻勢に転じていく。
わが党は、上記の強い覚悟の元、令和2年度当初予算審議中のタイミングではあったが、3月3日に決定した対策において「必要に応じて補正予算についても検討」と明記した上で、政府の緊急対応策2弾を受けた3月11日には政調正副会長・部会長会議を開催し、経済対策の検討に入った。
今回の新型コロナウイルスに伴う経済的影響は、「突然お客さんが来なくなった」、「予約が9割以上キャンセルになった」等の形で、地域・業種 ・規模を問わず、実体経済、地域経済の現場に直接に収入減をもたらしている。需要が突如喪失する現下の状況は、金融危機に端を発し影響がジワジワと実体経済に広がっていったリーマンショック時と比べても格段に厳しい。まさに未曾有の国難である。
また、リーマンショック時と異なり、世界に拡散した経済的影響に対応するための世界各国の政策余力が限られていることにも留意が必要である。
政府においては、昨年末、3年ぶりに大型の経済対策を策定し、その裏付けとなる令和元年度補正予算も既に成立しているが、更に新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済社会への深刻な影響を踏まえ、リーマンショック時の対応を上回る対策を新たに講ずるべきである。
対策の内容については、別添の各分野における提言を踏まえるとともに、以下の最重点事項10項目について、5つの基本的考え方とともに着実に取り組むよう求める。

Ⅰ.対策の5つの基本的考え方

①今般の国難ともいえる状況を踏まえ、最低限、リーマンショック時の経済危機対策を上回る「財政措置20兆円、事業規模60兆円 」、諸外国に遜色のないGDPの10%を越える対応を講じることとし、日々刻々と変化する内外の経済情勢を踏まえ、対策の規模について、財源にとらわれることなく更なる上積みを図ること。
②対策は、専門家会議の知見も踏まえた感染終息に向けた行程 ・道筋を念頭
に置きつつ、1年延期されたTOKYOオリンピック・パラリンピックの開催に向けて、感染拡大抑制期、反転攻勢期、中長期等とフェーズを分けて、各種施策を効果的に組み合わせて実施すること。
③その中で、消費税5%減税分 (国分)に相当する約10兆円を上回る給付措置を、現金給付・助成金支給を中心に、クーポン・ポイント発行等も組み合わせ、全体として実現すること。
④対策の内容について、国民目線にたった正確かつ分かりやすい情報発信 ・広報を迅速に行うこと。そのための十分な広報予算を確保し、関係省庁ごとに発信している情報の政府全体での集約、ウェブ上におけるワンストップ・プラットフォームの作成など、効果的な広報を徹底すること。併せて、日本に対する信頼を高めるための国際広報を充実させること。また、国民・事業者と国との信頼を損なうことのないよう、対策の内容が、確実に現場で実施されるよう徹底すること。
⑤リーマンショック時には、経済危機対策以前にも2回、計3回にわたり合計で総事業規模100兆円を超える経済対策を行っている。こうした例も参考に、TOKYO オリンピック・パラリンピックの延期、米国・欧州等の国際経済動向を含めた経済社会状況の変化を適切に踏まえ、必要に応じ更なる経済対策を講じること。

Ⅱ.対策の最重点10項目

<感染拡大抑制期>

1.最大の景気対策は、新型コロナウイルス感染症の終息である。引き続き感染拡大防止に全力をあげること。このため、
⚫︎ 治療薬 ・ワクチンの国内外での開発への対応、マスク、消毒薬等の衛生資材増産への対応に全力を期すこと。
⚫︎ PCR検査の効率的実施、簡易検査や抗体検査キットの開発、保険適用の自己負担分の公費負担などを通じて、必要な新型コロナウイルス検査が確実に受けられる体制を確保すること。
⚫︎ 呼吸器疾患の専門医 ・看護師等の確保、人工呼吸器 ・人工心肺等の医療機器整備、マスク・消毒薬 ・ガウン等の医療資材の確保など、有事におけるヒト・モノ両面からの医療提供体制の抜本的強化、新型コロナウイルスと戦う医療従事者への特殊勤務手当同様の重点的支援の拡充、オンライン診療・服薬指導の推進、TOKYOオリパラを念頭としたホテル等を活用した陽性無症状患者の隔離施設確保 (検疫における停留場所の確保を含む)など、有事における広範な医療対応について、地域の実情に応じた柔軟かつ機動的な対応を可能とするため、基金等の措置を講じること。
⚫︎ 新型コロナウイルス患者等の受け入れに伴う風評被害や受診抑制、宿泊客減少等により打撃を受ける医療機関、宿泊施設等への万全な支援を行うこと。
2.引き続き、企業 ・事業の存続、雇用の維持・継続に全力を挙げるため、資金繰り対策、雇用維持対策を規模・内容ともに大幅に拡充すること。資金繰り対策については、リーマンショック時に比肩する事業規模40兆円を超える規模を確保すること。このため、
⚫︎ 政府系金融機関による融資枠・信用保証枠を大幅に拡大するとともに、保証料減免への補助、自治体による民間金融機関および信用保証を活用した制度融資への利子補給を実施すること。
⚫︎ 政府系金融機関および信用保証協会を活用した民間金融機関による既往債務の借り換えを促進する枠組みを導入する。
⚫︎ また、通常時なら十分に事業継続が可能な事業者を支えるとの観点から、政府系金融機関、信用保証協会、民間金融機関による、貸出し後の事業者の状況に応じた、据え置き期間や貸出期間等の返済方法 ・条件の柔軟な事後的変更により、事業者の貸出し後の返済能力の変化を適時適切に捉えた対応を図るよう官民あげて徹底すること。
⚫︎ 資金繰りにも資する観点から、各種補助金採択企業に対する概算払いの実施など、事業実施後の補助金交付・確定要件の緩和を行うこと。
⚫︎ 雇用調整助成金について、支給限度日数の延長、助成率の引上げ(中小企業 4/5、大企業 2/3 へ)、解雇等を行わない場合には更に助成率を引上げ(中小 9/10、大企業 3/4)を行うとともに、手続きの簡素化、残業相殺の仕組みの停止を実施すること。
上記に加え、手元流動性を確保する観点から法人税 ・固定資産税等をはじめとした税の納税猶予 ・軽減等について、党 ・税制調査会で検討し、早急に結論を得ることとする。
3.新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の縮小によって大きな打撃を受けた家計、企業等の生活、事業継続等を強力に支援するため、以下のとおり大胆な現金給付を行うこと。なお、実施にあてっては、国民・事業者に対する周知・広報を徹底するとともに、現場における対応が真に国民目線にたったものとなるよう徹底すること。
⚫︎ 所得が大きく減少し、日常生活に支障をきたしている世帯 ・個人に対し、緊急小口資金特例とは別に、日々の生活の支えとなる大胆な現金給付を感染終息に至るまでの間継続的に実施し、万全なセーフティネットを構築すること。支給にあたっては、支給基準を明確化し、市区町村に過度な負担とならないよう努めること。
⚫︎ 中堅・中小・小規模事業者(約280万社 )およびフリーランスを含む個人事業主(約370万者)のうち、売上げが大幅に減少し、事業の継続・存続の危機に直面している者に対し、その事業継続を支え、再起の糧 とするため、使用に制約のない現金による定額の助成金 を数兆円規模で措置 し、万全なセーフティネットを構築すること。

<反転攻勢期>

4.今回の感染症拡大防止は全ての国民の真摯な協力があって成り立っており、また、全ての国民がそれぞれの立場で影響を受けている。こうしたことを踏まえ、新型コロナウイルス感染の終息に向けた道筋の進展を見極めつつ、以下の各施策を適切に取捨選択、組み合わせ、国民が広く需要喚起に参加できる措置を講ずること。
⚫︎ 本年9月に開始予定のマイキープラットフォームを活用したマイナポイント付与におけるプレミアム率の引き上げ
⚫︎ 昨年来実施しているキャッシュレスの推進施策の拡充・強化
⚫︎ マイナンバーカードを活用した迅速かつ簡易な現金給付およびデジタル商品券の発行
⚫︎ その他各種クーポン・ポイント等
5.上記4.とともに、新型コロナウイルス感染拡大によって特に影響を受けている観光業・旅行業・宿泊業・飲食業 ・イベント・エンタメ事業などを盛り立てるため、「ふっこう割」も参考にした旅行券等による割引助成、クーポンやポイントの発行、地域商店街活性化事業 (にぎわい補助金 )の実施、交流拡大に資する移動手段への割引等により、国内での人的交流・物流拡大、地域活性化のための、これまでにない大規模での観光・消費の国民的キャンペーンを行うこと。そのために不可欠な航空会社をはじめとした旅客運送事業者に対する総合的な支援措置について、現時点から大胆かつ継続的に着手・実施すること。また、地域経済の根幹を支える農林水産業について、インバウンド需要・輸出の減少等に対応するため、徹底した国内外の需要喚起を行うとともに、労働力確保対策等を推進すること。

<新たな経済社会を見据えた対応>

6.国難ともいうべき今回の事態を災い転じて福となす機会に転換すること。このため、新型コロナウイルスとの戦いの中で、対面とともにその重要性が明らかになった遠隔での各種対応を含め、Society5.0 の実現に向けた施策を以下のとおり促進すること。
⚫︎ 企業および地方自治体における在宅勤務、テレワークの導入を促進するための取組みを推進すること。
⚫︎ 一人一台端末の前倒し整備、学習データ基盤の検討、遠隔教育による家庭学習環境の整備、遠隔教育に不可欠な著作物利用の円滑化等、GIGAスクール構想を加速・拡充すること。
⚫︎ 遠隔医療 ・遠隔薬剤処方等を促進するとともに、SNSやPHR(パーソナルヘルスレコード)の活用等を進めること。
⚫︎ デジタルガバメントやキャッシュレス社会の実現、スマートシティの推進、その前提となる安心安全な5Gインフラの早期全国展開など、経済社会活動を可能な限りデジタル空間に移行する「デジタル遷都」に取り組むこと。
7.マスク等の衛生資材も含めて、顕在化したサプライチェーンの脆弱性を克服するため、特定国への依存度の高い製品 ・部素材、または国民が健康な生活を営む上で必要な製品等について、経済安全保障の観点も踏まえ、国内への生産拠点回帰、またASEAN諸国等への生産拠点の多角化を図る必要がある。このため、生産拠点や物流拠点の新増設のための建屋 ・設備への投資を支援すること。また、代替製品等の開発などサプライチェーン強靱化に資する技術開発、現地企業との協業支援、希少資源の確保強化等を行うこと。

<地方への新たな交付金の創設>

8.地方自治体が地域の実情に応じた経済対策に取り組めるようにする観点から、自由度の高い交付金としての「地域活性化 ・新型コロナウイルス対策臨時交付金」(仮称 )を創設すること。

<国際社会における発言力の確保>

9.新型コロナウイルスへの国際的な対応における特定国の過度な影響力行使を牽制する観点も含め、途上国おける感染症拡大防止のための保健分野における無償資金協力や技術協力、UNICEF、UNDP等の国際機関を通じた国際協力について、一層の拡大を図ること。

<予備費その他>

10.新型コロナウイルス感染拡大の状況が予断を許さないこと、国際経済環境の見通しが極めて不透明であること等を踏まえ、令和2年度に計上された 5000億円の予備費について、前例にとらわれない大幅な増額又は大規模な新型コロナウイルス対応緊急予備費 (仮称)の新設を行うこと。

以上、政府においては、経済対策策定 ・補正予算編成にあたり、5つの基本原則、最重点項目10項目に特段の配慮を行うよう求めるとともに、今後、世界経済の状況変化を適時適格に捉え、必要かつ大胆な施策を臨機応変に講じていくことを求める。(以 上)

※ 本提言の全文及び各部会からの要望についてはこちらをご確認下さい。

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