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ワーカーホリックな魔女の心臓を探す旅【第1話】

【あらすじ】
何度も生まれ変わっている実は元〇〇〇〇な主人公が、英雄と称えられているワーカーホリックな魔女と出会い、最初で最期の旅に出る話。
好奇心旺盛な主人公と、美味しいご飯と癒しの温泉によって、とある事情で働きまくっていた魔女がヒトらしさを取り戻す話でもある。

※性別は読んでくださる方々の想像にお任せしたいので、どっちともとれるしどちらでもない表現となっています。


【第1話】



「驚いた。君の魂、僕と同じくらい綺麗な色だね」


宝石みたいな瞳で、大の字に寝転がっている私の顔を見下ろしている。
中身を全部見られているような気分だし、強烈な魔力に生理現象の鳥肌が立つ。ああこれは、被捕食者の気分だ。


「あの…少し、弱めてくれませんか?」


分かったと言い、私と同じくらいに魔力を調整してくれた。そんなことを難なくできる魔法使いは、この個体だけだ。世界中を探してもどこにもいないと思う。多分。
なんたって私はこの世界で何度も生まれ変わっているので、普通の魔法使いよりは物知りなはず。

それにしても、驚きだ。今回はなんとあの英雄と称えられている魔女が棲む森で、目醒めたようだ。


「今の君は、生まれ変わったばかり?」

「…はい、あなたの気配がして、今目が覚めたようです」


自分と同じような個体には今まで会ったことがない。でも、おそらく、この英雄魔女も同じなのだと思う。

まあでも英雄魔女に関しては、噂程度にしか知らない。
何度生まれ変わっても噂を聞いた。この世界のどの時代でも、いつも何度も世界を救っている偉大な魔女。その姿は男だったり女だったり、年齢も時代によって様々だから、その時々の英雄魔女が全て同一人物であると知っているのは自分だけだと思う。多分。


「あの…あなたはいつも、この森で生まれ変わっているのですか?」


こんな機会、もう二度とない。それだけは明確に分かるから、質問せずにはいられなかった。


「うーん、どうだろうね?もう永く生きてると、覚えておくことが億劫になるんだよなあ」

「えっ…!やはり英雄魔女様のような魔法使いは、記憶を持って生まれ変わるのですね!」

「うーん、でも君も、毎回記憶はあるんだろう?」

「いえ、私は、なんとなくでしか覚えてないです!」


記憶を持って生まれ変われるのは、力の強い証拠とかいう文献がある。どんなに凄い魔法使いでも何度も生まれ変わることはできないとかいう論文もある。
でも、自分の力は平凡だし、勝手に生まれ変わっているし、だからこそ自分はある意味で唯一無二の個体なのだと自負している。


「…ふーん?それじゃあ、毎回死ぬ時の記憶も、ないの?」

「死ぬ時の?ああ、それは毎回同じなので、なんとなく感覚は覚えています」

「……どんな感じなの?」

「元々心臓が弱いらしくて、普段から息切れすることもあって、その延長で動悸が激しくなって息ができなくなって、…と、いう感じですが…」


驚いた。自分としてはもう慣れたものだし淡々と話していたつもりだったけど、話せば話すほどに英雄魔女の顔が苦しそうに歪んだ。意外だった。


「えっと…でも、たしかに苦しみはありますが、ああ次の生ではどんな土地で暮らせるのだろうかって、けっこう、楽しみながら死ねるというか…」

「……楽しみながら…」

「ええ、そうなんです。なぜなのかは分からないですけど、勝手に毎回生まれ変わるので、いろんな土地で目が醒めて、そこで暮らして、その時に気になったモノを自分なりに研究して、というような生活を楽しんでいるので」


まあ、どんな生活だったのかはぼんやりとした記憶しかないのですが、楽しかった気持ちだけはしっかりと覚えているのでと、笑って言った。
でも、英雄魔女はまだ顔を歪めている。


「……なるほどね。分かったよ君が、なぜ何度も生まれ変わってるのかが」

「えっ!な、なぜですか?」

「君には、欲がない」

「…え、欲?」

「だから、毎回充実した生を送ってる」

「は、はあ…」

「大概の魔法使いが、心残りや野望を抱いて生まれ変わりを望む。そういう場合は記憶は持たない」

「えっ…と、私は、生まれ変わりを自ら望んではいないのですが…」

「本当に?」


いや、たしかに、そう言われると…毎回次を楽しみにはしているけど、でもそれは勝手に生まれ変わるからで…


「ねえ、一緒に、旅をしない?」

「……え?た、たび…?」

「そう、旅」

「な、なぜ急に…」

「君は、真実を知りたいんだろう?」

「真実…」

「僕なら、君の力になれる」

「…それは、そうかもしれないですが…あなたにとって、私と旅をすることの、その、利点がないと言いますか…」


こんな機会、もう二度とない。それだけは明確に分かる。でも、宝石みたいな瞳が、キラキラと煌めいていて、なんというか、少し、怖いのだ。


「利点か。そうだなあ。あ、僕はね、実は、心臓がないんだ」

「………は?」

「遠い昔にね、いろいろあって、とある個体に心臓をあげちゃって。その個体を探してるんだ」

「……はあ…」

「でもね、もう探すのは今回で最期にしようと思ってて」

「…え?なぜですか?」

「もう、疲れちゃったんだよね」


そう力なく笑った英雄魔女の顔は、本当に、疲労感が滲み出ていた。


「今回は、大きな戦争もなさそうだし、この際だから好きなところへ旅でもしようかと思って」


そうか、それはそうだ。英雄魔女はその名の通り、幾度も幾度も世界を救ってきたのだから。


「それで、今君と、出会えた」


ーードクリと、心臓の鼓動を強く感じた。


「君となら、楽しい旅ができると思ったんだ」


どうだろうか?と、手を差し伸べられる。

何度生まれ変わっても、心臓が弱いから、外への興味があっても毎回目醒めた土地から離れずに短い生涯を終えていた。
でも、この英雄魔女となら、旅ができるかもしれないしーーもしかしたらもしかすると、長生きできるかもしれない。


「ふ、不束者ですが…よろしくお願いいたします…!!」


初めて触れた英雄魔女の手は、びっくりするほど、冷たかった。


【第2話】https://note.com/mitami_ta/n/nb0591ed9c781

【第3話】https://note.com/mitami_ta/n/n22072e6f7130


久々になんとなくnote開いたら、
創作大賞なるものがあると知り、
しかも漫画原作部門なんてものがあると驚き、
自分の考えた話が漫画になるって
そんな夢のような話があるの?!!
と思い立って唐突に書き始めました。

話のネタは、何年か前
iPhoneのメモ帳に書いてたやつです。
明晰夢をよくみるので、
その内容とかよくメモってます。つづく。

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