【宝くじ】投資か?消費か?社会貢献か?
自分は宝くじを買ったことがない。
それは…。
年末ジャンボ宝くじ
今年もアレの季節がやってきた。
そう、年末ジャンボ宝くじだ。
1等賞金が7億円、1等の前後賞が各1億5,000万円で、1等・前後賞合わせて10億円と超豪華賞金が魅力の宝くじだ。
「10億円!!」
会社員の生涯年収が平均2億円とされているらしいので、まじめに一生かけて働いても手にすることができない大金と言える。
「10億円当たったら何に使おう?」
「とりあえず仕事やめていいかな?」
「まずは世界一周旅行に行きたい」
「エステで体磨いて…バーキン手に入れて…」
「俺、テスラ乗ってみたかったんだよな」
「南の国の無人島でも買ってみる?」
「いやいや便利な生活は捨てがたいから、タワマンの最上階でしょ」
「プライベートジェットはさすがにムリか…笑」
買った人はニマニマしながら、こんなことを考えているのだろうか?
夢は大きいほどよい。
あとは、当たりさえすれば…。
この記事では、そんな宝くじについてアレコレ考えてみた。
投資としての宝くじ
期待値
昔から「宝くじは愚か者の税金」と言われている。相当な言われようであるが、その心は宝くじを買っても報われることがほぼ無いことにある。
宝くじは確率に基づいて厳正に運用されているが、その期待値は購入者が思っているよりずっと低いのだ。そのため、投資対象としては全く適さない。
そもそも宝くじで資産を増やそうなどとまじめに考えている人がどれほど存在しているかは不明であるが、宝くじは資産運用の反面教師として格好の研究材料であることは間違いない。
1年後の株価のようにフタを開けてみないと結果がわからないような事象については、確率論に基づいて評価するのが合理的な人間の行動と言える。その指標となるのが期待値だ。
宝くじも1年後の株価と同様に抽選をするまでは結果が確定しないため、期待値で評価すべき事象の一つだ。
年末ジャンボ宝くじのデータを用いて、実際の期待値を計算してみよう。
上記計算より、期待値は約150円であることがわかる。
1枚300円で購入した宝くじの期待値(確率的に算出した価値)は、たったの150円、つまり元値の半分の価値しかないのだ。
これは、3,000円支払ってWAONカードに1,500WAONチャージする行為と同じ意味合いであり、もしイオンモールにこんなチャージ機が設置してあったら暴動が起きてもおかしくない。
期待値から宝くじのリターンを計算すると、▲50%となる。増えるどころか減っている。
完全に投資不適格の商品だ!
これが、「宝くじは愚か者の税金」と言われる所以だ。
だから、自分は宝くじを買わない。
投資教育
2024年は新NISAがスタートするなど、多くの人が投資に参加し始めた年であった。その意味で2024年は投資元年と呼べる年だったかもしれない。
少子高齢化により年金の先行きが不安視される中、自助努力として投資により老後資産を確保することは今や万人にとって必須のスキルとなってきている。
しかし、残念ながら国民の金融スキルは圧倒的に不足していると言わざるを得ない。これは、日本の文化なのか、お金に関することを教育の場で教えることをタブー視してきた結果だと思われる。
これからの時代は、義務教育の段階から適正な金融教育をおこない、国民全体の金融スキルを向上させる必要がある。
その第一歩として、「宝くじを購入するとは何を意味するのか?」を確率論を踏まえて教えるのは、いいアイディアだと思われる。
何しろ、宝くじは身近に存在し、現に多くの人が購入しているからだ。
勘や好き嫌いで投資するのではなく、きちんとした確率的な計算に基づいて投資をしなければ、老後資産の形成はおぼつかない。投資には経済合理的な行動が必要なのだ。
その第一歩が宝くじの期待値でありリターンに関する知識なのだ。
むろん投資においては、リターンの他にもう一つの重要な概念であるリスク(リターンのばらつき)の理解も必要であるが、その話は別記事に譲りたい。
消費としての宝くじ
ここまで、投資としての宝くじについて否定的な見解を述べてきたが、自分は消費としての宝くじまでを否定しているわけではない。
宝くじの購入目的を投資ではなく消費と考えた場合、購入者は宝くじの価値をどのように捉えているのだろうか?
1枚300円で購入した宝くじの期待値(確率的に算出した価値)は150円である。残りの150円はどこにいってしまったのだろうか?150円の価値の紙切れを300円で買う人がいるはずがない。
実は残りの150円は購入者にとっては付加価値であり、ドリーム(夢)を見るサービスの対価として支払っているのだ。
期待値:150円は原価であり、それに付加価値のドリーム代:150円が合わさって、300円の価値のある商品として宝くじを購入している。
そのように考えないと辻褄が合わない。
ドリーム(夢)とは具体的には「10億円当たったら何に使おう?」と抽選日までドキドキする気持ちのことだ。宝くじを消費として購入する場合は、このドキドキ感を150円で購入しているのだ。
宝くじを買ったくせに「ドキドキ感を味わいたいだけだから、当たらなくてもいいの」というセリフはよく聞く。
このドキドキ感を1枚150円で購入する行為が理にかなっているかどうかは、購入する本人の価値観による。他人がどう思おうが本人が納得していればそれでいい。
好みの本を買うように、好みのCDを買うように(最近はダウンロードか?)或いは推しのグッズを買うように、趣味・娯楽費として支出すればいい。
ただ、自分は消費としても宝くじを買うことはない。
社会貢献としての宝くじ
もう一つ、宝くじには社会貢献としての側面がある。もっともこれを公言している人はあまり聞いたことがないが…。
宝くじの収益金はどのように使われているのだろうか?宝くじ公式サイトによれば、宝くじ売上金の支出の内訳は次のようになっている。
当選金と必要経費を除いた売上金額の36.7%が発売元である都道府県と20指定都市に分配されているのだ。
自治体により用途は異なるが、例えば東京都の場合は次のような事業に当てられており、一定の社会貢献を果たしているのは間違いない。
つまり宝くじの購入により、結果的に社会貢献に繋がっているのだ。
この事実を以てして、「自分は社会貢献活動のために宝くじを購入している」と堂々と主張することも可能だろう。
「だから10億円当たらなくてもいいんです」と…。
「もしそのつもりなら、素直に全額寄付した方が効果が大きいですよ」などという野暮なツッコミは、この際なしだ。
自分のように宝くじを買ったことがない人間でも、宝くじ売り場に並ぶ人を見かけた時には、心の中で「ありがとうございます」と手を合わすのが人の道というものだ。
さいごに
自分は宝くじを買ったことがない。
しかし、何故だか過去に宝くじに当選した経験はある。
これはどういうことかと言えば、だいぶ昔にネット証券のキャンペーンで貰ったのだ。その頃、新規参入したネット証券会社では先行者利益を狙って投資残高の獲得に向けて、キャンペーン合戦をしていた。
100枚ほど入手した宝くじに、何と10万円の当たり券が含まれていたのだ。
買ってもいない宝くじで10万円ゲット!!
当たったときは、無欲の勝利…そんな言葉が浮かんだものだ笑
ちなみこのとき自分は「一生分の運を使い果たした」と周囲に触れ回っていたが、これは確率論から言えば間違った発言だった。
宝くじは独立事象のため、一度当たったからと言って次に当たり難くなったりはしない。逆に、ずっとハズレばかりが続いているからといって、次こそは当たりがくると期待するのも合理的な思考ではない。
似たような話で、「この宝くじ売り場は当たりが出やすい」
などという話も出鱈目だ。販売総数が多い売り場では売り場から当たりが多く出るのは当然であるが、1枚1枚の宝くじの当選確率はどれも一緒のはずだ。
裏で確率を操作する巨大な不正が行われているのではない限り、「この宝くじ売り場は当たりが出やすい」などという現象は起こり得ないのだ。
ただし、日常生活の場で宝くじの会話が盛り上がっているときに上記のような指摘をすると「空気を読めない奴」認定されかねないから慎んだ方が身のためだ。
現に、自分も妻に講釈垂れては「出たよー。また理系くん」ってよく言われている。
心の中でそっと思っているだけにしておいた方が平和に過ごせることが世の中には多いようで…。
ただ、投資をするときにまで同じような態度をとってしまったら、場合によっては後戻りができないような傷を負ってしまうかもしれないから使い分けが必要だ。
投資は確率に基づき冷徹な心で判断すべきだということをしっかりと心に刻んでおきたいものだ。
◇
宝くじは、投資か?消費か?社会貢献か?どう捉えるのが正解なのだろうか?
年末ジャンボ宝くじの抽選日は12/31の大晦日である。どなたが10億円を手にするのだろうか?
買ってない自分には関係のない話であるが、もし買った人がいたら幸運をお祈りする。
そして万が一当選したら、友達になってください。
耳寄りな話があります…笑
※この記事では「宝くじ」について考察していますが、記事内容はあくまでも筆者の個人的な見解です。「宝くじ」を購入する人を卑しめる意図はありません。
※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
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