おたくとお金のこと

切っても切れないお金とおたく。


推しにお金をかけるということについて、積極的にお金をかけている人が存在する理由って、推しにたくさん会いたいからと同等くらいに「同担へのマウントのため」という理由があると個人的に思っている。

なんかもう、最近の各おたく界隈見てて「鶏が先か卵が先か」状態になってきてるんですよね、わたしの脳内が。たくさん推しに会って同担にマウントを取るのか、同担にマウントを取るために推しにたくさん会いたいのか。何言ってるか分からなくなってきた。札束で殴るという言葉、お金=愛という言葉。

お金がないと何もできないので、お金をかけた方が推しのためになる。それは絶対にそう。でもなんか、いうてそんなん人の勝手なわけですよ。推しにお金かけようがかけまいが。お金かけてる人は、往々にしてそういう人を許せないと思っている節があるけど、自分がたくさんお金かけてて推しにたくさん会ったり貢いだりするのが好きで、それで推しに貢献しているという自負があって自分のスタンスに満足していれば、そんな人の存在なんてどうでもいいはずなんですよ。まず気にする対象にもならない。でも、許せないと思っているっていうことは、そういうことだろうと思う。お金かけずに推してて幸せそうにしてる人が自分達と同等であっていいはずがないと思っているということは、結局その人のことを意識しているということで、その人たちを少なからず羨ましいと思っているわけで、お金をかけ続けていても満たされないものを抱えている。だって、お金をかけていようがいまいが推しにとっては等しく全員「ファン」なわけだから。それ以上でも以下でもない。結局、みんなお金=愛だと思っていて、推しを推すということについてその呪縛から抜け出せないでいる。

お金=愛というなら、愛はお金で買えるといえるし、でもそんなことが成り立ってしまえば、おたくの中の誰かは推しと付き合えていていいはずだ。まあ実際パトロンとかなんとかあるわけだけど。

わたしもそういうの意識していた時期はあった。推しの現場に足を運んでグッズを買って推しにお金をかけることこそが推しへの愛の証明だと思っていた。長いオタク人生のなかで「推しにかけるお金=愛」という思考を植え付けられ、マウントの中でなんとか生きてきたわたしは正直に言うとその当時ものすごく性格が悪かった。同担より1公演でも多く入りたかった。遠征せずに多ステせずに自分の地元の近くでやる現場に1,2回入るだけで同担拒否とかりあことか笑わせんなと思ってた。白状すると、数枚だけのブロマイドを並べる同担の横で大量のブロマイドを並べたりもしたし、推しのおたくだとわかるようにグッズを鞄にさりげなくつけて、わざわざ会場の後ろのドアから前方席に行った。でもある日、同担が推しとの接触イベントで「今日は本当に大優勝だった。会場で私が一番だった。」とおたく界隈でわりと有名な美容師さんのストーリーを通して不特定多数にマウントを取っていたのを見かけて、それはもう気持ち良いくらいに一気に冷めてしまった。わたしは推しの接触イベントが嫌いだ。推しの対応や顔のつくり方、そのタイミング、言葉のすべてが完璧すぎて、「自分が推しにとってたくさんいるファンの中の1人にすぎない」ことを完全に理解させられてしまうから。完全にお仕事でやっているのだなということが丸わかりだから。そのストーリーをみて思った。ああ、この子もそうなんだ。こうやって必死に見えない相手を死ぬほど意識してこんなことをしないと満たされない。そしてこういうことをする自分をとてもむなしく思うんだろう。わかるよ、わたしもそうだから。推しのイベントにファンとして言っている時点で、顔を覚えられようがどんなにいい対応をされようが「ただのファンのひとり」だ。何百人のファンを対応するなかでどんな会話をしたかとかひとりひとりの顔なんか推しにとってはどうでもいいし何年間も何度も通っていない限り覚えてなんてきっとない。だって推しにとってはそれがお仕事。

推しに本当に伝えたいのはこの気持ちなだけのはずなのに、そんなふうにしか愛を伝えられないのはつらかった。それに追われて気持ちがどんどん荒んでいくのが、推しへの好きがどんどん純粋じゃなくなっているようでしんどかった。


それ以来、お金について考えることをあまりしなくなった。わたしにとって、「推しにかけるお金の大きさ」は自分を苦しくする要素のひとつだ。だって現場に通うわたしはどんなに本気で好きでも推しにとっては「大勢いるファンの1人」なんだから。以前は好きではない演出家の舞台にも、推しの言動など何かにキレているときも、推しが出ているからという義務感で現場に足を運んだが、今は行きたくなかったら行かない。行きたかったらたくさん行く。同担はもう見ない。わたしにとってはわたしと推しだけが一番だから。そしてそのスタンスを自分で責めないようにしている。囚われたくないなと思う。しんどくなるのは推しのこと考えてるときだけでいい。

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