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少数激戦化する都立中高一貫校

都立中高一貫校の人気が低迷に向かっているとするSNSなどでの意見をよく見かけるようになりましたが、そうした情報は正しいのでしょうか。

都立中高一貫校人気の低迷を主張する意見は、かつては倍率10倍越えも珍しくなかった都立中高一貫校の平均倍率が、今や5倍を下回って推移するようになったことを根拠とするものが多いですが、そもそも5倍を超えるような倍率が異常だったのであって、健全な激戦倍率に収斂しつつある過程だと考える方が合理的であり適切なのではないでしょうか。

私立中学の実質倍率は最難関校でも2倍から3倍程度で長らく推移しており、実質倍率が4倍前後の都立中高一貫校の倍率は、それらと比べても低くはなく、むしろ依然として高いです。

そもそも都立中高一貫校どうしの併願はできないため、多数の学校を併願受験ができる私立中学受験と同じ基準で比較すること自体に無理があります。

では、都立中高一貫校がかつての超高倍率から倍率が低下した原因や要因は何でしょうか。

最大の要因は都立中高一貫校の入試難易度の高騰です。

公立という響きもあってか、開校当初は誰もが合格できそうに思われていた都立の中高一貫校は、実はそうではなくて超難関校であり、そう簡単には合格できないということが広く知れ渡り、中学受験を目指す学力中間層や下位層がこぞって都立中高一貫校受検から撤退したことが最大の要因です。

都立中高一貫校受検を目指す学力上位層は依然として残っており、倍率は低下したものの、むしろ合格難易度(合格可能偏差値)は上昇するという現象が続いています。

都立中高一貫校受検から撤退した学力中間層や学力下位層が向かった先はどこでしょうか。

中堅や中位の私立中高一貫校であることが入試データから読み取れます。受験学年を迎える学童人口は減少しているにもかかわらず、私立中学受験人口は横ばいを続けていて、それにより私立中学受験率も上昇し続けています。

東京都や隣接する県が私立高校の授業料無償化を実施し拡充したことも、その流れに拍車をかけました。設備費などは無償化の対象にならないものの、費用の約半分を占める授業料が無償化されたことで、授業料だけでなく設備費もほぼ完全に無料である都立中高一貫校を目指し続ける理由が緩和したことも大きかったと思われます。

私立高校の授業料無償化は高校3年間に限られ、一部で私立中学3年間の授業料が補助されるものの、依然として私立中高一貫校の6年間の費用が相対的に高額であることには変わりなく、6年間で必要となる教育費の額は事前によく調査しておくべきでしょう。

特に兄弟姉妹がいる場合はその倍数の費用がかかりますから、私立中受験対策大手塾の高額な塾代と合わせ、適切な教育費の管理が必要になります。

そうは言っても、合格できそうにない人にとって、都立中高一貫校を目指すことは非現実的です。

公立中高一貫校対策の大手塾に通って残念になれば、大手塾の高額な受検対策費用を無駄にすることになります。この合格可能性の見通しの厳しさは、都立中高一貫校受検を断念させるには十分な威力となるでしょう。

そうした状況の中でも、依然として4倍程度もある都立中高一貫校の実質倍率は、つまり人気は、むしろ高い水準にあると考えるべきでしょう。難関私立中高一貫校を目指す受験生が併願する比率も上昇していますから、人気が低迷したとする意見は適切とは言えないのではないでしょうか。

都立中高一貫校は水増し合格や複数校合格はありませんから、実に定員の3倍前後の受検生が夢を叶えられずに春を迎えることになります。

全体としては実質全入になっている私立中高一貫校とは、根本的な厳しさが違います。

受検生や受験生をもつ保護者の方々は、SNSの情報を鵜呑みにするのではなく、実データに直接触れて実態を正確に把握されるとよいでしょう。


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