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「華ではなくプロとして荒木さんを呼んだんだ」

 Twitterで呟こうと思ったけど140文字じゃ書き切れないな~ということでこっちに。ゆるめの文章です。

 CoDプロ対抗戦、BEMANI PRO LEAGUE、Fortnite Champion Series、FAVCUP……最近はeスポーツ競技シーンでのMCを担当することが多くなりました。そういう大事なシーンにおいて、わたしを単体でMCとして扱ってくれる運営さんには本当に感謝しています。なぜなら数年前まではeスポーツ系の番組に出演すると女性の役割はこっち、と言わんばかりに「アシスタントMC」という添え物にされがちだったから。キャリアを積んだからかそういう時代なのか、最近は一人で進行を任せてもらえる機会が増えたなーと感じています。このことについてちょっとだけ思い出話を。

 わたしはゲーム以外に公営競技でもMCやインタビュアーの仕事をしているのですが、公営競技の仕事は特に男女ペアの機会が多かったように思います。式典やパーティーが開催されれば男性アナの隣でアシスタントを務めましたし、5年間レギュラー出演をしていたニュース番組も基本的に男女ペアでの進行でした。男性アナたちは公営競技や野球などでの実況を務めるプロ中のプロ。知識もキャリアもかけ離れているわけで、わたしがサポートにまわるのは当然とも言えます。それが女性MCとして、華としての役割とも思っていました(勝手に華と自負していた奴~)。ですが4〜5年ほど前、ニュース番組を終えた帰り道でハッとする出来事がありました。その日ペアだった実況アナの先輩、伊藤政昭さんが

「女性だからアシスタントっていうのも変だけどね。プロなんだから、メインとサブに分けるんじゃなくて二人ともメインの立場でいい。あなたも自分の言葉で喋って普通に会話に入って進行していいよ」

と言ってくれたのです。ずっとすり込まれていたんですよね、男性とペアの場合は男性がメイン、わたしはサブとして、ルール、告知、競技結果だけをナレーションし余計なことは喋らない方がいいのだと。でも伊藤さんは知識もキャリアもだいぶ下のわたしを一人のプロMCとして見てくれていたのです。「女性はアシスタントと思い込まなくてもいいんだ」……伊藤さんと別れた後、じわじわ嬉しさが込み上げてきたのを覚えています。

 しかしそこからすぐに何かが変わるわけでもなく、男性とペアの番組やイベントになると

男性MC「メインMCの◯◯です。そして」
荒木「アシスタントMCの荒木美鈴です」

という台本が用意され、わたしはルール説明をしたりインタビュー時に選手にマイクを向けるなどの業務を担当しました。こういう時は自分の味が出し辛くてちょっと寂しくもありましたが、2人で回すとなるとしょうがないことなんだな、セオリーなんだな、と諦めるしかありません。限られた出番のうちにやれることはないか試行錯誤し、「いかにマイクをスムーズな動きで選手の口元に運び、その手を指先まで美しく見せるか」にこだわったりして自分を高めようとした時もありましたが、あまり変化がなかったのですぐにやめました。

 それから年月が経ち出会ったのがCoDプロ対抗戦。MCはわたし一人でした。きっとeスポーツキャスターの男性とペアだろうと思い込んでいたので、台本をもらった時はちょっと驚きでした。珍しいな、こういうフォーマットも挑戦してみたかったのかな? 不思議がるわたしに運営のM井さんが言ったのは

「荒木さんを華として呼んだんじゃない。女性=華ではない、プロとして呼んだし周りにもそういう認識でいてもらう」

という言葉でした。これを聞いた時、「求めていたものだ!!」とピースが埋まったような感覚を覚えました。わたしは進行のプロで、決して添え物ではない。男性の隣にいることが仕事でもない。数年前にかけてもらった伊藤さんの言葉と合わさって、自分の仕事に新たなポリシーのようなものが生まれました。わたしは一人でも進行ができる実力をつけてきたのだ。実況のプロ&解説のプロとスムーズに連携を取ってみせる! これまでよりも強い責任感が芽生えた瞬間でした。

 この半年間の仕事を経て、わたしは「eスポーツシーンでも進行やインタビューができますよ」とアピールができるようになりました。これまでのeスポーツ番組はほぼ男女セットだったのでなかなかそう言い切れなかったんですね。そうして冒頭でお話した仕事に繋がっていったのです。

 わたしをアシスタントとして扱わないで! と言っているわけではありません。それも大事な役割ですから全力で臨み、自分なりのテイストを少々混ぜながら過不足ない喋りをします。だけど「アシスタントMCの荒木美鈴です」という台本があればそっと二重線を引かせてもらいます。喋る量や内容は控えめでも、自分もメインの1人と心の中で思っていていいですよね。

 余談ですがわたしは森一丁さん(TVで長年活躍されているナレーター・MC)を勝手に心の師としています。憧れと表現することすらおこがましく、自分の生き方の基準点の一つと言っても過言ではありません。そんな一丁さんの隣でアシスタントMCをする時はいつも誇らしく感じていました。もうここだけは例外です。師なので。いつまでも一丁さんの隣でアシスタントをしていたい、いやむしろ一丁さんの隣にいるべきアシスタントは自分だ、他の女性が立つなぞ簡単には許さんぞ! とよく公言しているので一丁さんには「こわっ……」と引かれてしまっています。そうやってもう10年くらい背中を追いかけ続けていますが、こんな例外的存在がいることもわたしにとって宝だと思っています。伊藤さん然りM井さん然り、思い返せばいい人たちとばかり仕事してきたものです。

 MCを始めて15年近く、まだまだ伸び代しかないと思っています。もっと多くの舞台で一人で仕事を任せてもらえる姿を皆さんにお見せできるはず。きっと飽きさせないので、これからも応援してくださいね。ではまた。

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