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新選組を訪ねて日野市2022 - 華のおんなソロ旅

 今、動画配信で見つけた新選組を題材としたアニメ作品「薄桜鬼」(2012~2016年)を視聴中である。女性向けの「恋愛アドベンチャーゲーム」(!)から始まって、劇場版やミュージカルにもなった大ヒット作だそうだが、ついぞ知らなかった。軽い気持ちで見始めたが案外面白い。          当初女性をターゲットとしたところから、ほとんどの隊士はみんな現代風のイケメンでよく見ないと誰が誰だかわからないがキャラ立ちはしっかりしている。いささか単純だが大らかな近藤、ツンデレの土方、従来のかわいい弟分のイメージとはちょっと異なり斜にかまえた沖田、年少者らしくやんちゃな藤堂、学者風の山南(「やまなみ」ではなく最近の説、「さんなん」読みにしている)、元気で明るい永倉原田、年長者で優しい井上源さん。そして一番かっこよく見えるのが、寡黙だが最強の剣士、斎藤一だというのも興味深い。最後まで描かれるのは土方なのだが、オリジナルキャラ雪村千鶴なる女の子(アニメ声優特有のキャンキャン声で少々うっとうしい)と中途半端にベタベタするのでいささかヘキエキである。内容は、既存の作品を思わせるもので、往年の少女漫画の大家、木原敏江をご存知の方は、「天まであがれ !」「夢の碑シリーズ」をミックスしたようなものであると言えばわかりやすいか(なお、この「薄桜鬼」では隊士たちは吸血鬼である)。史実には比較的忠実であり、「薄桜鬼 碧血録」ではドラマなどではあまり出てこない、鳥羽・伏見の戦い以後の組の滅びゆくさまを丁寧に描いており、見入ってまうところも多々あった。背景も、屯所の八木邸、京都の料亭「角屋」の宴会場の豪奢な造り、庭の様子などきちんと再現しているので感心した。新選組のオールド・ファンの方も食わず嫌いをしないで一見されてはいかがでしょうか。

 さて、また前置きが長くなってしまったが、2022年に新選組を訪ねて土方歳三のふるさと、東京都日野市を訪れた記録である。この日野市には、新選組隊士の子孫の方々が開設している資料館が多々あり、いわば新選組聖地のひとつなのだが、開館時間が「第1・第3日曜日の午後」などと限られているので、都民でもなければ巡るのは非常にハードルが高いのである。私にとっても今回の訪問は奇跡的な好機であった。大切にしなければ。

 JR日野駅を出発点として、まず向かったのは土方の生家の近くで墓がある「石田寺」である。あとから考えればモノレールに乗ってもよかったのだが、天気もよいので歩くことにした。結構な距離だったが、あの土方の墓参りと思えばものともせず。住宅街に入っていくと立派な門構えのお宅が並んでいるが、なんと表札は「土方」さんばかり。ここ、日野では珍しい名ではなく、一族で住んでいたのですね。石田寺で目指すお墓にたどり着くとかの有名な土方の凛々しい写真が掲げてあった。人気もなく静寂の中である。 次はといえば、土方生家の「土方歳三資料館」が聖地なのだが、残念なことに訪問する少し前に休館されていた。ここの館長の土方の子孫、土方愛さんはよくマスメディアにも登場されているが、私的に資料館を維持されるのにはご苦労があったのだろう。

石田寺
土方歳三の墓
土方歳三生家跡
資料館は休館中


資料館の入口前の胸像


 土方生家はモノレール駅のすぐ近く。高幡不動駅まで乗って、今度は土方の菩提寺である「高幡山金剛寺」へ。土方目当てで行ったのだが、広い境内には壮麗な五重の塔や、日本一の不動三尊像を祭った奥殿大日堂鳴り龍天井など見どころも多く、思いがけず堪能した。

土方生家のすぐ近くのモノレール駅


凛々しい土方の像
新選組両雄の碑

 ところで、閑話休題。映像化作品でのベスト・土方は誰かという永遠の課題 ? である。たいていの人は大河「新選組 !」の山本耕史というのだろう。写真によってはとても似ているが、私はあまり彼が好きではない。岡田准一も同じ理由。夏八木勲とか、古谷一行とかもかっこいいけどいまやおじさんすぎる。個人的には、大河「青天を衝け」の町田啓太が、貫禄はないが憂いをしょっていてよいのではないかと思っている。「幕末相棒伝」(2022年・NHK)の向井理も好みではないが、ちょっといいかも。

 さて、午後はバスに乗って「新選組ふるさと歴史館」へ。あまり目新しい内容ではなく、わざわざ行くほどのこともないというのが正直な感想。一連の新選組資料館をもう少しまとめた場所にすればこんなに移動に苦労しないのになあ、と思うけれど、今さら場所を移設するのも難しいのかもしれない。

記念写真が撮れる


アート作品にもなる土方

 また駅近くに戻ってきて、今度は徒歩で「日野宿本陣」へ。ここは、土方の姉の夫、佐藤彦五郎が建てたもので、都内で現存する本陣建築はここだけだそうだ。佐藤彦五郎はこの地では大変な有力者で、かつ新選組の重要なパトロンでもあった。それがうかがい知れるような立派な造りの建築である。甲州鎮部隊として甲州に向かう途中の土方近藤もここで休憩したという。故郷とも最後の別れとなった。

日野宿本陣入口

 その、佐藤彦五郎の名を冠した「佐藤彦五郎新選組資料館」も先に挙げたような極めて限られた日時に開館している。こじんまりとしたスペースだが、土方が最期の地、函館から市村鉄之助に託して送ってきた写真の原本や愛用品、沖田の直筆の手紙など貴重な資料が展示されている。子孫の方々(ごきょうだい?)が出ていらして、来訪者の様子を見ながらところどころ説明されているが、素敵な方々である。土方愛さんもだが、土方家の美のDNAは現代にも脈々と受け継がれているのかしらん。「刀剣を飾っているとときどき国の審査を受けなければならないんですよ」などとの内輪話も面白かった。隊士の子孫の方々は今も仲良く交流されているようで、集合写真もあった。

佐藤彦五郎新選組資料館

 さて、甲州街道に戻り、次に立ち寄ったのが「日野宿交流館」という観光案内所も兼ねているところである。次の資料館の閉館時間も迫っているし、どうしようかなと思ったがせっかくだしと寄ってみた。大河ドラマにちなんだパネルもあったので、写真に撮らせていただいた。今回のキャッチ画像である。

隊士たちのフィギュアも

 閉館時刻直前に入れたのが「井上源三郎資料館」。ここは、平成16年の大河ドラマを契機にできたところで、隊士の書状などが公開されていた。

井上源三郎資料館

 一日使っての新選組を訪ねた日野市の旅はこうして無事終了した。知れば知るほどもっと訪ねてみたくなるのが聖地巡礼旅である。函館には何度となく行き、過去箱館戦争の史跡も訪ねているが久しぶりにまとめて廻ろうか。古戦場にも行きたいけれど、今、クマが怖いしね(笑)。会津若松市の「会津新選組記念館」にもいずれ行ってみたいです。

 ※おまけですが、2023年にJR板橋駅前に永倉が建てた近藤勇の墓(斬首された胴体が入れられた)参りができたので、付記します。

近藤の当初の墓石
近藤勇の像


近藤・土方連名の墓碑 側面には新選組隊士の名が並ぶ
新選組の墓碑のすぐ側にある
近藤の石碑
三人仲良く並ぶ