見出し画像

「日出処の天子」の飛鳥路を往く2023 ~ 華のおんなソロ旅

 山岸凉子の往年の傑作漫画、「日出処の天子(ひいづるところのてんし)」を訪ねる旅の2日目です。

 前日は、家族旅行の想い出の奈良ホテルに宿泊、早朝から庭をそぞろ歩き、鹿の親子にも遭遇。奈良名物の茶粥の朝食も美味しくいただき、ホテルの送迎車でJR奈良駅へ。

朝から豪華  エネルギーチャージ

 事前に申し込んでいた定期観光バスのコースは「大神神社と飛鳥めぐり」で、今回奈良を周遊するきっかけとなった「石舞台古墳」もしっかり行程に入っている。

 まず訪れたのは、大神(おおみわ)神社で、奈良駅から車で小一時間ほどのところにある。入口の32メートルもある巨大な鳥居にまず驚かされる。高さ500メートル弱の三輪山をご神体とするため本殿はなく、拝殿の奥にある三ツ鳥居から山を拝むのだが、誰でも拝めるのではなく特別の手続きが要る。酒造りの神、医薬の神で関係業者の参拝が多いことなどはガイド本で知っていたが、これほど広い境内とは思わなかった。バスガイドさんから要領のよい経路を教えてもらって、小一時間ほど散策。

拝殿


この奥で万病に効くとという御神水が紙コップで飲める
拝殿横の巳の神杉(みのかみすぎ) 蛇の好きな卵が供えられている 今、品薄なのにね
展望台から入口を望む 中央に大鳥居
二の鳥居 ここから参道が続く

 次に向かったのが、いよいよ石舞台古墳である(キャッチ画像が表側)。6世紀末から7世紀前期のものと考えられている。盛り土が失われて、巨大な石による横穴式石室が露出したものである。入場料が250円とはどうなっているのかと思っていたが、古墳の周辺を草地が取り囲んでおり公園のようになっていて、入口で拝観券を買い求める。蘇我馬子の墓との確証はないとガイドさんは言っていたが、漫画でいつもドスドスと歩いていた、堂々たる体躯の馬子にはイメージぴったりの墓である。雨模様なら見学も厳しいが、最高の天候に恵まれたのでじっくり見ることができた。今回の旅の目的達成である。

こんなふうに中に入れる
中から天井を見上げる
これは裏側

 昼食は柿の葉ずしのセットメニューとのことで、お仕着せなのであまり期待をしていなかったのだが、意外にも美味。柿の葉ずしはもちろんのこと、三輪そうめんの入ったつゆも美味しかったし、おやつのどら焼きまでついていてお腹いっぱい。

美味でした

 午後一番に向かったのはキトラ古墳壁画体験館「四神(しじん)の館」。正直のところあまり関心はないが、もろい漆喰の中から壁画を発見、保存に成功した関係者の努力には敬意を表する。

こんな形だったらしい
今はこのように 体験館のはずれにひっそりと

 次に向かったのは、聖徳太子の誕生の地に建立された橘寺である。ここには、いろいろと興味深いものがたくさんあるのだ。人の心の善悪を表した「二面石」はなぜここに置かれたのかしらん。さっそうとした風情の太子の愛馬「黒駒」を見ると、よく飼いならしていた漫画の舎人、調子麻呂(史実では調子丸)をつい思い出してしまう。ここには、「日出処の天子」では早々に太子に殺されてしまう百済の高僧、日羅上人像もあり、毎年期間限定で公開されているとのこと。そして本堂には聖徳太子孝養像もありました。堂内は写真撮影ができずに残念。

いかにも飛鳥路
ここからなだらかな道を上がっていくと橘寺


二面石  
往生院の天井画 これだけは撮影可 皆、寝転がって天井を仰いで撮る


橘の樹
りりしい黒駒

 行程の最後は、橘寺からすぐの飛鳥寺である。蘇我馬子が建立した日本最古の仏教寺院で、日本最古の飛鳥大仏が有名である。飛鳥大仏を造ったのが、鞍作止利(くらつくりのとり)。漫画では、厩戸皇子が心許せる「ファミリー」の一人である少年として登場する。この大仏は写真撮影OK。一メートルほど近づいて拝むことも可能で、建立後一度も動かしたことがないとわかっていることから「聖徳太子と同じところから拝めるんですよ」との住職さんの説明も心憎い。アーモンド型の目をして、よく張った小鼻、穏やかに閉じた口元。何度となく火災で罹災したなごりか頬に大きな傷が目立つけれど、私はこの大仏像には人間味 ? を感じてとても好きになり、しばし眺めていた。

飛鳥寺から望む 煙がたなびいていたらタイムスリップしそう
飛鳥寺の入口
飛鳥大仏 ちょっと斜めを向いているのは橘寺の方角とか
飛鳥大仏の左には聖徳太子孝養像 紅いライトアップが妖しの風情


中大兄皇子と中臣鎌足が蹴鞠をしながら蘇我家討伐を謀議したという跡地


蘇我入鹿の首塚 討たれた首がここまで飛んできたとか

 JR奈良駅に帰ってきたら16時過ぎ。一日いっぱい楽しめた。ガイドさんも運転手さんもとてもフレンドリーで親切だった。古代史などはほとんど忘れてしまっていて、「〇〇天皇が」とか「和歌のなんとかに詠まれているような」と聞いてもすぐには思い出せなかったので、説明があって助かった。さすが観光都市、奈良の観光バスである。また奈良観光をするときには他のコースも利用したい。 

 さて、夕食である。駅近くのビジネスホテルにチェックインして、予約をしていた三条通の居酒屋風のお店に向かう。ネットでも評判がよく、ビジネス客も行っているところから一人で入っても問題がなさそうだ。それで利用後の感想だが・・。お店のために言えば、少し値段は高かったが、評判通り味は美味しかった。カウンター席だったが手狭感もなく、店員さんも親切だった。しかしながら、注文が今流行りのスマホのアプリ注文だったのである。私はなんとかこのQRコードを読み取って、という方法についていけるのであるが(ただ、年配者には無理な方もいるよね)、これがなんとも落ちつかないのだ。アクセスに時間がかかり、えーと、これどんなメニューだっけな、ネットではお薦めはなんだったかしら、などと考えているとどんどん時間が経つので、初回はとりあえず、の注文になってしまう。2ラウンド目は自由にすればいいようなものだが、なんとなくせかせかして適当に頼むことに。3ラウンド目行こうかな、と思ったら合計金額が目に入り(笑)、すでに結構な額になっていた。地元のお酒なら、駅近くのコンビニで小瓶を買えば同じ額でここの倍の量は入ってるよね、などとつい計算がはたらいて、ここで締めることに。今日のお宿は、駅前で評判のビジネスホテル。いろいろ泊まってきたが最高ランクの機能的なホテルで、テレビで動画配信やユーチューブは見放題だし、浴室でもテレビは観られるし、窓からの夜景はきれいだしで大満足である。これなら最初からテイクアウトで、好きな格好をして好きなペースでちびちびお酒をやった方がよかったかも。今後の旅の選択肢のひとつである。

奈良の地ビール
豚しゃぶ 美味でした


結局コンビニに寄ることになるのね(笑) 飲み切れずに持ち帰りでしたが

 「日出処の天子」を訪ねて、明日は河内(大阪)に向かいます。