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デルタ・エアーラインズ・インク事件(平成29年3月6日大阪地裁)

概要

航空会社との間で、客室乗務員として期間の定めのある労働契約を締結し、これを継続的に更新してきた従業員が、会社による解雇が無効であり、また労働契約法19条により労働契約は更新したものとみなされると主張して、会社に対し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金及び賞与等の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

本件解雇は,契約期間途中に行われたものであるから,「やむを得ない事由」がなければ有効とはいえず,同事由があるというためには,契約期間の満了を待たずに解雇を行わざるを得ない切迫した事情が必要であると解されるところ,本件サービス変更が会社の経営判断に属するものである点を考慮したとしても,これをもって,平成26年12月の時点において,平成27年3月の契約期間満了を待たずに,IFSR(雇用期間の定めのある契約社員)を8名削減しなければならない程度に切迫した必要性があったとまでは認められないこと等から,本件解雇は無効であると解するのが相当である。

元従業員と会社間における労働契約は,これまでおおむね1年毎に9回更新され,約9年間にわたって雇用関係が継続していることが認められるが,契約更新の際に契約内容が一部変更されることがあったこと,基本的に契約更新の際には,会社が,新たな契約書を元従業員に交付し,契約内容に変更があれば,その内容について告知した上,署名を求めるという方法で,元従業員に対し,契約更新の意思を確認しており,これにより,元従業員も変更点を確認した上で,契約を更新するかどうかを決定していたこと,契約期間の開始日までに元従業員に契約書が提示されなかったことがあるものの,その回数は1回のみであったこと等から,本件契約が,社会通念上,期間の定めのない契約と同視できる状態にあったとは認められない。

元従業員と会社間における労働契約は,約9年間にわたって雇用関係が継続しているところ,同各契約書には更新があり得る旨が明記されていたこと,日本ベースにおいては,IFSRの方がFA(正社員であるフライトアテンダント)よりも多く,ミクロネシア路線に乗務する日本ベースの乗務員は基本的にはIFSRのみであって,IFSRは,特定の路線において継続的に一定の役割を果たすなど,IFSRについては,単に契約更新があり得る有期労働契約というにはとどまらず,会社の内部で一定の継続的な役割を果たしていたこと,元従業員のシニオリティはIFSR全体では,相当下位であり,元従業員よりも勤続年数が長い(多くの更新がされている)IFSRが大半であったと認められることから,元従業員において,本件契約の契約期間が満了する平成27年3月31日時点において,本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めるのが相当である。

会社において,賞与の支給に関して定めた契約条項や支給規定は見当たらず,会社がこれまで元従業員に対して基本給3か月分に相当する額の賞与を支給してきたとの事実をもって,賞与支給に関する黙示の契約が成立したと解することもできないこと等から,元従業員は,会社に対し,賞与の支払を求める請求権を有しているとはいえない。

本件雇止めは,サービス変更に伴い,IFSRの人員が余剰になったことを理由としてなされたものであるが,人員削減の必要性の程度は低いというべきである上,十分な雇止め回避努力がされていたとはいえないから,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められないから,労働契約法19条により,元従業員と会社は従前と同一の条件で労働契約を更新したものとみなすことができるから,元従業員は,会社に対し,労働契約上の権利を有する地位にある。

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