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ウェーブライン事件(平成31年2月14日大阪地裁)

概要

一般貨物自動車運送事業等を目的とする被告の従業員であった原告が被告に対し、雇用契約に基づき、未払の時間外、休日及び深夜割増賃金並びに遅延損害金、上記未払賃金につき賃金の支払の確保等に関する法律所定の年14.6%の割合による遅延損害金、労基法114条に基づき、上記未払賃金と同額の付加金及びこれに対する遅延損害金の各支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

1.元従業員の試用期間中の賃金は,日給1万3000円であったところ,雇用契約書上,1万3000円の場合については記載されておらず,雇用契約書以前に具体的な金額やその対応する時間を説明したことは窺われないから,試用期間中の賃金に関し,固定残業代の合意があったとは認められない。

2.無事故手当,愛車手当,評価手当については,毎月支払われているから,1か月を超える期間毎に支払われるものとはいえず,そのほか除外賃金に当たると認めるに足りる事情は見当たらないこと等から,割増賃金算定の基礎となる支給費目に当たる。

3.皆勤手当については,1か月を超える期間毎に支払われてはいないものの,雇用契約書上,無遅刻・無欠勤の場合に支給すると定められていること,平成28年6月10日や同年8月10日には支給されていないことからすれば,臨時に支払われた賃金であって,割増賃金算定の基礎となる支給費目に当たるとは認められない。

4.歩合手当について,定められた目標を達成した場合及び時間外割増賃金等の額が職務手当の額を超えた場合に支給と記載され,時間外労働手当以外のものが含まれることが明らかな上,その算定方法や金額の定めがなく,その区別も明らかでないから,これが時間外労働手当に当たるとは認められず,また,歩合2手当についても,その内容を定めたものが見当たらないこと等から,これも時間外労働手当に当たるとは認められず,さらに,職務手当についても,職務手当のうち,いくらが時間外割増賃金であるのかがわからず,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金の部分が明確に区分されていないから,仮に時間外手当を含むとするような合意があったとしても有効とはいえず,そして,能力給及びその他手当についても,その内容を定めたものは見当たらず,その名称からしても,時間外労働手当に当たるとは認められない。

5.本件において,未払の割増賃金の額が多額に上っていること,職務手当が基礎賃金に入るか否かに関する会社の主張の内容等の事情を総合すると,会社に対し,未払割増賃金と同額の付加金の支払を命ずるのが相当であるが,ただし,付加金については,訴え提起の時点で既に2年が経過しているものは除斥期間が経過しているため,本件で付加金支払の対象となるのは,平成27年5月10日支払分以降の割増賃金である。

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