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最高裁で決着つけて欲しかった!【変形労働時間制の定め方】名古屋高裁でも負けてしまった 5年6月22日マクドナルド事件

マクドナルド事件といえば、、、、
平成20年、店長が会社に対して過去2年分の割増賃金の支払等を求め、会社が約750万円の残業代等を支払う結果となった事案を思い出しますが、今回ご紹介するのは、、、、
シフトパターンが全部、就業規則に書かれていないから変形労働時間制は無効だ、だから未払い賃金の支払いを求めた判例です。

勤務シフトは「原則として」と記載し4パターンあり、店舗ごとの例外を認め、実際に店舗ごとのシフトパターンがあり運営されていました。

マクドナルド就業規則(抜粋)
(ア)所定労働時間は、毎月1日を起算日とする1か月単位の変形労働時間制とし、1か月を平均して1週間40時間以内とする。
(イ)各社員に対して、前月末日までに勤務割で、各週各日の始業・終業時間を通知する。また、出張その他業務上の都合により、管轄事業場外で労働時間の一部又は全部について勤務した場合で、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間勤務したものとみなす。
(ウ)各勤務シフトにおける各日の始業時刻、終業時刻及び休憩時間は、原則として次のとおりとする。
・Oシフト:午前5時〜午後2時(休憩時間:午前9時より1時間)
・Dシフト:午前9時〜午後6時(休憩時間:午後1時より1時間)
・Cシフト:午後3時〜午前0時(休憩時間:午後8時より1時間)
・Nシフト:午後8時〜午前5時(休憩時間:午後11時より1時間)
(エ)原則として、休憩時間は6時間以下の場合は0分、それを超える勤務の場合は1時間とする。ただし、業務の都合上交替で与えることがある。
(オ)週の起算日は月曜日とする。

マクドナルドの反論
マクドナルドは、全店舗に共通する勤務シフトを就業規則上定めることは事実上不可能であり、各店舗において就業規則上の勤務シフトに準じて設定された勤務シフトを使った勤務割は、就業規則に基づくものであると主張しました。

第1審(名古屋地裁)の判断
裁判所は、就業規則にシフトパターンが全て記載されていない場合は、「特定された週」又は「特定された日」の要件を充足せず、変形労働時間制は無効と判断しました。

「マクドナルドは就業規則において各勤務シフトにおける各日の始業時刻、終業時刻及び休憩時間について「原則として」4つの勤務シフトの組合せを規定しているが、この定めは就業規則で定めていない勤務シフトによる労働を認める余地を残すものである。そして、現に原告が勤務していた店舗においては店舗独自の勤務シフトを使って勤務割が作成されていることに照らすと、被告が就業規則により各日、各週の労働時間を具体的に特定したものとはいえず、変形労働時間制の要件を充足するものではない。」

さらに以下のとおり言及しています。
「しかし、労働基準法32条の2は、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化することを目的として変形労働時間制を認めるものであり、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することは許容しておらず(労働基準局長通達昭和63年1月1日基発第1号)、これは使用者の事業規模によって左右されるものではない。
加えて、労働基準法32条の2第1項の「その他これに準ずるもの」は、労働基準法89条の規定による就業規則を作成する義務のない使用者についてのみ適用されるものと解される(労働基準局長通達昭和22年9月13日発基17号)から、店舗独自の勤務シフトを使って作成された勤務割を「その他これに準ずるもの」であると解することもできない。したがって、マクドナルドの主張は採用できない。」

変形労働時間制は、厳格なルール適用のもと運用されなければならないため、極めて妥当な判断と思われますが、それは4つの勤務シフト限り(程度)であれば、であり、店舗数約900、店舗スタッフ約2000名、各店舗全てをカバーする勤務シフトを就業規則に列挙せよ、、、、そうでなければ無効って。。。
無効となった場合、再計算された労働時間で多大な残業代が発生するのは必然。
さて、どうしましょうか?

そして、名古屋高裁判決 →1審判決を支持
名古屋高裁は、マクドナルドの「変形労働時間制は無効」と判断し、
そのため、実際に働いた時間分の残業代約61万円が認められています。

結果
マクドナルドは、上告を断念し7月11日、名古屋高裁判決が確定しました。
それにより、就業規則には勤務シフト4種類から約200種類に増やしています。
(規則変更は係争中に実施した)

上告して最高裁で決着をつけて欲しかったところ。
厳しい判断。妙案はないと思われます。


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