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セクハラが原因とはいえない従業員の長期欠勤による雇い止めが有効とされた例(平成25年5月7日大阪地裁)

概要

会社から有期労働契約の更新を拒否された従業員が、当該雇止めは権利濫用に当たり無効であるとして、会社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めること及び労働契約に基づく賃金の仮払いを求めた。

結論

却下

判旨

元従業員は,抑うつ状態,右手根管症候群,両手根管症候群,うつ病,頚部捻挫により約1年10か月にわたって欠勤しており,特に,平成23年度は全期間を通じて債務の本旨に従った労務を提供することができていないことに加えて,元従業員は,平成23年度の契約更新までの時点で既に平成22年6月8日から平成23年3月31日まで欠勤していたため,会社は,今後不就労が続けば来年度は契約を更新しないことになり得る旨予め通告した上で平成23年度の契約を更新し,それにもかかわらず元従業員は平成23年度の契約期間中、労務を提供することができなかったことが疎明されていることから,本件雇止めには,客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められる。
また元従業員は,障害を有し,会社に障がい者雇用枠で採用されていること,障害者基本法及び障害者雇用促進法が,事業者に対し障がい者の雇用の維持に努めるよう求めていることからすると,債務の本旨に従った労務の提供の有無及び雇止めの合理性及び相当性を判断するにあたっては,元従業員の有する障害の特性をも考慮して判断すべきであると解されるが,障害者基本法及び障害者雇用促進法も,一定の労務の提供を行うことができることを雇用の継続の前提としていると解されることから,労働者が長期にわたり債務の本旨に従った労務の提供を行っていないとの事情がある場合には,特段の事情がない限り,期間の定めのある労働契約を雇止めとすることにつき客観的な合理的理由があり社会通念上相当であると認められる。
元従業員と会社の上司は恋愛関係にあり,上司が元従業員に対して結婚を申込むなどしていたが,元従業員は,上司の結婚意思に不安を抱いて精神状態が不安定となり,上司に対して同人の対応を非難する場面が増え,その対応に疲れた上司から元従業員との付き合いに疲れた旨告げられてショックを受け,パニック状態となってリストカットし,その後から長期欠勤していることなどの事実関係に照らすと,元従業員が欠勤したのは,上司との恋愛関係のもつれによるものと認めるのが相当であり,上司から継続的なセクシャルハラスメントを受けたことが原因であるとの元従業員の主張は,採用することができず、以上の理由から、本件雇止めには客観的な合理的理由があり,社会通念上相当であるから,本件雇止めは有効である。

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