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注目の固定残業代裁判!
インテリウム社事件4/6/29高裁判決
会社が逆転敗訴

被告は、医薬品等の臨床開発業務に関する受託を事業として行う株式会社、代表取締役、取締役です。
原告は、被告との締結した無期雇用労働者です。
複数ある争点のうち、今回ピックアップするのは固定残業代です。
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年俸制度の適用者の職務給を月額55万円から月額51万円に、
固定残業代を月額22万円から月額18万2000円に、減額したことの争い。

この減額の効力を判断するにあたり、裁判所は、次のとおり判示しました。

まずは、地方裁判所の判断
原告の年俸は960万円(月額80万円)
内訳は、
基本給(職務給) 55万円
住宅手当 3万円
固定残業代 22万円
(44時間分の時間外手当及び5時間分の法定外休日手当)

被告会社の人事賃金内規によれば、原告の基本給55万円は人事賃金内規で定められた上限額60万円の約91.6%に当たること、原告に交付された内定通知書には、「月額詳細 基本給 職務給 55万円 ※管理系 Specialist系(CR91.6%)」と記載されていることが認められることに照らすと、原告と被告会社との間で、固定残業代として支払う旨が合意されていたと認められる。」

「固定残業代は、本件労働契約に基づく所定労働時間内の労務の提供の対価として合意されたいわば通常の賃金ではなく、原告の業務内容等に照らして、毎月相当時間数の残業が生じることを想定して、あらかじめ44時間分の時間外労働及び5時間分の法定外休日労働に対する割増賃金として支払うことが合意されたものである。そして、割増賃金の支払については、労働基準法37条その他関係規程により定められた方法により算定された金額を下回らない限り、これをどのような方法で支払おうとも自由であるから、使用者が、一旦は固定残業代として支払うことを合意した手当を廃止し、手当の廃止後は、毎月、実労働時間に応じて労働基準法37条等所定の方法で算定した割増賃金を支払うという扱いにすることもできるというべきであり、いわゆる固定残業代の廃止や減額は、労働者の同意等がなければできない通常の賃金の減額には当たらない(つまり不利益変更に該当しない)というべきである。」

「被告会社は、固定残業代について、44時間分の時間外労働及び5時間分の法定外休日労働に対する割増賃金として月額22万円を支払うとしていたものを、翌期においては43時間分の時間外労働に対する割増賃金として月額18万2000円(つまり実費計算)を支払うことに変更しているが、これは被告会社が割増賃金の支払方法を変更したものにすぎず、違法であるとは認められない」

結局、地方裁判所では、固定残業代の廃止や減額について、労働者の同意等は必要とされないと判示しました。

この度の高等裁判所判決
固定残業代の減額を有効とした一審判決を変更し、一方的な減額は認められないと判断しました。
最高裁で最終決着をつけてほしいところ。
最高裁で高裁判決が支持された場合、安易な固定残業代の設定がなかなかできなくなる可能性が生じます。


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