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【控訴審】海上自衛隊パワハラ事件(平成27年8月14日福岡高裁)

概要

定年退職した元防衛事務官である控訴人が、上司である佐世保弾薬整備補給所の所長からその地位を専横した違法ないやがらせを受け、かつ、この件につき佐世保地方隊に属する佐世保地方総監部に事実調査を求めたところ、同総監部管理部長から規律違反の調査申立てを妨害するような不適切な対応をされたことにより、急性ストレス障害に罹患し、休職せざるを得なくなったと主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づき休業損害、治療費、慰謝料などの損害金等の支払を求めた事案の控訴審。

結論

棄却

判旨

元防衛事務官の主張するパワハラの被害はほとんど認められない上,安全配慮義務違反を構成する発言もそれ自体は単発的なもので,通常想起される典型的なパワハラ行為とはやや性質・性格を異にすることからすると,パワハラの事実は認められなかった旨の発言も全くの虚偽ということはできないこと,そもそも,佐世保地方総監部による調査はあくまでも,元防衛事務官の夫の要望が契機となって自主的に行われた,事実上の内部調査であって,当該調査に関して元防衛事務官に法的な権利・利益が保障されているわけでもないこと等から,国家賠償法による賠償問題が生じ得るような,元防衛事務官の権利・利益の侵害が生じるとはいえない。
国提出の資料や,元防衛事務官による日記により具体的に確認できる事項と整合する範囲で認定できる事実を超えて,元防衛事務官が主張するような上司の言動を元防衛事務官供述等のみから認定するには,なお的確な裏付けによる補強を要するところ,本件ではそのような裏付けがないというほかはないから,元防衛事務官の主張によっても,原判決の証拠評価の相当性,ひいては,原判決の認定事実の相当性は何ら左右されるものではないから,原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。

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