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ジャパンレンタカー事件①(平成28年10月25日津地裁)

概要

被告(レンタカーの株式会社)においてアルバイトとして稼働していた原告が、雇止めを受けたが、雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとして、被告に対し、労働契約上の地位確認、未払賃金、不法行為による損害賠償、未払割増賃金、付加金の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却 → 控訴

判旨

元従業員は、本件雇止めに至るまで、22年以上もの間、6か月ごと又は2か月ごとに会社との有期労働契約の更新を繰り返していたこと、元従業員の業務内容は、勤務時間帯が夜間であるというだけで、正社員とそれほど変わらない業務内容であったこと、元従業員が雇用されていた間、会社から意に反して雇止めにされた従業員はいなかったこと、更新手続は形骸化しており、雇用期間満了後に更新手続が行われることもあったこと等からすれば、会社間の有期労働契約は、期間の定めのない労働契約とほぼ同視できるものであったといえるところ、会社の更新拒絶(本件雇止め)が、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるかを検討すると、会社が主張する本件雇止めの理由は、いずれも合理的な理由たり得ず、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、会社は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で元従業員の更新の申込みを承諾したものとみなされる(労働契約法19条)から、元従業員の地位確認請求には理由がある。

会社は、元従業員の勤務の希望を知りながら勤務の機会を奪ったものであるから、元従業員が実際に勤務していなかったとしても、元従業員に対し、平成26年12月分の給与を支払う義務があると認められる。
元従業員の地位確認請求は理由があるから、会社は元従業員に対し、平成26年12月分の給与に加えて、本件雇止めの日以降の給与を支払う義務があると認められる。

会社が、届出義務があるのにこれを怠り、元従業員を雇用してから本件雇止めに至るまで、健康保険、厚生年金及び雇用保険の届出をしていなかった事実に争いはなく、会社は、故意又は過失によって、元従業員の健康保険、厚生年金及び雇用保険に加入する権利を侵害したものであるから、元従業員に対し、民法709条の不法行為責任を負うところ、健康保険料の額は、248万9644円であることが認められるから、そのうち2分の1である124万4822円は、会社が負担すべき損害であると認められるが、元従業員は訴訟提起時点で43歳であり、未だ老齢厚生年金の受給権者の年齢に達していないこと、年金を巡る法律改正の動向も定かではなく、現段階では将来的に元従業員が65歳に到達してから15年分の年金給付を受領できるかは不確定であることからすれば、会社の厚生年金保険の届出義務違反に係る不法行為時に、元従業員の計算するような厚生年金を受給できる蓋然性があったとは認められないから、元従業員の主張する15年分の年金相当額は損害とは認められない。

就業規則では、変形労働期間の各日、各週の労働時間、始業時刻及び終業時刻は、別に定めるシフトパターン表を組み合わせることにより行うとするだけで、シフトパターン表は証拠として提出されていないから、元従業員に変形労働時間制が適用されることを認めるに足りる証拠はなく、会社は変形労働時間制を採用していたと認められないから、一勤務のうち、8時間を超える労働時間については、割増賃金が発生するところ、日給として支払われる1万2000円の中に何時間分の残業手当が算入されているのか明確であるとはいえず、また、算入されている残業時間を超えて残業が行われた場合に、別途上乗せして適法な残業手当が支給されているとも認められないこと等から、残業手当は日給に含まれており支払済みであるという会社の主張は採用できない。

会社は、労働基準法32条2項に違反する労働時間を定めながら、正規の時間外労働手当を支払わず、平成25年以降は、雇用契約書の記載に日給の内訳を加筆することで時間外労働手当の支払義務を免れようとしたものであり、そして、他に付加金の支払を命ずることが相当でない特段の事情も存在しないから、会社に対し、未払時間外労働手当と同額の付加金の支払を命ずるのが相当であり、元従業員の会社に対する付加金請求は、277万5699円等の支払を求める限度で理由がある。

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