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あらた監査法人事件(平成27年3月31日東京地裁)

概要

被告の従業員であり、解雇された原告が被告に対し、当該解雇が無効であると主張して、地位確認及び解雇後の賃金の支払いを求めるとともに割増賃金及び付加金の支払いを求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

元従業員は,それまでの学歴経験を買われて中途採用された者であり,調査・分析・文章作成といった点での高度な職務能力や金融工学に関する知識やプログラミングスキル等の専門性が求められていたといえるところ,本件業務改善計画においてもツールを使用した計算対応はでき,また,農林中央金庫のリスク管理の高度化プロジェクト業務の担当シニアアソシエイトの評価は,少なくとも決定的なミスは指摘されていないことは確かであり,元従業員には,アソシエイトとして,リスク・アシュアランス部ガバナンス・リスクコンプライアンス部門における業務に最低限必要とされる専門性やプログラミングスキルが欠如していたとまではいえず,そもそも,元従業員は,本件解雇の時点で,アソシエイトに降格されて半年ほどであって,解雇するほかないほどの能力不足と断定するには時期尚早であったというべきであるから,元従業員は,就業規則所定の解雇事由の「職務の遂行に必要な能力を欠」いていたとまでは認められないから,本件解雇は無効であある。

労働時間と争いがない時間単価を基に割増賃金を計算すると,未払時間外割増等賃金は,287万3066円となり,付加金については,平成25年4月8日が本件訴訟提起日なので,平成23年2月分と3月分は除斥期間にかかり,同年4月分から10月分,平成24年1月分から7月分の「月間未払時間外手当」から「法内残業割増賃金」を差し引いた177万8595円が付加金の計算上の最大額となるところ,監査法人が十分な時間管理体制をとっているとは認められないこと,具体的には認定できないものの,元従業員が認定した労働時間以上の残業をしていたことがうかがわれることに照らすと,付加金の減額要素は見当たらず,上記計算額を付加金相当額と認める。

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