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ゲームと商標、すこしだけ著作権

みなさん、初めまして。齊藤整と申します。商標に特化した弁理士チーム「齊藤国際商標事務所」の代表を務めております。

今般、パテントサロンさんの知財系Advent Calendar 2021に参加させて頂くにあたり、noteを始めてみました。ドキドキです。どうぞ宜しくお願い致します!

 

今宵は楽しいクリスマス・イヴ🎄

クリスマスといえばプレゼント、プレゼントといえばゲームですよね✨

 

小さな頃からゲーム狂、クリアしたゲームは数知れず、購入したハードも数しれず、学生時代はヲタサー&ゲーセンに入り浸り、バイト代をゲームで溶かし、仕事カバンには常に携帯ゲーム機を忍ばせて、子育てのバイブルは浜村通信の「ゲームばっかりしてなさい」、今ではボドゲやカドゲも大好物、
そんな痛々しい大人に育ってしまった僕が取り上げるテーマは…

 

「ゲームと商標」です

 

…なにこの平凡すぎるテーマ。こんだけギリギリに投稿しておいてこれかよ!という罵声怒声がこちらまで聞こえてくるようです。次からは頑張ります。次からは。

 では、どれだけ需要があるかわかりませんが、ゲーム感覚で気の向くままピコピコと書いていきますね。時間が許す限り(いま、24日の21時)。感想など頂けましたら全僕が泣いて喜びます!

 

【もくじ】

1. ゲームタイトルは商標なのか
  閑話 〜格闘ゲームではありません〜

2. ゲームプログラムは商品なのか
  閑話 〜事務所の備品〜

3. オンラインゲームはサービスなのか
  閑話 〜VRの欠点〜

4. ゲームのレンタルとは何なのか
  閑話 〜日本弁理士会関西会とインベーダー〜

5. おしまい


1. 「ゲームタイトル」は商標なのか

モンハンにしてもドラクエにしても、著名なゲームタイトルやその略称の多くは商標として登録されています(登録第2465107号、5172798号、他)。でもちょっと待って!

 

ゲームタイトルって、そもそも商標ですか?

 

大原則から確認します。まず、「著作物の題号」は原則として商標ではありません。

書籍の題号や楽曲アルバムの題号、映画の題号といった「著作物の題号」が商標や商品等表示として機能しないものであることは、POS事件(東京地判S63.9.16/S62(ワ)9572)然り、UNDER THE SUN事件(東京地判H7.2.22/H6(ワ)6280)然り、マクロス事件(東京地判H15.1.20/H13(ワ)6447)然り、裁判例や学説等で繰り返し述べられているところです。

では、ゲームとは何なのか。これは最高裁判例でも述べられている通り(ときめきメモリアル事件(最判H13.2.13/H11(受)955)、中古ゲームソフト事件(最判H14.4.25/H13(受)952))、「映画の著作物」と「プログラムの著作物」とが相関連して「ゲーム映像」とでもいうべき複合的な性格の著作物を形成しているとされており、少なくとも著作物であることについて疑いを挟む余地はありません。

 ゲームが著作物であるのなら、ゲームのタイトルって著作物の題号でしょ?書籍の題号みたいなもので、本質的に商標じゃないじゃん!ってなりますよね。そうなんです。例えば、三国志事件(千葉地判H6.3.25/H5(ヨ)702)では、「三国志 武将争覇」というタイトルのゲームを譲渡等する行為が商標「三国志」に係る商標権の侵害を構成するかどうか争われましたが、裁判所は、「三国志 武将争覇」は著作物たるゲームの題号であり、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で用いられている標章ではないものとして、商標権者側の訴えを退けました。

 じゃぁ、有名なゲームタイトルはパクりたい放題?商標を登録していても意味ないの?といえば、そうとも限りません。

 ぼくは航空管制官事件(東京地判H14.5.31/H13(ワ)7078)では、ゲームタイトルである「ぼくは航空管制官」が自他商品を識別するための標識としての機能を果たしている、つまり、商標的に使用されていると認定されました(権利者からの訴え自体は権利濫用で退けられているんですけどね…)。

 こうなるとややこしいですよね。

 ゲームタイトルが商標かどうかという問題は国や地域によっても判断に差が見られます。現に、国によっては、ゲームのタイトルを商品「ゲーム」について出願した場合、「これは有名なゲームだよね。著作物の題号だからゲームについては識別力がないよ。」という理由で拒絶してくるところもあります。

 ただ、著作物の題号であっても定期刊行物の題号などは例外的に商標として保護されるのと同じ用ように、ゲームの題号についても、シリーズもの(ゲームの中身が変わってもタイトルはそのまま維持されるもの)の著名なタイトルなどは、十分に出所表示機能を発揮していると言えるのではないでしょうか。

 日々生まれては消えていく数多のソシャゲタイトルなどは全て商標登録しているとキリがないかもしれませんが、それなりに売れることが見込まれるゲームのタイトルや、シリーズ化することが見込まれるゲームのタイトルなどは、関連グッズへのライセンスビジネスもあることですし、しっかりと商標登録を行っておくほうが良いでしょうね。

 【閑話① 〜格闘ゲームではありません〜】

当所では、毎年、クリスマスシーズンに所属弁理士らのイラストをあしらったオリジナルデザインのGreeting Cardをお配りしています。今年のカードもそろそろ関係者のお手元に届いているかと思いますが、今から4年前、2017年末(2018年用)のGreeting Cardはこのようなデザインでした。 

2018 Greeting Cards

なんかの格ゲーに似てる、ですって?
やだなぁ、単なる格闘家のイラストですよ☺️

 

2. 「ゲームプログラム」は商品なのか

商標法上の商品って何でしょう。

商標上に商品の定義規定はありませんが、通説では、「独立して商取引の対象となる、交換価値のある有体物たる動産であって、流通過程に乗り、代替性のあるもの」をいうとされています。でも、ゲームプログラムって無体物であって有体物じゃないですよね?じゃぁ、ゲームプログラムは商品じゃないってこと?

 実は、国際分類第8版が採択されるまで、日本では、プログラムは商品として扱われておらず、あくまでも、プログラムが記憶された「記録媒体」(CD-ROMやDVDなどの媒体)が商品であるとされていました。ただ、今はもうネットの時代。ゲームも媒体で買わずにダウンロードすることも増えましたよね。

 そういった事情を踏まえ、2002年からは、無体物であるゲームに関するデータやプログラム自体も、商品として扱われることになりました。こんな古い話、需要があるとは思えませんが…小ネタとしてちょろっと書いておこうかと。

 ではでは、ゲームプログラムはどの区分と類似群に属するのでしょうか。この辺りからかなり実務的な話になってきます。

 いわゆるアーケードゲーム(ゲームセンターのゲーム)のプログラムは、9類という区分の業務用テレビゲーム機用プログラム(09G53)に属します。これは解かりやすい。

いわゆるコンシューマーゲーム(家庭用のテレビゲームや携帯ゲーム機用ゲーム)のプログラムはどうでしょう。これも明快で9類:家庭用テレビゲーム機用プログラム(24A01)に属します。うん、解かりやすい。

ではPC用ゲームはどうでしょう。これも分かりやすく、9類:電子計算機用プログラム(11C01)、つまりPCの分野に属します。間違えませんね。

厄介なのはスマホ・携帯用のゲーム。PC用のゲームがPCの分野に属するのなら、スマホや携帯用のゲームもスマホや携帯の分野に属すると思っちゃいますけど、実は、これらは電子計算機用プログラムにカテゴライズされ、PC用ゲームと同じく11C01に属します。

 ゲームタイトルだからとりあえず家庭用ゲームについて権利化しておけばいいよね!と商標登録したはいいけれど、実はスマホゲームのタイトルだった(PC用ゲームの分野での権利化が必須)…なんてことがないようにご注意下さいね。

 【閑話② 〜事務所の備品〜】

 弊所は法律を扱う事務所ですから、「逆転裁判」シリーズは常備していおります。日々の業務で裁判も行いますから、「逆転裁判」でのイメージトレーニングが欠かせません(異議あり!)。

夏休みに遊びに来てくれた事務スタッフの子供さんが目ざとくソフトを見つけ、このような置き手紙を残して帰られました。なんて将来有望な子なんでしょう!きっと、成歩堂のような立派な弁護士に育ってくれるに違いありません。

素敵な置き手紙

 弊所の休憩スペースではファミコンやスーファミが稼働しております。残り一つのお菓子を誰が食べるかという悩ましい状況が生じると、ジャンケンの代わりにストⅡで勝負を決める訳です。弱肉強食の我らが事務所へ、ぜひ遊びに来て下さいませ。

Round 1…ファイッ!

 

3. オンラインゲームはサービスなのか

ダウンロードされるゲームプログラム自体は商品だよ、と書きました。

では、ダウンロードできないゲーム、つまり、オンライン上で提供されるゲームは、商品と言えるのでしょうか。

答えは否。このようなゲームは「ゲームの提供」であってサービス(役務)として取り扱われます。

ここにも落とし穴があって、オンラインでプログラムを提供するサービスって、42類というシステム系のサービス区分に属するんですよね。ところが、ゲームプログラムの提供に限っては、41類という教育・娯楽系のサービス区分に属します。

更に悩ましいのが、無料で提供されるソフトの存在。

商標法上の商品や役務というからには、「交換価値性」が必要なんですよね。つまり、一般的には「有償」で譲渡されたり提供されたりする必要があるんです。でも、世の中には広告が表示されるけれども無料で提供されるゲームって沢山溢れているじゃないですか。これらのゲームが全て商品やサービスではないとすると、そのゲームタイトルも商標登録できないじゃん、ということになってしまいます。

 それは困る、と。

 一応、広告でお金儲けをする場合に使う商標は、35類という広告系の区分(広告スペースの貸与)を登録するのが原則なんですけど、いわゆるフリーペーパーのように、本来有償で提供されるもの(例えば雑誌)であっても、広告収入により収支が合っていれば無料で提供できちゃうのもある訳で、そういうのはたとえ無料配布されるものであっても例外的に商品該当性が認められちゃったりします(東京メトロ事件(知財高判H19.9.27/H19(行ケ)10008))。

 ゲームについても、それ自体はたとえ無料配布されるものであっても、広告で利益を得ており、外形的にはしっかりしたゲームであるのなら、9類の商品や41類の役務とみられる余地も十分あるでしょうね。

 【閑話③ 〜VRの欠点〜】

  商標弁理士たる者、VRゲームによる日々のイメトレも欠かせません。昼休みに自席でイメトレに励んでいたところ、事務スタッフに激写されていました。

よくある日常の風景

VRの欠点は隠し撮りされていても全く気づかないところ。

 …いやこれ、隠れて撮る必要すらないやん…

 

4. ゲームのレンタルとは何なのか

 ゲームプログラムは9類、ゲームの提供は41類。では、ゲームプログラムのレンタルは?

答えは42類。

ゲームプログラムのレンタルになると、41類ではなく、一般的なコンピュータプログラムの提供と同じ42類(42X11)に分類されていまいます。

 ややこしいよね〜という話を同僚弁理士としていたところ、「でも、ゲームプログラムのレンタルなんて実際には存在しないですよね」という驚きの発言が!!

 ええっ!みんなゲームのレンタル屋さん知らないの?!

 僕が小学生のころはまだ著作権法において貸与権が新設されるかされないか、という時代でしたから、ゲームが記録されたテープカセットが普通にレンタルされていて、それを借りて帰って、家のダブルラジカセでコピーして返却する、というのが普通に行われていました。

 その後、著作権法において貸与権ができ、勝手にレンタルしちゃダメだよ!ってことになったんですけど、著作権の教科書には、「貸与」には「買戻特約付譲渡」も含まれるということも書いています。これもゲーム業界で実際によく目にした光景です。

 何かというと、勝手にレンタルしちゃダメだよと言われたゲームレンタル業者さん達は、「うちはレンタルしていないよ。ソフトを販売しているだけ。ただ、翌日に飽きてゲームを売りにきてくれたら、高値で買い取るよ!」とやり始めたんです(いやもう、どの店もそうしていましたw)。

 例えば、6,800円のゲームを1泊2日350円で勝手にレンタルしたら明らかに違法ですよね。それなら、6,800円で一旦ゲームを販売しておいて、これを翌日売りに来てくれたら、6,450円で買取るよ、と約束する訳です。その差額は350円…(笑)

 そういう「実質的にレンタルしてるのと同じじゃん」というのが「買戻特約付譲渡」でした。これも違法ですから、いつの間にかなくなっちゃいましたけどね。

 【閑話④ 〜日本弁理士会関西会とインベーダー〜】

日本弁理士会・関西会へ行く度に、フロアマップがインベーダーに見えて仕方ありません。

いろんな人に「インベーダーに見えるよね?!」と話しかけるのですが、誰一人共感してくれません。

 悔しいので、最後にこの場で披露して当該コラムを終わりたいと思います。

日本弁理士会・関西会 フロアマップ(撮影:齊藤)
スペースインベーダー タコ

 引用元:株式会社タイトーウェブサイト「SPACEINVADERS.JP/キャラクターのひみつ」https://spaceinvaders.jp/characters.htmlより

 

5. おしまい

ああ、痛恨の時間切れ…もう投稿しなければ間に合いませんので終わります。

長々とお付き合い頂きましてありがとうございました!

素敵なクリスマスをお過ごし下さいね♪

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