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皐月賞回顧 2020.4.19

これぞ名勝負……!無敗のG1馬2頭による鍔迫り合い


雲一つない青空の下、2020年のクラシック第一冠が幕を開ける。

前日の大雨はどこへやら、抜けるような青空が澄み渡る。

前日のレースが「嵐の中で輝いて」なら、この日は「Flying The Sky」だろうか。たーかくはばたけーおおぞらをどこまーでも♪ 
などとわかるひとにしかわからないネタは置いといて。

これぞ競馬日和、皐月賞にふさわしい天気となった。
ただ、足元は前日の大雨で稍重馬場という判定。初夏の陽気が時間を経つごとに回復させてくれたが、やはりパンパンの良馬場というわけにはいかない。かといって、重たい馬場でもない。難しいには違いない。
昼休みに福永騎手が自分の足で芝生の状態を確かめていたりもしていた。
昼間の条件戦では時計もかかっていて、走るコース次第では有利にも不利にもなりそうだ。枠順と展開しだいではひっくり返る恐れはまだ残っている。

しかし、フタを開けてみれば、強い馬同士がガチンコのバトルをして、熱い名勝負を繰り広げた。まさに好天にも恵まれ、見応え十分のクラシック第一戦となった。

2強から3強へ

無敗のG1馬、サリオスとコントレイルが年末から直行してくる。
そこに対抗してくるのはどの馬か。
サリオスのデビューは2019年6月の東京、2番人気でD.レーン騎手を背に最初の勝利を飾った。2着に2馬身差、2着から3着までは7馬身あった。次走となったのは同じく東京マイル、サウジアラビアロイヤルカップ、これをレコードで制する。その勢いそのままに朝日杯を圧勝し、皐月賞直行を表明する。
例年であれば、このサリオスを中心に話が進むが、主役はもう一頭いた。
コントレイルだ。
サリオスがハーツクライの子なら、対抗馬として当たり前のようにディープインパクト産駒。
戦績も似ている。阪神の1800mでデビューし、2戦目に東上し、東スポ杯2歳ステークスをレコードで圧勝。朝日杯をスルーして、満を辞して年末のホープフルステークスへ向かい、快勝。

どちらの馬も3戦3勝、2戦目はレコード、3戦目はG1勝ちという、そんじょそこらの馬では到達できない共通点がある。

皐月賞と同コースでリハーサルも兼ねて、分はコントレイルにある、というのはよくわかる。 しかし、サリオスとてD.レーン騎手をオーストラリアから呼んで、必勝態勢。この時期にわざわざオーストラリアから自主隔離を経てレースに臨もうというのだから、レーン騎手の覚悟も相当だろう。しかも、昨年大活躍のレーン騎手である。

2020年初頭は2強と評されていたが、ディープインパクト記念弥生賞から、もう一頭名実ともに名乗りを上げた馬がいた。
サトノフラッグだ。
マーフィー騎手をして、ダービーを獲れると謂われた馬だが、まだ実績がなかった。
重馬場の弥生賞を快勝し、父そっくりの勝ち方と武豊騎手をもって言わせて、いよいよマーフィー発言が現実味を帯びてきた。
実績だけをみるとサリオスとコントレイルに見劣りするが、弥生賞勝ちがここにきて注目を浴びる。皐月賞前日の大雨だ。一旦は不良馬場にまでなった馬場。これには前述の2頭は経験がない。スピードが信条の馬に重たい馬場はどうなのか。おそらくこの迷いがオッズに反映されていたのではないか。
しかし、皐月賞当日はこれ以上ないくらいの日本晴れ。
暖かい陽気も馬場は急速に回復し、レース発走前にはやや重までに至った。
これを、良馬場ではないと見るか、この程度なら差はないと判断できるか……騎手ですら暗中模索だったことが、前述の福永騎手の行動からも窺える。

レース回顧

無観客のスタンドに鳴り響く、G1ファンファーレ。
奇妙な静寂の中で、皐月賞の幕が上がる。

レースは正面スタンド前、無観客なので例年に比べ馬が落ち着いているようにも見えた。
スタートはちょっと一頭ダッシュがつかないくらいで、ほぼ揃った。1週目の直線で内から1勝馬のテンピン、ウインカーネリアンがハナを主張する。そこへ、キメラヴェリテが外からかぶせていって逃げ宣言通り先頭をいく。
1コーナーを周るころには隊列がほぼほぼ決まった。

隊列は長くなった。
先頭を行く、キメラヴェリテは快調に飛ばす。3馬身離れてウインカーネリアン、並んでビターエンダー。
さらに2馬身離れて、サリオスは先頭から4番手あたり。逃げる馬たちの様子を窺えるポジション。
そこから後ろは完全に固まりだ。ラインベック、テンピン、ヴェルトライゼンテ、馬群の真ん中にサトノフラッグ。さらにコルテジア、ガロアクリークと続き、ようやくコントレイルの1枠1番の白い帽子が見えてくる。馬群のやや後方、枠順の利でインコースにポジションをとる。ただ、自由度は低く、鞍上の福永騎手の進路どりが大きく左右する。
さらに後ろにダーリントンホール、レクセランス、クリスタルブラック、マイラプソディと続いた。最高方、4馬身離れてポツンと一頭ブラックホール。

動いたのは3コーナー手前。馬群がじわりじわりと先頭集団に追いついてくる。キメラヴェリテのリードは徐々になくなっていき、3コーナーの中間でで馬自体もいっぱいになってくる。
ここで最内にいたはずのコントレイルがするすると外に出て、淡々と順位をあげていく。
4コーナーから直線に入る時には大外をマクっていく白い帽子がうかがえる。
先頭は青い帽子の2頭、ウインカーネリアンが粘り、サリオスが併せ馬になって進出してくる。
だが外から猛烈な末脚でやってくるのがコントレイルだ。まったく止まらない。応戦するがごとく、サリオスが併せに行く。残り200mからはこの2頭のマッチレースといってもいい。サリオスが出ればコントレイルが差し、さらにサリオスが巻き返す。

熾烈な叩き合い。

ゴール前、数十mでサリオスが抜かれた。
もう余力は残っていないようだった。
そのままコントレイルがゴールイン。
福永騎手のクラシック完全制覇が同時に達成された。

無敗馬同士の争いはコントレイルに軍配があがった。
コントレイルとサリオスの差は半馬身、そこから3着までの差は3馬身半。この2頭の力が如何に抜けていたのかが着差にも表れていた。

レース終わって

皐月賞の激闘が終わった。
次はダービー。
コントレイルの二冠なるか、サリオスの逆襲か、はたまた新星が現れるのか。
去年はロジャーバローズの逃げ切りで、波乱のダービーとなった。だが、ロジャーバローズは故障し、引退となった。
ダービーを勝ち、競走馬として永らく活躍することで、この皐月賞の叩き合いがより一層輝くだろう。

世の中がしんどい今だからこそ、熱いレースが目に焼き付く。
競馬が開催されるありがたみを感じながら、ダービーを楽しみとしたい。

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