菊花賞馬はダテじゃない 天皇賞(春)2021
今年は小粒だな、なーんて思いませんでしたか?
今年の天皇賞(春)はいつもとは違います。
例年は京都競馬場での開催ですが、改修工事のため、阪神競馬場での振り替えとなりました。
阪神3200mという馴染みのないコース、1周目は外回り、2周目は内回りだなんて、なかなかお目にかかれません。ある意味歴史的瞬間です。
いつも違うといえば、出走馬の実績を比べるとG1馬が2頭しかいません。天皇賞といえば、格式高く、強豪がぶつかりあう印象ですが、今年は強豪は強豪だけど、バリバリのG1馬が出そろうという展開にはなりませんでした。
しかし、牝馬のカレンブーケドールやウインマリリンの参戦が華を添えます。牝馬は長距離は難しいと聞きますし、3200mでの天皇賞を勝った牝馬は約60年いなかったようです。
たとえ、G1を何勝もしているカリスマ的な馬がいなくても、天皇賞らしく接戦を演じて、しっかり勝ち切ったのは長距離に実績のあるG1馬でした。
さて、振り返っていきましょう。
G1馬が2頭しかいないとはいえ、強豪揃う
G1を勝つことだけが実績ではありません。
強い相手と戦いあったからこそ、観た者の記憶にその強さが印象付けられます。
1枠1番 ワールドプレミア
2019年の菊花賞馬です。兄がワールドエース、弟がヴェルトライゼンデという超良血馬。2019年の春のクラシックでは権利がとれず、秋開催で躍進。神戸新聞杯3着から、一気に菊花賞馬に上り詰めました。武豊騎手を背に、有馬記念3着をはじめ、中長距離の名だたるG1で好走してきました。もちろん、このレースでも最有力な一頭です。今回の鞍上は福永騎手。
1枠2番 アリストテレス
2020年の菊花賞2着馬。ルメール騎手をもって、あの無敗の三冠馬コントレイルを最後まで追い詰めたマークマンといった方が通りがよさそうです。年明け4歳になり、アメリカJCカップにてワールドプレミアの弟ヴェルトライゼンデの追撃を退けて優勝し、重賞ウイナーとなりました。続く、阪神大賞典でまさかの7着。なんとなく、雰囲気がフィエールマンと似ているかなと思いましたが、どうやらそうでもない様子。果たして今回の走りっぷりはどうなのか、堅実な走りをみせるのか、当日のオッズにもファンの迷いがみてとれました。
2枠3番 カレンブーケドール
どんな相手でも相手なりにしっかりと走るが、勝ちきれない。勝ち星は少ないながらも、ある意味強烈な実績を持ちます。
2019年オークス、秋華賞、ジャパンカップ、2020年京都記念、オールカマーを2着。
あの三冠馬そろい踏みのジャパンカップで4着。有馬記念5着。
日経賞ではウインマリリンの逃げ切りの2着と牝馬ワンツーを決め、その牝馬2頭でここに挑んできました。3200mは未知数ですが、きっといい勝負をしてくれるに違いない、そう思わせてくれる一頭です。
6枠12番 ディープボンド
2020年菊花賞4着馬です。当時はコントレイルとアリストテレスの死闘から4馬身ほど離されていました。そんな同世代なライバルを逆転したレースがありました。天皇賞春の前哨戦、阪神大賞典です。重馬場を難なくこなし、同世代の人気馬を打ち負かして、天皇賞春の有力馬として名を連ねました。父はキズナ、アリストテレスの父はエピファネイア。現役時代のライバルは種牡馬としても同期でライバル関係も維持し、産駒もやはりライバルとして立ちふさがるのは血統の面白さでもあります。
さて、上位人気4頭が以上ですが、忘れてはいけない馬もいます。
7枠14番 ウインマリリン
絶好調横山武史騎手が手綱をとります。前走の日経賞はうまく逃げて勝利しました。思い起こせば、一年前のフローラステークスで初重賞を勝った横山武騎手。一年後は皐月賞を無敗馬で制し、絶好調モードです。もし逃げるのだとすると展開のカギを握る一頭です。
4枠7番 ユーキャンスマイル
なかなか本番では力を出し切れませんが、去年の天皇賞春は4着。阪神大賞典では二年連続の連対と、阪神の長距離ならもしかしたら、と思わせてくれます。
8枠17番 オーソリティ
現4歳世代で穴っぽい一頭です。3歳時は青葉賞を勝って、アルゼンチン共和国杯も勝ちました。堂々挑んだ有馬記念では14着と大敗。ちょっと相手が悪かったとばかりにダイアモンドステークスでは2着と長距離での安定感を見せます。有馬記念とはメンバーの質が落ちますが、ここでも一発の魅力があります。父オルフェーヴルと同じ大外枠に入り、父の果たせなかった天皇賞制覇なるでしょうか。
さて、オーソリティもそうですが、なんと8枠の3頭がすべてオルフェーヴル産駒という偶然。わざとではないかと思うくらいです。
4頭の熱戦、激闘の末に ~レース回顧
スタートはそろいますが、⑮オセアグレイトがダッシュがつきません。
ハナを切ったのは、⑤ディアスティマ。同じ舞台の松籟ステークス勝ち馬ですから、地の利とばかりに先手をとります。続くのは⑨ジャコマル。競り合ったまま1週目の外回りコースへ。
3番手は3頭並んで、内から③カレンブーケドール、白毛の④シロニイ、⑩ゴースト、さらに外に⑫ディープボンド。それを追うようにインコースでじっとしているのは②アリストテレス。人気馬が先行集団を形成しています。
アリストテレスは少しペースを落とし、直後にいた⑭ウインマリリンと並びます。ウインマリリンは今日は逃げませんでした。
インからするするとウインマリリンに接近していくのは①ワールドプレミア。1馬身後ろに⑪メイショウテンゲン、二馬身離れて⑯メロディーレーンと⑥マカヒキ。さらに二馬身後方に⑰オーソリティ。それから3馬身以上離れて、⑦ユーキャンスマイル、⑬ナムラドノヴァン、⑧ディバインフォースと続きます。最後方はそこから3馬身離れて、⑮オセアグレイト。
1000m通過が59秒8とまずまず。
馬群は縦長。
一週目の直線。先頭は変わらずディアスティマです。
二番手はジャコマルががんばっているようですが、すぐ後ろにディープボンドとカレンブーケドールがいます。アリストテレスは少し離れて単独で追走。それを3馬身後ろから見るのがワールドプレミアとウインマリリンという図式は変わりません。
隊列は向こう正面の直線ではほとんど変わりありませんが、3コーナーを前にしてポジション争いのため、隊列が動いていきます。あっという間に馬群はぎゅっと詰まります。
狭い内回りのコーナーを意識してか、ワールドプレミアは外に持ち出して、先行集団をけん制。ジャコマルとシロニイはすでに苦しくなってきます。それでも先頭のディアスティマは悪くないペース。
先頭のディアスティマが4コーナーをまわっていくと、すぐ後ろにつけるのはカレンブーケドール、ディープボンド、そしてアリストテレス。ワールドプレミアも来ています。
役者はそろったとばかりに4コーナーから直線へ。
まだディアスティマは粘っています。
直線に入って、カレンブーケドールがいい手応えでディアスティマをかわしていきます。それでもディアスティマは粘ります。後ろからディープボンドが激しく追われてやってきています。アリストテレスは若干手応え悪く、遅れ気味。外から差してくるワールドプレミアが絶好の手応え。
残り200m。
粘ってはいるもののディアスティマには余力がありません。カレンブーケドールも先頭に立つも突き放すには至らず。追ってくるのはディープボンドとワールドプレミア。アリストテレスは遅れています。
とはいえ、ほぼこの4頭の勝負。
ワールドプレミアとディープボンドがいい脚で伸びてきます。カレンブーケドールはアリストテレスで3着争い。
最後はワールドプレミアとディープボンドのたたき合いです。
ディープボンドが食い下がりますが、ワールドプレミアが一瞬の脚で抜き去り、ゴールイン!
菊花賞の勝ち馬がその実力を見せつけた時でした。
2着はディープボンド。3着は僅差でカレンブーケドール。4着アリストテレス、5着はディアスティマをかわしたウインマリリン。
上位人気馬で独占、やはり一線級で活躍していた馬は強かったです。
前半でご紹介した通り、上位人気の4頭が独占する形になりました。
勝ったのは菊花賞馬ワールドプレミア。乗り替わりとなりましたが、福永騎手がしっかり仕事をした結果となりました。伊達に菊花賞を勝っていないぞとばかりに、舞台は違っても長距離適性をまじまじとみせつけてくれたようです。最後の伸びも見事でした。
2着ディープボンドもがんばりましたが、一歩及ばず。去年の菊花賞からは成長をみせてくれたようなので、この馬の将来も楽しみですね。
3着はカレンブーケドールが粘りました。牝馬での優勝はなりませんでしたが、堂々の3着。直線、先頭で抜け出したときは勝ったかと思いましたが、突き放す余力はなく、アリストテレスを封じ込めるのが精いっぱい。やはり長距離は難しいと感じます。
アリストテレスは4着、この可もなく不可もなしのような着順がまた迷います。堅実ではありますが、道中の走りやすさも含めて、勝ちきれない馬となってしまわないか心配です。ある意味カレンブーケドールと似ているかもしれません。
さて、最初は小粒かなと思った今回の天皇賞でしたが、ふたを開けてみれば、例年通りの熱戦が繰り広げられました。
最後の直線の攻防は見ごたえがあり、逆転の逆転のような展開はこれぞ競馬といった様相でした。
格式高い天皇賞らしく、緊張感のあるレースで長距離王者を名実ともに手中におさめたワールドプレミアの今後の活躍に期待したいです!
みんな中距離行っちゃうからねえ…。
それではまたお会いしましょう!
来週はNHKマイルカップです。
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