北朝鮮はミサイルをなぜあんなに発射するのか? 発射のわけ…固体燃料の宿命
さて、前項では北朝鮮がミサイルを恒例行事のようにショッチュウ発射している謎について二通りの理由がある事を紹介しました。
そのうち、北朝鮮が発射について報道する場合はここでは除きます。
元々、ICBMのように飛翔距離の長いものを除くと、ほとんどの射程の比較的短いミサイルは(ロシアの流れを汲む)固体燃料のミサイルなのです。
これは移動性や短時間で発射できるなどメリットも多く、地域や場所を選ばずに発射できて即応性に優れています。ここまでは関係者や軍事アナリストはよくご存知のことだと思います。液体燃料だと燃料の貯蔵所やミサイルへの充填など面倒が多くあります。
一方で、固体燃料のミサイルは、火薬と同じで点火するとあとは、野となれ山となれ…で水力方向の制御などがあまり上手く出来ません。
でも、下手の鉄砲も数打ちゃ当たる…式にそれなりのメリットがあります。
長距離のICBMなどは、軌道飛翔中に飛翔方向や落下点などの微妙なコントロールも出来ないと、弾頭を誤って命中させると思わぬ被害を与えてしまいます。
以上は、簡単な説明です。
さて、固体燃料のミサイルに話を戻しましょう!
燃料は(昔と変わっていなければ)、実は『ゴム素材』なのです。ゴムは廃タイヤの火災を見ると分かるように、実は持続的に燃える素材です。しかし、タイヤのように燻(くすぶ)るように燃焼したのではミサイルの推進力としては用いることが出来ません。しかしお分かりのように、ゴム自体の性質は加工性、成形などが比較的容易です。
燃焼を促進するために化合物や添加物を加えてロケットやミサイルの推進力となるように工夫されています。
この『ゴム素材』自体は、化学的に安定していて長期の保管にも問題はありません。
しかし、ロケット・ミサイルの推進燃料とするためには、ロケット・ミサイルの燃料を充填する筒のような機体に成形をして充填しなければなりません。そうすると、固体燃料は構造的な考慮も必要になります。
例えはあまり良くありませんが、ゴムも引っ張ったり、伸ばしたりしていると、小さな亀裂が発生して繰り返すうちに破断してしまいます。
ミサイルも同じで、保管条件が厳しくても、温度環境や湿度変化などが繰り返して作用すると、小さな亀裂(クラック)を生じて長期に保管しているとこのミクロの亀裂が進展していきます。特に形状的に亀裂の入りやすい部分も出来ます。
この亀裂(クラック)が大きくなるのは、実は固体燃料にとって実に危険なのです。クラックが多いと、一気に燃焼して爆燃と呼ばれる、実はロケット・ミサイルが発射台で爆発して大惨事になります。
そう~、あまり長く置いとけません。手っ取り早く、安全で簡単な処理方法は撃つことなのです。地上で分解や捨てることはできません、万一火が付いたら大惨事です。
以上で、なぜ沢山発射するのか、お分かりいただけたと思います。ちょろちょ、一機づつ作りませんからロット生産です。このロットは同じ期限になります。
以上で解説は終わりです。