あれから

あのさわがしい幸福から
もう一週間も経つんだね
笑いつかれた週末は
眠ることさえ口惜しいような
まばたきのできないひととき
こぼれるほどのふるさとの香りは
かなしいくらい穏やかだった
ぼくが気取らずに済むように
大人にならずに済むように
あの頃で部屋じゅう埋め尽して
迷い鳥のようなか細い声は
ビルの山には響かないだろう
けれどこの夜だけは
窓ガラスの中に野はらが咲いて
ぼくだって少年でいられた
月曜日のあさ
ふり向けばもう
思い出の劇場は終わっていて
幕を引いたあとの広い部屋は
ぼくには持てあまされた
この部屋を満たすほどの潮騒は
ぼくの瞳からは流れないだろうから
青ざめた空に入道雲がさえて
今日からまた
ぼくは一人の大人として
この街で夏を急ぐだろうから

#詩

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