Mist

真夜中、みずいろが私を食べた。

卒業

小さくわかれたぼくのふるさとが、いよいよこの街の片隅で灯りをともす。冷たかったこの街がなつかしいろに染め上げられて、いつか本当にぼくのふるさとみたいになるかもし…

39.5℃のカナリア

歌うことが好きだった。次の言葉を探さなくてよいからだ。あの頃の私はいつも言葉に迷っていて、おはようの一言にさえ逡巡して、ぐずぐずと夕暮れを迎えていた。お酒が飲み…

公園通り

二度と戻れない夜が終わって、二人は朝焼けのレストラン。テーブルの新聞に目を落とすと、今日も世情は暗い。ウェイトレスが去ったあとには、美しい沈黙だけが残る。フォー…

つめたい土曜日の部屋で

裏切る方は、いつだって気分がいい。罪の匂いのするコートを羽織って、優しい怒りの声も遠いこだまに変えながら、気丈なふりで、前を向いて歩けばいいのだから。 裏切られ…

ひとりぼっちのわたしに

それは私にひとりの友達もいなかった時代のこと。長い隊列の中で、孤独を悟られないように付かず離れずしながら、土手を進み、川を越え、街外れの広い公園にたどり着いた。…

ずっと、あの夏のままで

社会人になって一年目の夏、地元の友達を集めてキャンプに出かけた。車三台で連なって、山奥にあるキャンプ場へ向かう。途中、何度かコンビニに寄って、やみくもに煙草を吸…