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Mist
2015年9月13日 22:40
死にぞこないの蝉が一匹、向かいの家の庭の辺りから、仲間を捜すようにしきりに鳴いている。最期のひとりになったことにも気づかずに、憐れに鳴いている。私もまた、最愛の季節が去ってしまったことに心乱れつつ、あの蝉とともに八月の牢獄へ閉じ込められてしまいたかった、と狂おしく思い詰める。 ひたすら酒を飲んだ。漬物を齧りながら、無心に飲んだ。風がカーテンをめくると、青い部屋にはときどき西陽が射し込んだ。惜別