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ポエム帳

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酔っぱらったときに書きます。
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2015年7月の記事一覧

旅の宿

 夜の街がときどきふいに化け物じみて広がって、しまいに私を飲み込んでしまいそうな気がしている。プレハブ小屋の薄い窓から、赤や緑にぼやけて見えるあれら刹那のキャンディーは、朝焼けとともに消えゆく運命にありながら、懲りもせずに美しい。後悔にただれた大人たちが誘蛾灯に吸い寄せられるようにアスファルトに靴音を、陽気な雨に打たれてずぶ濡れの酔いどれたちが迷い道して逆立ちをする。
 その晩もめまいを起して倒れ

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御祭騒ぎ

 あの日からこの日へと長い釣橋渡りながら、ふいに足元がよろめいて雲間へ落ちた。青空から水面へと、その境目の曖昧さの中へはまりこんで、歳月がトタン屋根に落ちる雨音のようにテンポよく走り去った。どれくらいそうしていただろう、どれくらい風を切っただろう、どれくらいめまいをして何もかもひえびえとして葬列のごとくに無音がつづいて生きていることの実感さえ忘れかけたその頃に、ようやく叩きつけられた地面に長いキッ

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